コロナ禍の影響による景気の停滞を受けて、撤退やペースダウンの動きもあるものの、日系の大企業は中国ビジネスを継続している。高まる政治的な緊張、サプライチェーンのチャイナリスクへの対応、調達コストや人件費の上昇などの消極的な要因にもかかわらず、圧倒的な産業集積度の高さに支えられた、巨大な生産拠点かつ販売市場である中国の魅力は衰えていない。欧米企業にとっても同様、日系企業にとっても、中国市場は、それを抜きにしてビジネスは語れない重要な市場であり続ける。
また、変化のスピードが速いことも、中国でのビジネスの特徴としてよく挙げられる。これは政策として経済発展を国がリードし、技術開発と社会実装を同時に推し進め、元来の人口の多さをポテンシャルに生産や消費を急激に押し上げてきた面もある。そして、その発展スピードに合わせるべく、企業でも経営の決断から現場の対応まで、刻々と変わるビジネス環境への適応を第一優先にしている。コロナ禍による景気の停滞と政府の感染対策があいまって、変化の方向性やスピードを推し量るのは今まで以上に困難になり、企業には対応力がかつてないほど求められている。
目下、魅力も保持しつつ、さらなる対応スピードが求められる中国で、日系企業はビジネス戦略の転換というよりも、複数の選択肢の中で「プランB(バックアップ用の計画)」を展開している。それは、中国でビジネスを長年展開してきたノウハウによるところも大きい。周知のとおり、中国には特有の政策、法律、商習慣、文化などがあり、ときにビジネスの方向転換を迫られるほどの影響を及ぼし、日本では想定できない「壁」となることもある。
そのため、日系企業にとって、中国特有の影響事項への理解と対応はビジネス活動の一面を占めるほど比重が大きい。今、日本企業が大企業を中心にビジネスを継続できているのは、市場としての魅力に加え、こうした諸要素を念頭において対応力を磨いてきた結果ともいえるだろう。
とはいえ、上海のロックダウン以降、中国ローカル企業の意思決定が遅れている傾向もあり、今後日系企業にも直接的・間接的に影響する可能性を踏まえると、余談を許さない状況である。