【イベントレポート】CEATEC史上初のプレイベント「CEATEC OPEN INNOVATION DAY」を当社オフィスにて開催

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2024.08.08
  • テクノロジー・トランスフォーメーション
  • 新規事業開発

7/9(火)、CEATEC史上初のプレイベント「CEATEC OPEN INNOVATION DAY」を当社オフィスにて開催した。CEATECは、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が主催する2000年にスタートしたデジタルイノベーションの総合展であり、今回の「CEATEC OPEN INNOVATION DAY」(以下、本イベント)は、10月に開催する「CEATEC 2024」のプレイベントとして位置づけられる。

本イベントは、産・官・学が一体となって、産業界の垣根を超えた共創の場の提供や、次世代のイノベーションを加速させるための新しい市場創出の実現に寄与していくことを目的としている。そのため、イベント当日は、参加者がマッチングを希望すれば、指定の登壇者に情報が共有され、後日連絡が可能となるマッチング機能を導入。また本セミナー終了後には、参加者同士の交流、イノベーション支援についての相談、CEATEC出展の相談などの場を設け、企業や政府、自治体、教育機関、研究機関などをつなぎ、サービス導入や投資、事業提携などのマッチングを促進した。

本イベント概要はこちら

写真:開会挨拶を行うCEATEC エグゼクティブプロデューサー 鹿野 清氏

スタートアップ育成5か年計画の現在地

写真:左から経済産業省 長谷川氏、アビームコンサルティング 橘、ゼロワンブースター 合田氏

第一部では、「大企業とスタートアップとのオープンイノベーションに今後、必要なものとは?」と題して、経済産業省 イノベーション・環境局 イノベーション創出新規事業推進課 スタートアップ推進室 課長補佐 長谷川寛晃氏、アビームコンサルティング株式会社 執行役員 プリンシパル 未来価値創造戦略ユニット長 橘知志、ファシリテーターとして株式会社ゼロワンブースターホールディングス 取締役/株式会社ゼロワンブースター 代表取締役 合田ジョージ氏の3名にて、パネルディスカッションを実施した。

まず、ディスカッションに先立ち、長谷川氏より政府の掲げるスタートアップ育成5か年計画の3年目を迎えた現在において、政府の現状の取り組みと今後の展望について共有がなされた。

スタートアップ育成5か年計画とは、今後5か年間の官民によるスタートアップ集中支援の全体像を取りまとめたもので、スタートアップへの投資額を5年で10倍にすることで、「人材・ネットワークの構築」「資金供給の強化と出口戦略の多様化」「オープンイノベーションの推進」を目指すものだ。この計画の対象は当然ながらスタートアップ企業だが、スタートアップの技術を活用して大企業の新たな事業創出を支援するという狙いもある。

このような支援の背景には、日本企業における事業転換やイノベーションが起きにくい現状があると指摘。米国企業に比べ、企業年齢が古いほどROA(総資産利益率)が低下する傾向があるという。この状況を打破するために、既存企業の稼ぐ力を継続的に向上させる「両利きの経営」、すなわち既存事業の収益性を高める「知の進化」と将来の収益の柱となる新規事業を開拓する「知の探究」とが必要であり、後者の「知の探究」においてこそ、スタートアップが持つ技術やビジネスモデルが有用であると述べた。

実際の経済産業省の取り組みとして、主に①オープンイノベーション促進や研究開発への税制優遇といった財政的負担の軽減、②事業連携の推進事例やモデル契約書の公開、情報収集の場の提供といった手続き負担の緩和、③ディープテックやスタートアップ企業の経営資源の活用の3点を紹介した。さらに事業会社からのカーブアウトの必要性に言及。現在日本企業では民間部門の研究開発投資のうち9割が大企業によって担われているものの、事業化されない場合は、開発された技術の約6割が活用に至らないという。一方このような技術は社会課題の解決、経済成長につながるものも多く、それらをしっかり事業化につなげることで、イノベーションの実現が期待できることから、そのモデルケースの公開や支援を積極的に行っているとのことだ。

そのほか、経済産業省は、事業会社がスタートアップの研究開発成果の調達を通じて新規事業を促進する仕組みづくりにも力を入れている。スタートアップの支援、成長はもちろんであるが、それを通じた新規事業創出のために、スタートアップの技術を戦略的に活用するような連携の在り方を追求しようと検討している。これらは総じて、スタートアップの支援にはじまり、事業会社との連携を通じて、新しい事業、製品、サービスを生み出すというサイクルの創出を狙うものであると述べた。

写真:左から経済産業省 長谷川氏、アビームコンサルティング 橘、ゼロワンブースター 合田氏

事業共創の変遷と現状課題、経済産業省の支援

パネルディスカッションでは、スタートアップ、オープンイノベーション、ディープテックといったキーワードから、それらの変遷や実際の現場で今起こっていることについて共有された。

当社の橘は、大企業とスタートアップの事業共創について、単なるイベント開催や研究開発止まりであった10年ほど前から、海外のスタートアップ企業の調達検討などのトレンドに移行したと振り返った。そして現在は、ベンチャークライアントモデル※1)の導入や、ステージゲート法※2)を用い、かつそれらを複数の事業で実施している企業もみられると述べた。

また、このような変遷の中で、大企業には技術の目利きをする力が乏しく、スタートアップ企業との言葉が合わない、また事業化においてもそのビジネスモデルやスキームの作成に慣れていないといった問題が多く見受けられたという。

経済産業省も同様の課題認識を持っており、事業連携の指針や事例、手引きの整備などをより強化する方針だ。実際に、事業共創を推進する実務担当者にとって、これらはとても有益な情報であり、実際に多くの大手企業で活用されていることが紹介された。

※1) 事業会社がスタートアップ企業の顧客となり、開発した技術を評価、導入検討する手法
※2)事業開発のフェーズを複数に分割し、フェーズ毎に推進と評価を行う手法

日本と親和性の高いディープテックの重要性

ディープテック・スタートアップの支援という話題において、まずディープテックを最大限生かすためには、企業の事業と一体となって活用を模索することがグローバルの標準であり、その点においてオープンイノベーションと関係が深いと合田氏が説明。その上で、合田氏はディープテックの重要性について、長谷川氏に伺った。

経済産業省ではスタートアップの中でもディープテック企業に対し、研究開発含めより手厚い支援を行っている。ディープテックは事業化のハードルが高い一方、成功すれば競争優位性の獲得や経済成長につながる。また、GX(グリーントランスフォーメーション)や経済安全保障などの社会課題を根本的に解決しうるものである。そのほか、製造業が多い日本の産業構造の特性を活かし、世界における日本のプレゼンス向上のためにも、ディープテックは重要であると述べた。

また橘も、本来日本の企業が行う研究開発投資はディープテックに対するものが多く、日本企業とディープテックは親和性が高いと述べ、それにもかかわらず、多くの企業はディープテックのスタートアップとなると異色なものととらえることが多くあると語り、そのマインドを取り除く必要性を説いた。

では、企業のオープンイノベーションとディープテックをどのように絡めていくべきなのか。長谷川氏は、社内外のリソースとスピード感の見極めが重要と述べた。事業課題に対する打ち手は、社内で解決方法を模索するか、他社で持つ解決方法を取り入れるかの二択である。
社内に課題解決のノウハウがない、もしくは人材がいない場合、社外ですでに解決に取り組んでいる企業と組むほうがスピードが速く、ビジネス変化の速い現代においてはこれを担保することが、適切でないだろうかと提案した。

革新的なベンチャー事例と当社の共創イベント

第二部では、JEITAベンチャー賞受賞企業5社とEarly edge賞(特別賞)1社による事業紹介が行われた。

各社の取り組み概要はこちら
「JEITAベンチャー賞」受賞企業5社 特別賞「Early edge賞」1社が決定 | JEITA電子情報技術産業協会

いずれも革新的な取り組みであり、「CEATEC 2024」においてもこのようなスタートアップ企業と大企業のマッチングによるイノベーションの創出が期待される。その手段の一つとして、JEITAでは「CEATEC 2024」において、次世代を担う新進気鋭の企業や教育機関がテクノロジーと研究成果を披露する場である「ネクストジェネレーションパーク」というエリアの開設を今年も企画し、共創イベントとして当社のようなパートナーとともに、価値創出の活動を行う。

当社は、昨年開催された「CEATEC 2023」において、「ウォーキングブレスト」という企画を開催。ビジネスアイデアや協業の可能性を有するスタートアップ企業を探す来場者と出展者をマッチングし共創機会を生み出すことを目的に、当社が来場者とツアー形式でスタートアップや企業のブースを回り、効率的なマッチングを支援するものである。実際に参加した来場者からは「ブースが多く時間的な制約がある中で、有益な情報や協業のイメージができ、大変有難かった」などの声も寄せられ、好評であった。今年の「CEATEC 2024」においても同イベントを開催予定だ(図1)。

図1 「CEATEC 2024 ウォーキングブレスト」概要

「CEATEC 2024」は、10月15日(火)~18日(金)幕張メッセで開催する。
産業界の垣根を超えた共創や新たなイノベーション創出を目指し、ぜひ多くの人に足を運んでいただきたい。

CEATEC 2024の概要はこちら


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