現在、卸電力市場では、電力の需要と供給のバランス、天候の変化による電力需要の増減、日射による太陽光発電量の変化など様々な要因によって、電力価格は大きく変化する。「電力の価格変動は非常に大きく、突然、通常時の数倍に跳ね上がったりします。電力は貯めることができないという特性ゆえのもので、欧米でも同じです。価格変動が非常に激しい中で、電力価格を予測し、収益を確保していくことが必要なのです」(榎本氏)。
東北電力にとって、トレーディング部門の運用にあたっての最大の課題は、会社としてトレーディング経験が十分でなかったことだった。欧米の事例や金融取引などの事例を調査した結果、複雑な取引を効率的に管理し、リスクを的確に把握する機能がトレーディングを行う上で不可欠なものであることが分かってきた。そこでトレーディングの中味を確定させる作業を進めるとともに、そのために必要なエネルギー取引・リスク管理(ETRM)システムの導入作業に同時に取り組むことにした。
東北電力ではETRMシステムの選定にあたって、まずは、国内のパッケージ製品を調べたが、日本にはETRMに特化した製品はなかった。そこで複数の海外製品の中から、欧米で多くの実績があり、アビームコンサルティングがパートナーとして提供している米国オープンリンクのアプリケーション「Endur」を導入することに決めた。「トレーディングのワークフローもそれに対応したシステムも、ゼロから作り上げる必要があり、その際、システムで何をやっていくのか、という基本的な設計図を書く方法論をアビームコンサルティングが持っていたことが、アビームコンサルティングとEndurに決めた最大の理由でした」(榎本氏)。またEndurが幅広い商品に対応していることも選定した理由だった。