デジタルテクノロジーの進展により、企業がサービス多角化を急速に推進する現代、見過ごされがちだが深刻な経営リスクがある。それは、ユーザー体験と開発の分断がもたらす、企業基盤の脆弱化だ。
同じ会社が提供するにもかかわらず、サービスごとに操作方法が異なる。用語も揃っていない。こうした断片的な体験は、ユーザーに戸惑いと不信感を与え、やがてブランドそのものへの信頼低下につながる。
その裏では、各プロジェクトが独自に設計を繰り返すことで知見が共有されず、開発の非効率が蓄積していく。一見スピーディに見えても、基盤がなければ調整や再設計に追われ、やがて持続的な成長を阻む要因となる。
本インサイトでは、この二重の課題――ユーザー体験の分断と組織・開発の非効率――を解決する有効な仕組みとして、サービスや組織を横断して共通の基盤を築く「デザインシステム」を取り上げる。それは単なるUIデザインの統一や開発効率向上を超え、企業が継続的に成長し、変化に強い体制を築くための“経営資源”としての役割を果たすものである。この考え方のもと、アビームコンサルティングが自社で取り組んだ実践を通じて、その可能性を考察する。