日本板硝子株式会社

ガラスサイネージによる新しいメディア事業の構想から立上げ、運営までの伴走型の支援
事例
  • 不動産・建設・住宅
  • メディア
  • 新規事業開発
  • マーケティング/セールス/顧客サービス

ガラスや土石製品の製造・販売を手掛ける日本板硝子株式会社(以下、日本板硝子)。同社は、新規事業の一環として、ガラス建築に特化した屋外広告であるガラスサイネージを展開し、メディアオーナーとして管理・運営している。この事業立ち上げの背景には、ガラス製造販売による社会インフラとしての価値創出に加え、ガラスの周辺価値を取り込んだ新規ビジネスを展開することで、ガラスの価値向上に取り組むという同社の姿勢がある。早期事業化に向けて、2022年12月からアビームコンサルティングがパートナーに選ばれ、構想段階の立ち上げから運営に至るまでの伴走支援を行った。

経営/事業上の課題

  • ガラスの周辺価値を取り込んだ新規ビジネス立上げに伴い、従来のマーケティングおよびセールス戦略の見直し。
  • 競争の激しい屋外広告市場で消費者への独自の体験価値を踏まえた商品設計と、広告業界の構造や商慣習を踏まえた販売戦略の策定。
  • 当メディア事業の運営・管理において、多岐にわたる業務に必要なリソースの確保。

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • 新規ビジネスのアイディアを具現化し拡大するフェーズにおいて、事業計画策定支援から、広告主ニーズに基づくマーケティング戦略の立案と実行。
  • 広告の業界構造を踏まえた、効率的な広告主・広告代理店アプローチなど販路の構築や販売におけるアライアンス構築などのセールス戦略の立案と実行。
  • 伴走型のプロジェクトマネジメント業務として、プロジェクト管理・広告在庫管理・オペレーションフロー構築・契約関連資料を整備。

支援の成果

  • ガラスサイネージの独自性を明確にし、広告主のニーズを考慮して既存メディアとの差別化を図り、広告商品の設計と情報発信を行った。
  • 複数の広告代理店との販路を構築し、屋外サイネージネットワーク運営企業とアライアンスを形成してセールスにつなげた。
  • 事業計画に従い、予定通りに販売を開始し、スムーズな立ち上げとメディア運営を実行した。

クライアント課題の難所

広告主に選ばれるメディアの構築と運営方法/ガラスサイネージの独自戦略

日本板硝子の新しいメディア事業のビジネスモデルは、駅や商業施設などのロケーションオーナーからガラス面の活用を受託し、日本板硝子がメディアオーナーとしてガラスサイネージを設置し、広告主へ広告枠を提供するというもの。収益は広告主(広告代理店経由を含む)からのスポンサー売上が全てとなる。
既存ビジネスモデルにおけるマーケティング・セールス戦略とは異なり、消費者への体験提供において独自性を生み出し、他のメディアや屋外広告との差別化を図り、広告主から選ばれ続ける広告メディアになることが重要である。まずは、ガラスサイネージが持つ特性が消費者への体験提供としてどのような効果が期待できるかを考え、結果としてどのような態度変容を促すかを想像する必要があった。その上で、既存媒体と比較しメディアとしての特性や訴求ポイントの整理を行う必要があった。

新規メディアは、広告主に選択されるために新しいポジションの確立が重要である。広告主にとって、メディアの選択肢は4大マスメディアやインターネット広告など多数存在し、さらに競合となり得る屋外の大型ビジョンも都内に100箇所以上設置されている。このようにメディアが無数に存在する中で、新規メディアとして目に触れる機会を創出し選ばれることが重要である。まず、広告主に選ばれる媒体になるために、広告展開におけるメディアの役割や立ち位置を明確化し、リーチボリュームとロケーション特性を考慮した訴求ポイントを検討し発信することが求められる。また、広告業界の構造を踏まえた効率的な広告代理店へのアプローチなどの販路の構築、販売におけるアライアンス構築にも注意が必要である。広告業界独自の商習慣が存在し、広告主とメディアの間に多くのプレイヤーが介在するため、それぞれの役割やニーズを理解し、各プレイヤーに応じた適切なアプローチが求められる。

当メディア事業を運営・管理する上で、多岐にわたる業務に対するリソースの確保とナレッジ不足の解消が課題であった。また、限られたリソースで早期事業化と売上の向上を目指すために、優先順位をつけて効果的な施策を実施する必要があった。

そのため、新規メディア事業の立ち上げとマーケティングの知見や実行力への期待から、アビームコンサルティングがパートナーに選ばれ、マーケティング戦略立案支援とセールス戦略の立案と実行支援を行った。

メディア事業(ガラスサイネージ)のビジネスモデル
GLASS NODE 東銀座スクエアビジョン

プロジェクトの重要成功要因

ガラスサイネージの消費者体験価値に考慮した差別化戦略と事業の運営

アビームコンサルティングのリードのもと、新規メディア事業立ち上げに向けて、取り組むべき内容を具体化し、実行した。

【消費者へ提供する体験価値の再定義】
メディア事業を展開するうえで、消費者に独自の体験価値を提供することは、競争の激しい市場で差別化を図るための重要な戦略である。そのためガラスサイネージが提供する体験価値を、存在感、透過性、フレームがないという特性から、視覚的なインパクトや建物から突然映像が飛び出してくるような登場感や立体感を演出し、強烈な印象することができるメディアと再定義した。

【広告主ニーズの深い洞察】
多くの媒体が存在する中で、広告主に選ばれるために、まず正確にニーズの把握を行った。広告主の媒体利用目的、選定プロセス、選定基準を詳細に確認し、その結果を基に商品・価格・販売方法・プロモーションなどの戦略を立案し、実行した。

【仮説検証サイクルを短縮するための迅速なフィードバックと柔軟な対応】
新規事業は不確実性に伴うリスクがつきものであるため、事業を軌道に乗せるまでは特に仮説検証のサイクルを回し続ける必要がある。柔軟な対応力および常に改善し続ける姿勢を備え、想定していた広告主のニーズと異なるマーケットからのリアクションに対して、ゼロベースで対策を検討し、スピーディーに施策を実行した。加えて、タスクの棚卸とスケジュール管理を徹底することで、計画通りに事業の立ち上げを実現した。

アビームの貢献

新規ビジネスのアイデアを具現化し拡大するフェーズにおいて、事業パートナーとして構想から立上げ・運営までの伴走型の支援

アビームコンサルティングは、メディア事業のビジネスモデル、広告業界の構造と商慣習、マーケティング全般の知識を活かし、既存ビジネスモデルとは異なるメディア事業におけるマーケティング戦略・セールス戦略の立案と実行を支援。事業計画の策定、消費者体験価値の設計、広告主ニーズに基づく商品・価格・プロモーション戦略の立案と実行を行った。広告主・広告代理店アプローチや販路の構築、アライアンス形成、プロジェクト管理、広告在庫管理、オペレーションフロー構築、契約関連資料の整備などを実施。ガラスサイネージの独自性を明確にし、広告主のニーズを考慮して既存メディアとの差別化を図り、広告商品の設計と情報発信を行った。10社を超える広告代理店との販路を構築し、屋外サイネージネットワーク運営企業とアライアンスを形成してセールスに貢献。事業計画に従い、予定通りに2024年10月に販売を開始し、スムーズな立ち上げとメディア運営を実行。

現状の事業課題や目標を深く理解し、最新の市場動向や技術革新を把握し、変化する環境にも迅速に対応。屋外広告事業として立ち上がった「GLASS NODE 東銀座スクエアビジョン」は、銀座と築地の間の晴海通り沿いに設置された大型ガラスサイネージで、銀座エリアでは希少な存在としての立ち位置を築きつつある。現在は、企業ブランディング目的の企業、銀座に店舗を構える企業、東銀座にいる消費者をターゲットにした企業などに興味を持たれている。

今後は、顧客からの注目を高め、周辺エリアの集客にも繋がるような顧客体験の高度化を検討。ガラス面であれば場所を選ばない設置柔軟性、透過性、フレームがないことによる建物との一体化を活かした新しい顧客体験の創造を目指している。ガラスサイネージを使った新たな体験価値として、「没入感」「インタラクティブ性」「偶発性」をキーワードに検討を進めている。日本板硝子では都市部を中心に更なるガラス面活用を検討しており、アビームコンサルティングでは展開の加速に向けたアライアンス構築や体験価値提供に向けて引き続き伴走支援する予定。

ガラスサイネージならではの体験価値で媒体価値向上に寄与

日本板硝子ではガラスの専門メーカーとして、建築用・自動車用・産業用に事業を展開しております。今回、建築ガラス事業部門の日本エリアで展開する新規事業のビジネス立上げフェーズにてアビームコンサルティングの皆さんにご支援いただきました。
支援をお願いするにあたり最も重視したのが、事業を展開する広告市場におけるインサイダーとしてのご経験を深く持たれているか否か、という点でしたが、ご支援頂いたチームが皆さん総合広告代理店での経験があり、これ以上ない体制を組んでいただきました。
結果として、広告事業という当社にとって未知の領域において販売面の基盤を高いレベルで構築いただき、心より感謝しております。

日本板硝子
建築ガラス事業部門 日本統括部 事業開発部 課長
金子 真吾氏

Customer Profile

会社名
日本板硝子株式会社
所在地
東京都港区三田3丁目5番27号 住友不動産東京三田サウスタワー
設立
1918年
事業内容
世界最大級のガラスメーカーで、建築用および自動車用ガラス事業をグローバルで展開している。
資本金
116,853百万円(2024年3月期)
日本板硝子株式会社、ロゴ

2025年3月31日

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