世界でも類を見ない急速な少子高齢化が進む日本において、シニア社員が活躍できる環境を整備することは急務である。高年齢者雇用安定法の改正においても、その目的として「少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備」を掲げている。つまり、法改正の目的は、シニア社員の雇用確保自体ではなく、「能力を十分に発揮して活躍できる環境整備」である。企業側から見ても、利益を創出できる「戦力」として雇用することができなければ人件費負担が増える一方であり、必ずどこかで行き詰まる。また、シニア社員自身も「やりがい」をもって働くことができなければ、豊かな社会にはならないだろう。
こうしたシニア社員の活用に、デジタル人材不足の問題が加わり、国内各企業においてもリスキリングへの注目が高まった。リスキリングとは、簡単に言うと「新しい業務に必要な知識やスキルを習得・学び直しする(させる)こと」を意味する。国の政策としては、2022年10月に岸田首相が「リスキリング支援に5年で1兆円を投じる」と表明したことを皮切りに、2023年5月には政府の「三位一体の労働市場改革の指針」においてリスキリングによる能力向上支援が改革の柱の1つとして挙げられた。多くの企業においても、デジタル時代における人材戦略の目玉としてリスキリングが盛り込まれ、シニア社員の新たなキャリア開発が進められている。