地域金融機関に関する話をしていてよく出てくるのは「預金を獲得しても、それが儲けにつながっているかどうかが把握できない」ということである。管理会計上では部門のモチベーション維持のことも考慮する必要があることから「預金獲得はマイナスの部門評価を付ける」というケースは少ないと推測されるが、銀行全体にとって良い事なのか悪い事なのかについては簡単に判断できない。そこでいくつかの前提条件を置きつつ、預金を新規で獲得するコストと運用側のターゲットレートをイメージできるような例を考えてみた。
(1)預金調達コストの算出
(例)普通預金で100百万円(すべてペイオフ対象)を調達した場合の調達コストを考える
想定ケースとしては第一地銀
①マンパワーによって預金を獲得してきた場合のコスト概算
- 2017年3月末時点の預金残高合計:254,944,105百万円(第一地銀合計、譲渡性預金含まず)
- 2016年3月末時点の預金残高合計:248,909,433百万円(同上)
- 2016年3月期従業員合計 : 131,886人
→ 従業員1人あたりの預金増加額は45.757百万円(=(254,944,105-248,909,433)/131,886)
伸び率としては0.0242(=(254,944,105-248,909,433)/248,909,433)
⇒ 従業員1人あたりの2.42%の追加的労働力として捉え、1人あたりの平均年収を5百万円とすると、100百万円の預金を調達するには264,440円(=5百万円×0.0242×100百万円/45.757百万円)
以上より、すべてマンパワーで調達する場合には264,440円(0.264%)のコストが必要
②システム(ATMや資金移動等)によって集まった預金の場合のコスト概算
- 現状ATM手数料は1回100円+税(時間によっては無料/200円+税)であり、1回のオペレーションとしてかかるシステムコストを100円と想定
- 現実的なシステム維持コストや追加的な人的コストを厳密に算出することは難しいため、維持コスト等は勘案せず、資金移動を1回1百万円×10回×10顧客として100百万円を調達すると仮定
→ 100百万円あたりのコストは10,000円(=100円×10回×10人)
以上より、すべてシステムを使って調達する場合は10,000円(0.01%)のコストが必要
③マンパワーとシステムによる調達割合についてのコスト概算