最初に登壇した原は、今回の調査レポート「日本型シェアードサービスの再生と進化2.0」の背景と趣旨について、「2011年にもSSCに関する同様の調査レポートを発表したが、ビジネス環境の変化への対応や戦略変更の遅れが見られ、当時提言したSSCの成長が停滞しているのではないかと感じられた。そのため直近の実態と根本課題を明らかにするため、今回のリサーチを実施した」と紹介した。
なお、今回の調査は日本に本社を置きSSCを保有する、大手グローバル企業15社へのインタビューからレポートをまとめている。
原は、「この10年で、大きくビジネス環境が変わった」とし、具体的な変化を5項目に整理した。
まず挙げられるのが、「人口動態と人件費」だ。日本の少子高齢化が急激に進展しているのは周知の通りだが、その一方では、BPOの主要なアウトソーシング先である中国の人件費高騰が続いている。この結果、リショアリングなどの影響による国内派遣市場のリソースひっ迫とそれによるコスト上昇が起きているという。
2つ目は「コーポレートガバナンス」である。マーケットからの厳格化の要請が増している上、日系企業の海外売上高がここ10年で約1.5倍に伸長、海外子会社などのガバナンスを強化する必要性が生じている。具体例として原は「開示のための情報収集や、モニタリング業務の負荷が増大している」と補足した。
3つ目は「人不足と人余り」だ。現在、人材需給ではこうした矛盾が起きており、有効求人倍率1.3倍という一方で、多くの企業で早期退職を募るなどの余剰人員整理が行われている。これは、「欲しい人材」と「今いる人材」のアンマッチが、各所で生じている状況を示している。
4つ目の「テクノロジー」では、RPAによる業務改善に端を発し、現在は生成AIを使った業務の抜本的改革までが可能となってきたことが、この10年の見逃せない変化として挙げられる。またSaaSが広く使われるようになった結果、個々の企業を超えた「業務の標準化」が進んだ。
そして5つ目には「働き方」を挙げる。新型コロナを契機としたリモートワークの定着、また大企業を中心としたジョブ型人事制度の導入が進んでいる。
原は、これらがこの10年のビジネス環境の見逃せない変化であるとした。