中でも特に時間を要しているのは当局報告への対応である。送金業務では、送金目的に応じたさまざまな確認と証憑の添付が求められ、さらに送金側や受取側の国によってルールが異なるため、処理が複雑化している。送金システムの導入は進んでいるものの、その大半は入出金処理を中心とした機能にとどまり、取引内容に応じた判断や確認は人手で対応しているケースも多い。これは、あらゆるパターンを網羅するシステムを実装することが容易ではないことに加え、規制改定へ継続的に対応し続けることが難しいためである。
また、コンプライアンス確認も、かつては入金処理時間長期化の要因となっていた。しかし、近年ではAIを用いたソリューションも多く登場しており、特に欧米およびアジアの大手銀行ではAML(マネー・ローンダリング対策)や不正検知の分野において機械学習を活用し、誤検知の削減とより高精度な検知を実現している。HSBCではAIを活用することで、検知数を上げつつも、誤検知の件数を約60%削減することに成功している。これにより、誤検知に対する詳細分析や顧客確認に費やされていた時間が大幅に減少するだけでなく、金融犯罪の阻止そのものの高度化にも寄与している。
さらに、貿易金融においても、AIを用いて船積書類や保証状などからデータを抽出し、自動照合・分類を行うことで、処理時間の短縮やミスの削減につなげる取り組みが進んでいる。貿易金融領域では紙からデジタルへの移行も動きがあり、アジアの主要国でも法整備やプラットフォーム導入が進むなど、今後さらにAI活用の広がりが見込まれる。
AIはパターン認識に優れており、定型的な確認であれば、AMLコンプライアンスは数秒~数分で完了できるケースもある。貿易金融においても、1件あたり30%〜70%程度の工数/処理時間の短縮※2も期待できる。AIによる時間短縮や業務効率化を図りつつも、金融業界で求められる正確性を担保すべく、一次対応にAIを活用し、その後に人が確認する手法を採用する銀行も増えてきている。