トランザクションバンキングは、送金・資金管理(Cash Management)や貿易金融(Trade Finance)を統括する法人向け銀行サービスであり、企業の国内外における経済活動を支える重要なインフラとしての役割を担ってきた。また、トランザクションバンキングは銀行にとってもコーポレートバンキング事業の主要な収益源であり、その安定と成長は金融機関の経営において極めて重要である。
金利変動の影響はあるものの、世界的に見てトランザクションバンキング市場は、Cash Management、Trade Financeともに安定的に成長傾向にある。2030年にかけては、年平均成長率(CAGR)約6%※1が見込まれている。この成長トレンドは、グローバル大手銀行の業績からも裏付けられる。たとえば、Citi BankのTreasury and Trade Solutionsは2022年度から2024年度にかけて約23%※2の成長率を記録、また、HSBCのGlobal Trade SolutionsおよびGlobal Payment Solutions(Commercial BankingとGlobal Banking and Markets収益を合算)は、同時期に約53%※3という伸び率を示している。
2010年代半ばから始まったOpen Bankingの潮流は、トランザクションバンキングのビジネスモデルに変化をもたらしている。銀行と企業間の関係性、そして金融サービスの提供方法が変化する中で、企業側が享受するメリットも多様化している。
本インサイトでは、トランザクションバンキングのサービスチャネルの変遷を踏まえ、特にAPIを活用したサービスモデルの特徴を解説する。さらに、今後のトランザクションバンキングサービスのチャネルモデルの動向を分析するとともに、これら新しいサービスモデルが銀行にもたらすチャレンジを考察するとともに、銀行がグローバル市場で競争優位を確立するためのアプローチを提示する。なお、調査にあたっては、Forrester社の協力を得て実施した。