製造業におけるイノベーション実現に向けて
~DX事例に見る確実なプロジェクトの始め方~

 


小山 和久

自動車・製造ビジネスユニット
執行役員 プリンシパル

 

はじめに

ビジネスを取り巻く環境は、With/Afterコロナにおいて変革への更なる加速が求められている。社会的要請や価値変化、産業基盤の変化、クライシス・パンデミック対応という潮流の中で、事業環境の大きな変化に向けて、様々なビジネスモデルや既存事業・組織を変化させる=イノベーションを加速させていく必要があり、製造業においても対応が求められる。

(1)社会的要請や価値変化
ESG、SDGsに代表される持続可能な社会発展、環境・社会問題への配慮の重要性が増大

(2)産業基盤の変化
デジタル化を伴う第四次産業革命。すべてがネットワーク・データ化し、産業基盤が根本から大きく変化

(3)クライシス・パンデミック対応
個々の企業単位ではコントロールが困難なクライシスが頻発。レジリエンス(環境変化への適応能力)の必要性が増加

 

With/Afterコロナ時代の製造業の業界動向

 

前述の事業環境の変化として、具体的には下の3つがあげられる。これらはBeforeコロナから存在していたが、昨今益々その存在感と重要性を増しており、その変化スピードは加速の一途を辿っている。

これらの変化に対する製造業の事業戦略は大きく3つに分けられる。いずれも環境変化を脅威ととらえる以上に機会ととらえ、顧客に新たな価値を提供していくためのイノベーションに向けて果敢に挑戦している点は共通している。
この挑戦は企業が生き残りをかけ、継続的に成長するためには避けて通れない活動だと言える。

(1)連携・M&A戦略加速
変化のスピードにいち早く確実に対応するために外部リソースを積極的に活用する(例:ハード事業の拡大を狙い、大手ソフトウェア開発企業を買収)

(2)優先投資エリア集中
自社の強みをいかしながら、将来性や成長性のある事業領域に集中的に投資を行い、リソースを投下する(例:設備投資額の半分以上をEV関連事業に集中投下)

(3)事業ポートフォリオ再編
前例にとらわれず、変化に合わせて各事業の比率を大胆かつ柔軟に組み換える(例:従来の主力事業偏重から脱却し、製品ライフサイクル全体を通じた付加価値向上のソリューションを提供)

 

イノベーション推進に必要なこと

アビームコンサルティングでは、こうした事業戦略に基づきイノベーションに挑戦するクライアントから、イノベーションへと通ずるDXの実現方法について相談を受け、プロジェクトを実施してきた。
優先的に取り組むアジェンダは各社各様だが、アビームコンサルティングでは、長期的かつ継続的なイノベーションの実現に向けてプロジェクトを確実に推進し、実績を重ねていくアプローチを採用している。これらの挑戦にあたり、特に重要なのは下の3点だと考える。

(1)真のマーケット視点の醸成
過去の成功体験の延長線、自社ないし自部門のみの視点だけで変化に挑戦することは、諸刃の剣である。その経験や視点が、オリジナリティや競争力の源泉となる一方で、バイアスとなり変化の本質を見逃してしまう場合があるからである。変化を複眼でとらえるために、自社ないし自部門だけではなく外部の知見を取り入れることが重要であり、これが旧態依然としたアプローチを変える起爆剤となり、真のマーケット視点醸成による企業間や部門間を跨いだ業務変革のきっかけとなる。

(2)変化の早さよりも速く取り組む
日々挑戦に取り組むこと以上に、その挑戦のスピードが大切である。産業基盤変化の根本にあるのはデジタル技術の急速な進化であり、成果が出るころには、さらに新しい変化が起きて手遅れになるという事態が当たり前に起きるのが昨今の状況だ。そのためにも最新のデジタル技術の知見を持ち、それを課題解決(=ソリューション)としてハンドリングできる人材を活用し、スピーディに取り組むことが重要である。

(3)自律志向、ケイパビリティ向上による継続性
イノベーションの挑戦は、市場に変化がある限り継続的に取り組む必要がある。一時的に外部の力を借りて挑戦を推し進めることは前述の「視点」、「速さ」の面では有効だが、最終的には自社内部に原動力を持つことが継続性を高めることにつながる。推進メンバー自らが考え動く自律性を持ち、ケイパビリティを向上させていくことが重要である。

上記3点のポイントは、容易に実現できるものではないが、取り組みを始めないことにはイノベーションは推進できない。以降は「DX事例」として、実際にアビームコンサルティングがDX推進に携わっている企業の取り組みを紹介する。DXの推進がイノベーションの実現に繋がると考えており、時には千里先に見えるその実現も、必ず足元の一歩から始まる。
イノベーションへの道のりを確実に歩む事例企業の紹介を通じて、製造業のイノベーションに向けた取り組み加速の一助となれば幸いである。

 

DXを活用したイノベーション事例

(1)イノベーションのモデルの紹介 ~「OECDのイノベーションモデル」~
今回、最新デジタル技術を活用したイノベーション事例紹介にふさわしいフレームワークとして、1992年からOECD(経済協力開発機構)が発行している「イノベーション測定マニュアル」をベースとした。同マニュアルの2018年版(最新版)では、以前は4分類あったイノベーションの種別をプロセス/プロダクトの2分類に集約し、収益でイノベーションの度合いを測定する、というシンプルでわかりやすい構成になっている。これにより、DXの最新デジタル技術活用面だけでなく、各事例のイノベーションの本質を簡潔に表現することを狙いとしている。

表1 DXによるイノベーションモデル

表1 DXによるイノベーションモデル

イノベーション定義と効果指標は、OECD Oslo Manual 2018(OM4*1)に基づき編集。(*1)The Measurement of Scientific, Technological and Innovation Activities  Oslo Manual 2018

(2)具体的なイノベーションの事例
アビームコンサルティングが手掛けるプロジェクトでは、デジタル技術を活用した業務変革の支援に留まらず、継続的なクライアント主導でのイノベーション実現に向け、DX人材育成を目的としたトレーニングのニーズが増加傾向にある。現在も、イノベーションに向けたDX関連プロジェクトのご依頼を頂いており、ナレッジとして蓄積しながら事例として提供しつつ、サービスの充実を図ることで、製造業のイノベーション実現に向けた取り組みを加速させていく。

表2 具体的なイノベーション事例

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