【イベントレポート】経営に貢献するシェアードサービスセンターへの変革アジェンダ

インサイト
2026.02.05
  • アウトソーシング
1400292331

日本のシェアードサービスセンター(SSC)は、業務の標準化や人材確保、デジタル化への遅れに対する対応など多くの課題を抱えている。日本企業はグローバル企業と比較して変革が進みにくい現状はあるが、SSCの高度化は経営への貢献度を高め、企業競争力の強化につながる。
このような背景のもと、アビームコンサルティングは、2025年11月19日にセミナー「経営に貢献するSSCへの変革アジェンダ」を開催した。本セミナーでは、NECグループの事例や最新のSSC変革モデルを通じて、SSCが直面する課題とその解決策、今後の方向性について具体的な示唆を提示するものとなった。
(本稿は、本セミナーを再構成しています。)

執筆者情報

  • 髙橋 克嘉

    髙橋 克嘉

    Principal
  • 佐々木 千恵

    石田 真也

    Senior Manager

日本企業におけるシェアードサービスの現状と課題

アビームコンサルティングは日本企業におけるシェアードサービスの取り組み状況や今後の方向性を調査し、2025年3月にホワイトペーパー「日本型シェアードサービスの再生と進化2.0」を発行した。そこでは、日本企業のシェアードサービス導入による効率化は一定程度進んでいるものの、業務標準化・高度化の取り組みは道半ばであり、グローバルの先進企業との差は依然として大きいことが明らかになっている。

同ホワイトペーパーにおいて、調査を通じて浮き彫りになった日本企業のSSCの課題を7つ挙げている。それは、①効率化の限界、②標準化と高度化の壁、③人材のアンマッチ、④業務のブラックボックス化と属人化、⑤人材活用の負のスパイラル、⑥外販の難しさ、⑦進まぬグローバル化である。

SSCのミッションは、間接業務集約による効率化を通じた企業全体の改革である。しかし、多くの日本企業では一定の効率化を実現した後は効率化の余地が減少し、環境変化に対応した標準化や高度化が実施できず、持続的な価値創出に至らない。一方で、SSCの業務改革を推進する人材が不足し、成長の限界を感じた人材が流出するという負のスパイラルに陥るケースも少なくない。また業務においては、時間経過とともにブラックボックス化・属人化が顕著となっている。

さらに、SSCを外販して売り上げ拡大を目指す戦略においては、成功している企業の事例は非常に少ない。その理由として、外販能力をつくり出すための投資不足や人材育成の課題が指摘される。またSSCの発展形態は、レベル1(国/業務/会社ごと)の単体SSC、レベル2(地域ごと)のSSC、レベル3のグローバル共通のSSC(≒GBS:グローバルビジネスサービス)という3段階があるが、多くの企業がレベル3に興味を持ちながらも「自社では無理/環境が違う」とグローバル化へ踏み出せない状況にある。

一方、グローバルトップ企業を見ると、SSCは単なるコスト削減にとどまらず、業務品質向上やガバナンス強化を通じた企業価値創出の中核になっている。このことからも、日本企業においてもSSCの高度化は喫緊の課題だと言えるだろう。

NECビジネスインテリジェンス株式会社におけるSSC高度化の具体事例

セミナーの第一部では、NECビジネスインテリジェンス株式会社(以下NBI)経営企画部門/コーポレートトランスフォーメーション統括部 シニアディレクターの栗田明欣氏をゲストに迎え、SSC高度化の具体事例として、同社がけん引してきたNECグループのSSC変革の取り組みについて語ってもらった。

NECグループのSSC強化に当たり、これまで乗り越えてきた壁には「業務の集約」「要員の集約」「業務の効率化・高度化」の3つが存在したという。いずれか1つでも欠けていた場合、グループ横断の業務改革を推進することができなかったと話し、それぞれの課題と解決のための打ち手を解説した。(図1)

図1 シェアード化において乗り越えるための「3つの壁」

まず「業務の集約」においては、グループ会社ごとに業務プロセスやシステムが異なり、集約対象会社が限定的であったことが課題であった。さらに集約対象会社であっても業務プロセスが特殊な場合には、集約できない業務が残ることが問題となっていた。これに対して、「すべての間接業務を原則集約する」という移管集約の全体方針をトップダウンで周知・展開。加えて、グループ会社の経営層と密にコミュニケーションを取り合意形成を図った。グループ会社共通のシステム展開においても、各社各様のシステムの問題をどのように解決するか、双方向にやりとりをしながら進めていったと言う。

「要員集約」においては、現場担当者の反発やモチベーション低下による離職リスクの増加が課題であったが、経営層からのメッセージ発信、社員への説明会を実施するなど、丁寧なコミュニケーションを重ねることで理解を得ていった。

「業務の効率化・高度化」においては、改革を推進する高度専門人材が不足し、業務プロセス全体の責任主体・権限が不明確なため、グループ横断の改革が進まないことが大きな課題であった。解決には、コア人材の育成・配置、ジョブ型制度の導入、パートナーであるアビームコンサルティングをはじめとした外部の知識・経験の活用、業務機能の集約・移管に伴う権限移譲など、さまざまな打ち手を同時並行で進める必要があったと言う。

さらに今後の展望について、現在NBIが掲げる「変えて、決める会社」というビジョンを示し、「NBIの競争力の源泉である業務プロセスの知識と経験をデータやデジタル技術とかけ合わせて最大化し、論理的で客観的な改革力をもってNECグループ全体を変えていくことを目指しています」と語った。

デジタル技術でグループ全体を変える業務改革活動の取り組み

NBIに蓄積した業務プロセスの知識と経験、さらにデジタル技術をかけ合わせてNECグループ全体を改革し、この目指す姿を実現するためにNBIは、「実践する」「支える」「育てる」という3本の柱を掲げて業務改革活動に取り組んでいる。(図2)

図2 業務改革活動の全体像(資料提供:NECビジネスインテリジェンス株式会社)

これら3本の柱を具体的に説明すると、「実践する」には、組織の枠組みを超えた「E2E(End to End)横断改革活動」、ムダを排除すると同時に品質向上を実現する業務改革手法であるリーン・シックスシグマによる「BB/GB(ブラックベルト/グリーンベルト)活動」、ボトムアップでの改革活動である「MaLIO活動」などがある。「支える」には、生成AI活用、サービスマネジメントの取り組み、「PJ-Gaudi」と呼ばれる業務量と稼働状況の可視化施策による効率化、そして「育てる」には人材育成のためのさまざまな活動が含まれている。

「これらの活動をパイプラインでつなげ、一体的に取り組んでいます。また、活動で培った経験やノウハウを社内外に『伝える』ことにも重点を置いています。例えば、改革活動の表彰制度である『NBI Award』など、活動を盛り上げる機運づくりも実践しています」と話す。

実際に、NBIのこうした業務改革・高度化の効果は大きい。例えば従来の一般的なBPRでは、業務改革に際して業務調査に最も多くの時間と工数を割いていた。ヒアリングをベースに調査を実施した後に、ToBe設計、施策検討、効果算出などを行い、実行計画の策定へと進めていくのが通常の流れだ。だが、労力が多い割には改革の成果は限定的などの課題があった。これを「E2E横断改革活動」では、デジタル技術の活用によって省力化。余力をToBe設計、施策検討、実現性検証など、改革の核心に振り向けることができた。プロセス改革においても、これまでの部署単位・個社単位の最適化ではなく、業務を線で捉えながら部門横断、会社横断で業務を改善するアプローチに変更している。

また、「生成AI活用」では、「User Experience」(顧客体験)、「Operation」(業務改善)、「Platform」(データ・人材)の3つのレイヤー構造でユースケースづくりを推進している。
起点となる「User Experience」レイヤーでは、個々の顧客が担当している業務プロセスや困りごとをデータ化、パーソナライズされた対応を可能にするとともに、データを標準化して「Operation」レイヤーでの効率的な業務遂行や業務改革の高速化、柔軟な応受援態勢につなげている。
そして「Platform」レイヤーでは、「User Experience」「Operation」を支える基盤としてデータを蓄積、人材を育成する他、生成AIによって新たな改革施策の抽出を行うといった役割を担う。

生成AIは、継承が難しく属人的な技術や知見となりがちな暗黙知の社内共有にも活用されており、熟練者への生成AIによるインタビューで暗黙知を導き出し、それを体系化してナレッジとしてデータベースに保管。マニュアルなどには記載のない業務の知見がデータベース化され、属人化の解消につながっているという。

AI活用については、「NECが独自開発した大規模言語モデル『cotomi』、さらにはこれとChatGPTを組み合わせた社内向けの生成AIサービス『NGS』(NEC Generative AI Service)を展開し、積極的に活用を推進しています。こうして自社を実験場としてAIを活用することは、実績を上げたソリューションをクライアントに提供する『クライアントゼロ』のベースにもなっています」と語った。

「人材育成」では、デジタル人材重点強化施策として「インテリジェント化虎の穴」と呼ばれる短期間集中型のデジタルスキル習得プログラムを実施している。例えば、約1カ月(工数100%)で成果創出にこだわりテクノロジーを活用した課題解決に取り組むプログラムがある。これを新入社員向けに9日間に短縮した教育研修(猫の穴)も用意されている。受講者が体験しながらテクノロジーを活用できるハンズオン研修、テクノロジー活用事例を紹介する短尺の動画コンテンツなどにも展開している。

また、NBIでは業務改革手法リーン・シックスベルトの認定取得者の育成も行っており、認定取得者は2024年時点で累計147人に上っている。認定者による改善活動の改革効果創出は、500FTEを越えるという。
これは、NBIが発足して10年間の財務効果で見ると累計237億円にも上り、NECグループの利益水準向上に大きく貢献するものとなった。今後もいっそうの成果を導き出すため、引き続きアビームコンサルティングによる支援に期待していると栗田氏は述べた。

※ FTE:Full-Time Equivalent。フルタイム勤務したときの仕事量を表す単位

ABeam Intelligent Center(AIC)を中核として顧客の変革テーマを実現するBPXモデル

セミナーの第二部では、アビームコンサルティング オペレーショナルエクセレンスビジネスユニット 執行役員 プリンシパルの髙橋克嘉が登壇し、アビームコンサルティングが提供するオファリング内容や支援アプローチを紹介した。

オペレーショナルエクセレンスビジネスユニットは、同社においてアウトソーシング事業を担う組織であり、テクノロジーとビジネスの両面からBPO支援を実施している。SSCの高度化に関しても多くの実績を有しており、日本企業の変革テーマの実現をミッションとして掲げている。同組織が実施するBPO支援において、高橋は次のように語る。

「今、特に求められているのはミドルオフィス・バックオフィスのトランスフォーメーションです。そのためにはコスト削減、業務のDX化、人材活性化、経営高度化など複数のテーマを同時に、かつスピード感をもって推進する必要があります。そこで、当社はBPOとAIをかけ合わせた『ABeam Intelligent Center』(アビームインテリジェントセンター、以下AIC)を中核拠点として、企業のコーポレート機能改革を支援するABeam BPX(Business Process Transformation)モデルを構築しました」(図3)

図3 ABeam BPXモデル

AICは、テクノロジーの進化に合わせて新たな技術を開発し、これを活用しながらクライアントの企業変革をサポートする機能を担う。当然ながら、現在はテクノロジーの主流であるAI活用が中心となっている。

髙橋はABeam BPXの特徴として、以下の5つを挙げる。

  1. 日本最大級のSSC変革で培ったアセットやノウハウの取り込み・横展開
  2. AICを核としたトランスフォーメーション
  3. Win & Win関係をつくり出す共創型の運営モデル
  4. 成果やリスクを共にシェアするコミットメント型契約
  5. クライアント状況に応じた柔軟なサービスメニュー

つまりABeam BPX は、AICやABeamマザーセンターで蓄積したノウハウをアセット化してクライアントとともに進化、従来の業務委託ではなく成果報酬など柔軟な契約形態で成果創出にコミットするモデルと言える。

さらにNBIによって積み重ねられたアセットを整理、「ABeam Transformation アセット」としてクライアントに提供している点も大きな特徴だ。これについて髙橋は、「実際にNBIで実践し、効果が出たノウハウをアセットとして提供することで、速く、確実にSSC高度化やバックオフィス業務の変革を支援することができます」と説明する。

またABeam BPXが、企業を横断するプラットフォームの役割を有し、クライアントとWin & Winの関係をつくり出す点も大きい。NECグループを例にとれば、NBIやAICのアセットをクライアントに共有するだけでなく、クライアントとテクノロジーの共同開発や、共同人材プールによる柔軟なアサインメント、ノウハウ共有・横展開、プラットフォームの共同開発などが可能となっている。

こうした共創型プラットフォームという特徴から、ABeam BPXはクライアントとともに進化していくエコシステムとして機能することが期待でき、クライアント1社では達成できない目標も視野に入ってくる。また業務変革の中核をなすAICでは、今後もAIを積極的に活用し、変革の各フェーズでタスクを簡素化・高度化するなど、進化し続ける点も見逃せない。

SSC高度化支援サービスの提供価値と具体的なアプローチ方法

最後に髙橋は、SSC高度化支援に焦点を当て、ABeam BPXを用いた具体的なアプローチ方法を共有した。

まずABeam BPXでは、最初の1カ月ほどで「ハイスポットレビュー」と呼ばれる現状診断を行い、顧客企業の目指す姿に対する課題整理や変革テーマの抽出、ソリューション案の策定、概算ビジネスケースの算出、ロードマップ案の作成を行う。その後、デューデリジェンスによって詳細調査・実行計画の詳細化を行い、業務に落とし込んでいく。(図4)

図4 SSC高度化支援サービス アプローチ

SSC高度化においても、まずはSSCの成熟度を1カ月ほどで可視化し、他社センターやベンチマークと比較しながら課題を洗い出し、現実的な改善活動計画を策定する。その後、オペレーションの自動化・高度化、運営機能強化、さらにはSSC拡大といったところまで、成果報酬型でアビームコンサルティングが推進する。

「クライアントの状況によって、目的や課題はさまざまです。『他のベンダーに任せていたSSCを丸ごと引き取ってもらいたい』『海外で展開していたSSCを日本に移したい』と具体的に考えている企業もあれば、『SSCを立ち上げ業務を集約化・効率化したい』と漠然と考えている企業もあります。当社は、構想フェーズから実行フェーズまでクライアント企業のステージに応じて柔軟に対応し、成果を創出するモデルを持っています。1例を挙げれば、人的資本経営の基礎となるエンゲージメントサーベイや、グリーントランスフォーメーション(GX)に資するGHG排出の見える化など、昨今取り組みが求められている高度なアジェンダに対し、ツールとオペレーションをセットでサブスクリプション型のBPaaS(Business Process as a Service)として支援することも可能です」(髙橋)

冒頭のホワイトペーパーに見られたように、SSCの高度化をはじめとする多様な課題に対して、実例を含めて紹介してきた。ABeam BPXは、BPRやBPO領域に対しても規模の大小を問わずさまざまな支援が可能だ。

アビームコンサルティングは、人材の高齢化、オペレーションを担う人材やデジタル人材の不足など、社会全体の問題と連動した新たな課題に対して、豊富な知見と実績を活かし、クライアントと共に課題解決に取り組んでいる。今後もSSCの高度化や業務変革のパートナーとして、企業の持続的な成長と競争力強化に貢献し続ける。


Contact

相談やお問い合わせはこちらへ