日本とベトナムが外交関係を樹立したのは1973年、以来50年にわたって、政治、経済・文化、スポーツと幅広い分野で両国の友好・協力関係は発展し続けている。ベトナムの2022年の実質GDP成長率(推計値)は前年比8.02%と近年最も高い成長率を達成した※1。国民所得も着実に増加する中、とくに中間層の増加で内需拡大が期待され、約1億の人口に占める若年層の割合が大きい特徴もあいまって、市場のさらなる成長が見込まれる。
ベトナムは日系企業の進出も盛んで、進出企業数は東南アジアの中でタイに次ぐ。具体的には2020年時点では約2,000社がベトナムへ進出している。市場成長性と若く安価な労働力を魅力に、生産・製造拠点としての日系企業の進出が先行していたが、米中貿易摩擦やウクライナ戦争等の影響から、チャイナプラス・ワン(中国以外の国・地域への投資分散)が加速しており、日系・非日系を問わず、ベトナムへの工場移転が増えている。
コロナ禍は、ベトナムを生産拠点として位置付けている日系製造業にとってはサプライチェーンが断絶し、ビジネスが止まるほどの大きな打撃をもたらした。政府による工場の操業休止命令、操業再開のための隔離施策への対応、労働者数の確保困難による稼働率の低下なども見られた。加えて、中国からの部品の輸入が滞り、生産が止まるケースもあった。これを受け、現地調達率を上げるべく、現地の優良サプライヤーを探したり、中国以外の国からの調達を検討したりした企業もあったが、その間に経済活動が復調し、オフィスや工場への出勤を基本とする働き方にも戻り、コロナ禍による影響をいったん脱した様相だ。しかしながら、製造業はサプライチェーンの断絶を大きなリスクとして認識したものの、対症療法的アプローチで乗り切ったというのが実状で、将来も見越した持続性のあるレジリエンスの強化に取り組んでいる企業は少ない。
製造業以外では、ベトナム日系企業が注目している成長分野として、金融業、小売業が挙げられる。例えば、SMBCコンシューマーファイナンス株式会社がベトナム民間商業銀行のFE Creditへ出資する※2など、日系金融業によるベトナム金融業への出資が相次いでいる。また、ベトナムでは中産階級の人口増を受けて消費意欲が旺盛で、日系小売業の進出も増えている。