日清食品では、CSV経営に向けた価値創造プロセスを検討する中で、非財務的価値の関係性を見ていくことが重要だと考えていた。その上で、エーザイ柳氏が提唱する柳モデル分析は、企業価値に影響を持つと考えられるESG課題を特定するためのもので、分析結果からは要素間の関係が把握できる。一方その背景にある「なぜ」という問いに答えるには、日清食品のミッションとの結び付きやそれぞれの価値の関係性を分析する必要があると、今回の取り組みの中で考えを発展させていった。
そこで日清食品では、柳モデルを活用したESG指標とPBRの関係性分析に加え、独自に考案した価値関連性の分析も行うことにした。価値関連性の分析では、日清食品オリジナルの仮説を立て、対象とするESG指標を絞って指標間の関係を検証、ESGアクションから企業価値向上までのストーリーを実証する。
「社内でのオペレーション改革に生かしやすいため、指標間の関係性を見るのはとても大事だと考えています」(横山氏)。
Digital ESG Data Analyticsでは、ESG全域についての指標の収集が必要になる。そのために、まずは収集したい指標の項目を定め、次に各部門から該当するデータを出してもらう。データによっては、長期間蓄積していて過去に遡って見られるものもあれば、それほどでもないものもある。「過去のデータを収集するのは本当に大変です。どの部門も今回のAnalyticsのためにデータを用意してきたわけではありません。今回の分析のためにデータをまとめなければならず、意義を理解し、協力してくれた各部門には本当に感謝しています」(横山氏)。
日清食品では、以前からESGデータの開示を進めるために、各部門からESGデータの収集を行っていた。その経験によってESG指標に対する理解や協力体制ができていたことがベースとなり、今回、全社一丸となっての取り組みが進んだ。結果、最終的にはCO2排出量や従業員1人当たりの研修時間、社会課題に貢献する商品の創出数など270項目余りの指標を収集することができた。
一方、価値関連性の分析のための仮説は、4つのミッションに基づく価値形成の過程で出てきた要素を絞り込んで、フレームワークづくりの議論を進め、整理していった。「指標を分析すれば数値は出てくるのですが、重要なのはその解釈です。私たちはデータアナリティクスの専門家ではないので、アビームが統計に関する知見を基に、分かりやすくサポートしてくれました。おかげで深い議論ができました」(横山氏)。