確かに、インドのGCCリソースをより積極的に生かすには、本社側で戦略を描き、インド側に実行を任せる形が望ましい。これは、トップダウン型の指揮系統が強い欧米の企業に適しているといえる。
対して日本企業は、現場主導のボトムアップで緻密にオペレーションを設計、世界に誇る品質の高さを維持してきた。欧米式がよいとしても、GCC活用のためにこのカルチャーを根本から変えることは難しい。
こうした実情は、当社が行ったリサーチからも浮き彫りになった。2024年、インドに拠点を置く日本企業約50社にヒアリングを行ったところ、見えてきたのは「ラストワンマイルの課題」であった。
これは、「自社で標準化されたグローバルテンプレートを現地に当てはめて研修・トレーニングを実施、日本人スタッフが一定期間伴走してサポートしても、いざ本番運用を始めるとグローバルテンプレートとローカルオペレーションの間にギャップが生じて噛み合わない」といったものだ。例えるなら、工場で検収品を収める棚が部品ごとに指定されていても、現場ではその辺りの床や空いている棚に適当に入れられてしまう、といった事態が発生するイメージだ。日本側から見れば「間違っている」が、現地では「最終的に問題なければよい」など、意識のズレが生じ互いがストレスを覚えることになりかねない。
私がリサーチを経て導き出した結論は、「日本人が考える期待値を強いても解決しない」というものであり、日本企業の期待値を理解しながら現地の文化・考え方に通じたキーパーソンとの緊密なコミュニケーションから、現地で実行可能なハイブリッドなオペレーションを模索する必要があるということだ。
従来からアビームコンサルティングは、日本から帯同するコンサルタントがナショナルメンバー(現地メンバー)と連携して支援するスタイルを大切にしてきたが、今回のリサーチから得た知見から、日本企業のGCC積極活用においても、このアプローチが有効だと感じるに至った。
その課題を解決するために組織したのが、日本とインドのハイブリッドで構成された「Enabler Hub」(イネーブラーハブ)である。中心になるのは、日本側のインド人メンバーと日本人スタッフ約30人と、インド側のメンバーだ。この組織が「日本のやり方」と「インドのやり方」を融合させ、日本人が求める品質や管理の在り方を、インド側とすり合わせながら実現していく。こうした機能は、アビームコンサルティングが設立したGCCならではのものであり、日本とインドのシームレスなビジネス促進に、大いに貢献するものと考える。
特に日本企業のGCC活用初期において、「イネーブラーハブ」のような日本とインドの文化の違い、感覚の違いを埋める機能がなければ、インド側に依頼できる作業は標準的なルーティンワークに限られてしまいかねない。これではインドの高度IT人材を持て余すことになり、企業にとっても大きな損失となる。
アビームコンサルティングは、日本・アジア発で経営改革やデジタル変革を数多く支援してきた。インドにおいても、2015年のOptimum Solutionsへの資本参加を皮切りに、現地で事業を推進してきた。同社との満を持してのGCC設立は、アビームコンサルティングが進めてきたコンサルティングサービスを次のステージにシフトする意味においても、大きな一歩となる。
第2回では、共にGCC設立に当たったOptimum SolutionsのキーパーソンであるNanda Kishore氏との対話から、インド進出のより深いインサイトをひもといていきたい。