【イベントレポート】Shopify社と共同イベント「Shopifyで叶える、あらゆる産業のD2F(Direct to Fan)×エンタメ型消費」を開催

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2025.01.10
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6/18(火)アビームコンサルティングは、グローバルを代表するECプラットフォーム企業であるShopify Japan株式会社と共同で「Shopify Partners ロードショー第4回/ Shopifyで叶える、あらゆる産業のD2F(Direct to Fan)×エンタメ型消費」(以下、本イベント)を開催した。本稿では、Shopifyが展開するコマースプラットフォームを活用したあらゆる産業における新ビジネスの実現やスポーツの付加価値、社会的価値創出について事例を交えてお伝えする。
(本稿は本イベントでの当社講演「スポーツ×ライブオークション Shopifyによるスポーツクラブの“強さ”に限らない魅力発信」と「D2F(Direct to Fan)×エンタメ型消費 あらゆる産業で重要となるファンタイプと消費行動に迫る!」をもとに再構成しています。)

本イベントの概要はこちら

「スポーツ×ライブオークション」における新たな収益源と実現のポイント

Shopifyにて当社が構築したスポーツクラブ向けのライブオークションプラットフォーム「Fun Portal」※1の内容を中心に、琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社(以下、琉球アスティーダ) 代表取締役会長兼社長 早川周作氏と当社 執行役員 プリンシパル 久保田圭一が「スポーツ×ライブオークション」の可能性と、その実現についてディスカッションを行った。

写真:右から琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社 代表取締役会長兼社長 早川周作氏、
当社 執行役員 プリンシパル 久保田圭一

「Fun Portal」とは、オフィシャルアイテムのみが出品される日本初のライブオークションプラットフォームである。このプラットフォームでは、画面上に埋め込んだYouTubeでライブ配信の視聴ができ、同時に視聴者がライブ配信を見ながらリアルタイムで選手にメッセージを送ることができる。また、ライブ配信・双方向対話を介して商品にまつわるストーリーや特徴の理解を高め、同画面上で選手が試合で着用したユニフォームや始球式の参加券など、あらゆるモノ・コト商材が落札できる仕組みになっているのが特長だ。

沖縄に本社を置き、プロ卓球リーグ「Tリーグ」に参戦するプロチームの運営等を行う琉球アスティーダ※2は、ライブオークションプラットフォームを当社と共同で構築。ライブオークションでは、所属する卓球の張本智和選手などが、ファンからの問いに回答しながら、選手自らサイン入りTシャツを手に取り、出品している。ファンの間では、選手の素人さが共感を生み、盛り上がるという。これまで選手たちはメディア対応には慣れていたものの、このようなライブ配信におけるオークション対応には慣れておらず、最初は苦手意識を持っていた選手たちだったが、次第に楽しんで参加してくれるようになったという。
また、YouTubeコメントでファンが選手にメッセージを送ることができるため、「双方向対話ができることで選手とファンの関係強化にも繋がっている」と早川氏は語る。(図1)

図1:Fun Portalにおける「ライブオークション」の価値

次に、琉球アスティーダと当社が取り組んだ、楽天ヴィッセル神戸株式会社(以下、ヴィッセル神戸)のオークションを例に、スポーツの付加価値について語った。
ヴィッセル神戸では、シーズン終了後に廃棄予定だったロッカールームにある選手の写真入りパネルをオークションに出したところ、4日間で約400万円を売り上げた。また、このパネルを会場受け取り(BOPIS※3)にしたことで来場促進に繋がり、配送料の削減にもなったという。
廃棄予定のパネルに選手のサインが入ったことで価値が付き、「スポーツ界とエンタメ界での意義を感じた」と久保田は話す。様々な企業が保有している「モノ」に価値を見出していなくても、コアファンにとっては大変価値があるものなのだ。あらゆるモノ・コトの価値を可視化し、廃棄するものにも「価値」を与えることで廃棄物の削減にもなる。オークションは稼ぐ目的があるように思われがちだが、事例からも分かるように社会的価値創出にもなる。

眠っている魅力のマネタイズ

「スポーツ観戦は移動を含めて一日掛かる。会場でマネタイズしているのは飲食などの一部だけで、終了後は何もないのが今の日本のスポーツ界だ」とライブオークションを企画した背景について久保田は語る。また、終了後の余韻を楽しむ時間がなく、来場者の時間をマネタイズできていないことにも言及した。
具体的には、ファンは会場への移動中や試合前後にチームや選手のことを考える。つまりこの時間こそが顧客ロイヤリティが高いといえる。例えば、余韻を楽しむファンは、帰りの移動中に試合関連のサイトを見るだろう。勝利後に選手がロッカールームに戻り、着用していたユニフォームをオークションにかけてみるなど、購買促進につながるのではないか。このように選手やクラブの魅力を発掘し、アイデアの創出をすることも重要だ。「価値を可視化することで、選手自らの価値も再発見することができる」と早川氏は話す。また、価値の再定義をすることにより、数時間でも価値を生み出すことでクラブの価値も上げることができる。
アスリートのモノ商材には、優勝時に履いていたシューズや盗塁時のスライディングで穴が開いたユニフォームなど千差万別のストーリーがある。また、試合後に実施するヒーローインタビューで「〇〇さん応援有難う」のメッセージを言ってもらえる権利など、ファンにとって非常に魅力的なコト商材の創出も可能である。新商品開発に頼らない、マネタイズ・マーケティングツールの一つとして、ぜひ眠っている魅力に注目してもらいたい。
今後のスポーツ業界の新たな収益源として期待できるだろう。

あらゆる産業におけるD2F(Direct to Fan)の重要性

セッション2の「D2F(Direct to Fan)×エンタメ型消費 あらゆる産業で重要となるファンタイプと消費行動に迫る!」では、当社の顧問である本間充と久保田が「Fun Portal」の運営から見えたファンタイプや、エンタメ型消費の姿を基に、あらゆる産業におけるD2F(Direct to Fan)の重要性について語った。
ファンのタイプには3つのタイプがあり、1つ目が選手を家族や仲間のように思って接したいと感じる「家族/仲間」タイプ、2つ目は現地での応援やライブオークションなどに参加することを楽しむファンの「コミュニティ」タイプ、そして3つ目は選手への「憧れ」タイプである。これら3つは、「スポーツ界だけでなく一般産業でも成り立つ」と本間は語る。例えば「コミュニティ」を例にあげてみると、好きなブランドの服があるとする。店舗に行けば店員はその店のブランドの服を着用しており、客は店員と一緒に服に関する会話を楽しむことができるため、これを目的に訪問し購入するといった具合だ。
消費行動では、お金を払っていることを最終ゴールと理解することで、「提供体験価値を変えられる」と本間は言う。
また、オークションは「モノ」だけではなく、「コト」もある。
「憧れ」のタイプを例に挙げると、昔、海外のアメフトチームでは、ファンが選手と一緒に会場までバス移動ができるというチケットが販売された。憧れの選手の隣に座り、会話ができるというファンからすると最高な体験である。また、最近の日本のプロ野球では、観客は試合終了後にグランドに降りてフィールド体験ができるといったサービスもある。
これまで社内では気づかなかったモノ・コトが、ファンにとっては1点ものであったり、貴重な体験になったりするものだ。そのため、いろんな産業と企画をすることで付加価値に気づくことができ、日本の経済活性化にも繋がると考える。

写真:右から当社 顧問 本間充、同 執行役員 プリンシパル 久保田圭一

販売チャネル多様化に伴うエンタメコマースの最適化

ライブオークションにおけるエンタメ型消費の特長には3つの要素がある。
1つ目が選手の生配信や交流を基にしたライブ実施をする「エモーショナル」、2つ目がサイトの遷移が少ない「シンプル」、そして3つ目がこの世に一つだけの「スペシャル」である。これら3つが揃うことで、消費者の購買意欲を瞬時に高める「消費の作り方」だと久保田は話す。(図2)
ライブオークションでは、リアルタイムに見られる独自性や選手の素の表情が伝わることで、「モノ+選手」の情熱を加味した値段で落札される。
そのため、ライブ配信、SNS、販売商品を回遊することなく辿り着けるような視聴画面を最適化することが重要になる。

では、今後のEC構築の在り方はどうあるべきだろうか。
ライブオークションにおけるエンタメ型消費の特長3つはオークションだけでなく、ECでも訴求ができる。上述したように、スポーツファンが選手を応援したい気持ちを他の業界に当てはめると、例えばハイブランドのデザイナー自身に憧れを持つファン層をターゲットとしたビジネスなども考えられ、toC企業の新たなビジネスチャンスは至るところにあると言えるだろう。
特にECで販売するということは店舗と比べ在庫リスクもないため、今後のECは店舗との棲み分けを考えても、新たな商材を売るチャレンジの場として活用していくべきだ。

図2:エンタメ型消費のポイント

このFun Portalの構築において、当社がShopifyを選んだ理由はいくつかあるが、一番はその拡張性である。拡張アプリが豊富であり、ノーコーディングで開発をする必要もなく、また柔軟性も高い。色々な変化に対応できるなど簡単にプラットフォームが構築できるのもポイントだ。また、多言語対応が可能なため、「海外のマーケット市場にも対応できることが魅力」と琉球アスティーダの早川氏は語る。
Shopifyでは様々なトレンド機能をスマホアプリのようにインストールすることで実装することができる。当社の構築したプラットフォームでも、オークション機能や、モールとしてのマルチベンダー機能、SNSログイン機能など様々な機能をアプリで実現している。(図3)
Shopifyはその他の外資系ECプラットフォームと比較しても、素早く・拡張性高く導入できることが強みでもある。
我々が構築したライブオークションプラットフォームも、手軽に構築を行った。このような手軽さや拡張性は、新しいモノ・コト売りに挑戦したい企業にとって非常に親和性が高い。
今回のイベントでのディスカッションを通して、これからの時代は「EC導入自体に時間やお金を掛ける」という状態から脱却し、「新しいビジネスモデル・マネタイズを考えることに注力し、実現手段であるEC導入はなるべく手軽に」という状態を目指す必要性があると提言する。 

図3:企業のEC構築ニーズとShopifyの対応

アビームコンサルティングは、今後もスポーツ・エンターテインメント業界でのライブオークション事例を様々なtoC業界に展開し、当社があらゆる産業のD2F(Direct to Fan)を後押ししたいと考えている。

※1 2024年9月「Sports Fun Portal」から「Fun Portal」へサービス名称変更
※2 琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社ホームページ
※3 BOPIS =Buy Online Pick-up In Store:ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取る仕組み

*視聴には事前に登録が必要となります


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