株式会社ダイセル

BPO活用の戦略立案及び実行計画を策定、持続可能で柔軟な経理組織体制の構築を目指す
事例
  • 経営戦略/経営改革
  • 財務会計/経営管理
株式会社ダイセル

株式会社ダイセル(以下、ダイセル)の経理グループでは、社内外から求められるコーポレート機能の役割期待が変化・拡大していく中、業務プロセスの効率化と高付加価値業務へのシフトを目指し、BPO(Business Process Outsourcing)を活用した現場業務の負荷軽減を検討していた。

BPOの適用範囲は、企業が目指す将来像や経理機能に求められる役割・能力によって大きく異なるため、まずは経理グループが果たすべき役割と備えるべきケイパビリティを明確に定義することが、戦略的なBPO活用の第一歩となる。

ダイセルは、BPO活用を「組織・業務全体の変革ストーリー」の一環として位置づけた。BPO活用の戦略立案にあたり、特定のベンダに依存しない中立的な視点と、豊富な経験・知見を兼ね備えたアビームコンサルティングをパートナーに選定。BPO活用を変革の第一歩とし、将来的な理想像の実現に向けて、持続可能で柔軟な経理組織体制の構築を目指している。

経営/事業上の課題

  • 外部環境の急激な変化を背景に、ダイセルの経理グループに求められる役割は一層拡大・高度化していた。従来の業務プロセスや組織体制のままでは、求められる役割の変化に迅速かつ的確に対応することが困難な状況にあった。
  • BPOの活用によって業務負荷を軽減しリソースを創出するだけでは、目指す姿の実現には不十分であり、経理グループとしてのあるべき姿と、それを支える必要な機能・役割を明確化することが必要があった。
  • BPO活用に対する懸念が残る中、特定ベンダの利害関係に左右されない第三者的視点から、ベンダ選定のあり方や、実際のBPO導入・運用における失敗事例を踏まえた留意点を整理し、戦略的に検討する必要があった。

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • 目指すべき経理グループの姿を明確にし、その実現に向けたBPO活用の実行計画を策定。明確化したあり姿の実現を可能とする、BPOベンダの選定支援を行った。
  • 経理グループを含む計数管理全体の機能を5つに整理し、他社事例や業界動向を踏まえて強化すべき機能と効率化すべき機能を選定。今後シフトすべき付加価値の高い業務の内容を定義した。
  • 目指す姿より選定した強化すべき機能・効率化すべき機能より、今後必要となる人財像を7パターンに定義、各年代別のキャリアパス例や既存のMBO(Management by Objectives)の運用を活用した人財育成の仕組みを設計、目指す姿実現に向けた人財ポートフォリオ見直しに向けた計画を策定した。

支援の成果

  • 目指すべきBPO活用型経理グループの構想と実行計画を策定し、ベンダ選定支援を経て、2025年4月から段階的に経理業務の移管を開始。当初の計画に基づく本番稼働を実現した。
  • BPOの活用により創出されたリソースを利用し、これまで手が回らず検討できていなかった会計システム見直しの検討に着手。今後は人財モデルに基づく育成と、管理会計機能を担う関係部門との計画的なローテーションを通じて、若手が成長し活躍できる持続可能な組織体制の構築を推進していく。

プロジェクトの目標・課題と解決策 

BPO活用によるリソース創出から高付加価値業務へのシフト、そして若手成長し活躍できる持続可能な体制構築までの取り組み

本プロジェクトのゴールは、BPOの活用によって現場の業務負荷を軽減し、創出されたリソースを高付加価値業務へシフトすることであった。さらに、この成果を継続的かつ発展的に維持するための基盤として、人財育成や組織風土の醸成を含む持続可能な運営体制の構築も必要であった。

1.高付加価値業務の明確化に向けて、グループ機能の整理
高付加価値業務の明確化に向けた論点の整理のため経理グループを含む計数管理機能を5つに分解した。

  • 経理(制度会計・出納)
  • 管理会計
  • 税務
  • 財務
  • 内部統制・ガバナンス

各機能について、他社事例や業界動向を踏まえながら、現状とのギャップを精緻に整理し、経営の意向と現場の視点を融合させながら、経理グループの目指す姿を段階的にブラッシュアップしていった。目指す姿を明確化する過程で、関係者間の共通認識を醸成しながら、高付加価値業務の解像度を段階的に高めていった。


2.強化ポイントの明確化と持続可能な体制の構築
機能整理の結果、現状と理想の間に大きなギャップがあり、経営層・現場双方の期待が最も高かった領域として、管理会計機能と特定。

これを経理グループを含む計数管理機能全体としての強化すべき領域と設定。この領域を強化するため、経理(制度会計・出納)機能から管理会計機能を担う関係部門へ計画的に人財を輩出する方針を策定。さらに、この人財輩出を契機として、今後、計数管理を担う関係部門全体での計画的なローテーションを目指している。

アビームの貢献

目指す姿の実現に向けた多角的な視点での課題抽出と丁寧な対話による現場納得感の醸成

経理グループの目指す姿の実現に向けて、リソースの創出は必要条件であるものの、それ自体が十分条件とは言えない。BPOの活用を単なる業務負荷の軽減にとどめず、創出されたリソースをいかに戦略的に活用するかについて、組織全体で目的意識を共有することが不可欠であった。

本プロジェクトでは、機能面の整理や業務課題の特定に加え、人財不足や、理想とする人財像との間に存在するスキル・マインド面でのギャップも顕在化した。これらの人財課題を解消するためには、現場のチームリーダーや次世代リーダー候補、若手担当者を巻き込み、互いに納得感を持てるまで丁寧なコミュニケーションを重ねることが重要であった。

こうした多角的な課題分析と、意識変革を伴う丁寧な対話を通じて、組織全体の理解と共感を醸成しながら進められたことが、プロジェクト成功の大きな要因となった。


当部門で初めてとなるBPOの実施や、全社の計数機能の強化に向けた人財輩出、人財育成の検討にあたり、クライアント課題をしっかり理解し、寄り添う姿勢で議論をリードいただき、ここまでこられたと感じています。
社内の期待に応え、持続可能な組織となるべく、まだ道半ばですが、この変革に向けてメンバーの意識も確実に変わり始めています。この流れを止めることなく、着実に取り組みを進め、会社経営に貢献できる組織にしていきたいと思います。

事業支援本部 経理グループ
部長
髙橋 清 氏

事業支援本部 経理グループ 部長 髙橋 清 氏

目指す姿へ向けた第1歩となるBPOの本番開始は、当初は不安もありましたが、現場管理者、および担当者、BPOベンダなど関係者全員の協力により概ねスケジュール通りに進んでいます。
現場担当者からは、「高付加価値業務へのシフトなど、今後に向け不安がないわけではないが、今回の変革により経験値も上がり今後のキャリアにもつながる」といった前向きな声も出ています。
また、今回の取り組みをきっかけに新たに部内の改革を推進できる人財が育ちつつあることも副次的な効果であり、着実に組織風土は変わりつつあると感じています。

事業支援本部 経理グループ ソリューションチーム
副部長
大原 範久 氏

事業支援本部 経理グループ ソリューションチーム 副部長 大原 範久 氏

「BPO後の目指す姿は、もちろん社内で検討はしていましたが、アビームから最近の動向や他社事例を紹介頂き、議論をファシリテートしてくれたことで、議論を深めることができました。
BPO活用という組織の機能や形態が変わる大きな変革に合わせて、グループ内の幅広いメンバーで組織のミッション・ビジョンを議論できたことは非常に有意義でした。

事業支援本部 経理グループ ソリューションチーム
専門部長
西田 暁洋 氏

事業支援本部 経理グループ ソリューションチーム 専門部長 西田 暁洋 氏

Customer Profile

会社名
株式会社ダイセル
所在地
大阪府大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪タワーB
設立
1919年
事業内容
セルロース、有機合成、合成樹脂、火工品の4事業を軸に、化学技術で安全・快適・環境に貢献する製品を提供
資本金
362億7,544万89円(2025年3月31日現在)
株式会社ダイセル

2025年12月9日

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