2025年3月28日
2025年3月28日
アビームコンサルティング株式会社(以下、アビームコンサルティング)は、日本の19地域のまちづくりに取り組む企業に勤める1,957名を対象に、「地域価値共創の取り組みにおける生成AI活用の実態調査(以下、本調査)」を実施したことをお知らせします。
人口減少や少子高齢化により様々な社会問題が懸念される中、それらの課題解決と経済の活性化を両立させるには、自治体・企業・住民が協力し、地域の理想の未来を描きながら新たな価値を創造する「地域価値共創」の取り組みが重要です。
そこでアビームコンサルティングは、近年多様なビジネスや行政サービスなどで活用が進む生成AIが、地域価値共創に関する取り組みにおいてどのように活用されているのかを把握し、企業や自治体が今後取り組むべき課題を明らかにするため、本調査を実施しました。
■TOPICS
■調査概要
調査名:地域価値共創の取り組みにおける生成AI活用の実態調査
調査期間:2024年10月25日(金)~11月8日(金)
調査方法:インターネット調査
調査対象:官公庁・自治体を除く、19地域の価値共創に関わる、鉄道、バス、タクシー、不動産、百貨店、スーパー、エンターテインメントなどのまちづくり企業従事者(企業規模や部署、年齢・性別不問)
対象地域:価値共創に関わっている地域を、人口規模により大都市、中都市、小都市に分類
調査人数:1,957名
■主な調査結果
1. 地域の価値共創の取り組みにおける企業の生成AIの活用率は、都市の規模を問わず「商業施設の充実」が高く、「福祉サービス」が低い。
地域の価値共創の取り組みにおける生成AIの活用率は、都市の規模を問わず65%前後が「商業施設の充実」と最も多く、小都市では「地産地消の推進」、「自然体験」も60%と多かったことから、地域の特徴を活かすことを目的とした生成AI活用が顕著であることが分かりました。
また、規模問わず「福祉サービス」の活用率が40%以下と低く、その要因としては、人対人のコミュニケーションが重視される点や、慢性的な人材不足によるリソース確保などが考えられます。
2. 利用している生成AIは、都市の規模を問わずChatGPT(OpenAI)が半数以上を占め最も多く、次にMicrosoft Copilotが30%以上、Gemini(Google Bard)が20~30%と続く。
利用している生成AIは、都市の規模を問わず、ChatGPT(OpenAI)、Microsoft Copilot、Gemini(Google Bard)が上位3製品を占める結果となりました。小都市は大・中都市と比較して、上位3位未満のツールの利用割合も高く、幅広いツールが利用されていることが分かりました。
3. 生成AIの導入によって得られた効果は、大・中都市では「外部環境データの収集・分析の品質向上」(40.2%)、小都市では「企画立案業務の品質向上」(34.3%)が最も多い。
生成AIの導入効果については、大都市・中都市においては、「外部環境データの収集・分析の品質向上」の割合が最も高く、40.2%を占めました。小都市では「企画立案業務の品質向上」が34.3%と最も高く、主に情報収集や企画業務に活用されていることが伺えます。
一方、「まだ効果を確認していない」と回答した割合は、大都市で11.3%、中都市で14.3%、小都市で11.9%となり、「効果は得られなかった」と回答した人の割合は、選択できる回答の中で最も低い割合となり、多くの企業が一定の効果を得られていることが示唆されます。
4. 生成AI導入時の課題は、都市の規模を問わず「導入しても使いこなせない」(37%)と「情報が正確か不安」(33%)。
導入時の課題には、都市の規模を問わず「導入しても使いこなせない、浸透しない」と「情報が正確か不安」がそれぞれ30%以上を占め、最も高い割合となりました。また、大都市では「社内でツールの利用を促進する人材がいない」が2番目に高い割合を示し、小都市では「どの程度改善されるか分からない」が大・中都市と比較して高い結果となりました。
これらの結果から、生成AIの具体的な活用方法やイメージが浸透していないことが導入のハードルになっていると考えられます。
5. 生成AIを導入していない理由は、大・中都市においては「社内でツールの利用を促進する人材がいない」(28.3%)が最も多く、次いで「費用対効果が合わない」(23.3%)が続く。小都市では「導入しても使いこなせない」が 21.2%と最も多い。
現時点で生成AIを活用していない取り組みについて、その理由としては大・中都市において「社内でツールの利用を促進する人材がいない」が最も多く、次いで「費用対効果が合わない」が多く挙げられました。
小都市においては「導入しても使いこなせない、浸透しない」が最も多く、続いて「自分の業務において必要性を感じない」という結果となりました。
■調査結果から見えた課題への提言
アビームコンサルティングは、本調査によって明らかとなった実態を分析し、より良い地域社会を創るための生成AIの効果的な活用について、以下の3つを導き出しました。
生成AI投資の妥当性を正しく評価すること
生成AIを導入していない理由の一つとして「費用対効果が合わない」といった問題が挙げられた。地域価値共創の取り組みは、より良い未来の実現を目的に、地域へのサステナブルな投資活動と位置づけられるため、単なる業務改善効果(個人の時間短縮効果)だけの試算では不十分である。短期的な費用対効果を前提にするのではなく、生み出されるであろう事業や施策、その価値までを効果として試算することが必要である。
個人利用から組織的な活用に向けた仕組み化へ
生成AIは個人のブレインワークの時間短縮が主な利用シーンであり、プロセスやサービスへの組み込みは進んでいない様子が伺えた。今後、ますます深刻化する人材不足の解消のためには、生成AIは個人利用の範囲で留めず、「地域の社会課題の分析」「その地域ならではの価値の再発見や発掘」「地域の価値の言語化とコンテンツ生成・発信」といった地域価値共創のプロセスに組み込み、各取り組みの自動化・半自動化や人材を充てられていない業務を担当させ、補完することを目指すべきである。
啓蒙やトレーニングによる正しい知識と理解の醸成
今回の調査より、生成AI導入時の「理解や人材の不足」と「情報の信頼性」に関する問題が浮き彫りになった。人材不足の影響で現場では多忙かつ心理的な余裕がない状態に陥っており、生成AIツールにアクセスしない(食わず嫌いにも見える状態)といった現状も考えられる。生成AI活用によって得られるメリットや、活用しないことによるデメリット、人がいない部分を補完できるシステムとなり従業員のワークライフバランスの適正化に役立つ可能性がある、といった啓蒙や基礎知識の習得は早急に取り組むべきである。
各規模別の調査結果等、本調査の詳細解説については以下リンクよりご確認いただけます。
https://www.abeam.com/jp/ja/insights/083/
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