日系組立製造業における調達・サプライチェーンリスク対応の実態調査 ~108社への調査からみえた5つの障壁と突破への道筋~

ホワイトペーパー
2024.08.08
  • サプライチェーンマネジメント

アビームコンサルティングは「日系組立製造業における調達・サプライチェーンリスク対応の実態調査 ~108社への調査からみえた5つの障壁と突破への道筋~」と題したホワイトペーパーを発行しました。

昨今、自然災害や経済変動などサプライチェーンリスクが増大・多様化する中、企業にはサプライチェーンリスクに効果的かつ効率的に対応することが求められています。一方で、投資対効果を把握しづらいことや全社部門横断的に取り組む必要があること、デジタル変革の遅れなどを背景に、各企業でリスク対応を考慮したサプライチェーンマネジメント(SCM)への取り組みが思うように進んでいない現状が見受けられます。

そこで今回、アビームコンサルティングでは、顕在化した課題と具体的な取り組み状況をBCPの観点から把握し、日本の製造業が進むべき方向性を提言することを目的に、「日系組立製造業における調達・サプライチェーンリスク対応の実態調査」(以降、本調査)を実施しました。本調査は、年間売上1,000億円以上の組立製造業企業の調達・SCM部門の経営層、管理職層など82社へのアンケート調査と、日本・欧米の製造業企業26社へのインタビュー調査で構成されています。
本ホワイトペーパーでは、本調査の結果をもとに、調達・サプライチェーンリスク対応の実態や障壁について紐解くとともに、日本の組立製造業が取り組むべき施策・提言をまとめました。

目次

はじめに
エグゼクティブサマリ
本調査の背景
日系組立製造業における調達・サプライチェーンリスク対応の実態調査
リスク対応型SCMの実現を阻む5つの壁
日本の組立製造業が取り組むべき施策・提言
おわりに

■ホワイトペーパーの全文は下記をご覧ください。

エグゼクティブサマリ

調査背景

2019年度から2023年度までの日本(207社)と欧米(260社)の組立製造業における棚卸資産回転率の推移を調査したところ、日本は欧米に比べて回復が遅れ、調達・サプライチェーンにおける計画と実行、その意思決定に課題を抱えている現状が伺えた(図1)。

図1 製造業における日本と欧米の棚卸資産回転率推移比較

取り組み成熟度による差とその壁

本調査では、調達途絶による影響について、営業利益計画の20%以上の損失影響を受けた企業が約2割、また把握さえできない企業も約4割という回答を得た(図2)。

図2 調達途絶危機により発生した損失影響

さらに、当社フレームワークに沿って「戦略」「組織」「業務・プロセス」「データ・システム」の観点で調達・サプライチェーンリスク対応に関する成熟度評価を行い、上位25%とそれ以外のグループに分類し、2019年度~2023年度までの棚卸資産回転率の推移を比較したところ、成熟度の高い上位25%のグループの方が速いスピードで棚卸資産回転率が回復に転じていることが判明した(図3)。

図3 リスク対応型SCMにおける成熟度グループ別棚卸資産回転率推移

我々は、この2グループを分ける成熟度の壁として、「①調達リスク対応・在庫管理の役割と責任」「②業務の属人化」「③調達・SCM人材管理」「④サプライチェーンシステム・データの散在」「⑤平時からの仕組み作りへの投資」という5つの壁があると考えた(図4)。さらに、その壁を打破するために、リスク対応型SCMの実現に向けて取り組むべきことを4つ提唱する。

図4 リスク対応型SCMの実現を阻む5つの壁と実現に向けて取り組むべきこと

日系企業が取り組むべき施策

リスク対応型SCM(Supply Chain Management)の実現に向けて取り組むべきことの4つのうち、下の①②③は経営層と調達・SCM部門が協働して取り組むべき施策である。

  • 役割責任の再配置と業務標準化

    • 調達部門におけるミッション・KPIの再定義
    • 業務標準化がもたらす初動の迅速化
  • 調達・SCMにおける人的資本の強化

    • 調達・SCM部門の人材要件明確化
    • 人材ポートフォリオの構築
  • リスク低減に効くサプライチェーンデータ管理基盤の構築

    • 企業グループ全体でのサプライヤ情報一元管理
    • 統合計画ソリューションの活用
    • 収益への影響可視化などユースケースに応じたデータ管理基盤構築

リスク対応型SCM構築と経営層に向けた提言

本調査を通じ、欧米と日本のリスク対応の考え方の違いから、日系企業は平時からリスク対応への投資が十分になされていないことが実態として分かってきた。現場からも経営層が納得する投資対効果を提示することに苦労し、持ち前の現場力で場当たり的に乗り切ってきたと言っても過言ではない。

将来もさまざまなリスクが発生する可能性がある中、調達部門のミッションとして従来型のコスト削減やコンプライアンス担保だけではなく、リスク対応観点からの評価も行うことが重要である。また、DXで叫ばれている属人化を排した業務標準化、デジタル・データを活用した平時からの徹底した仕組み作りはスピード感をもって取り組むことが必要である。

さらに、サプライチェーンの計画・管理においては、ファイナンス視点も取り入れ、SCMを現場改善の手法ではなく経営手法と捉え、全社横断的に意思決定していくことが重要である。その中で、日本の強みである調達・SCMの現場力である人的資本の在り方を見直し、今後想定を超えるリスクが発生したとしても、迅速な初動により、ビジネス影響を緩和し回復を早めるSCMの仕組みを整備しておくこと、これこそが次世代のリスク対応型SCMなのである。

リスク対応型SCMの構築では、企業のサプライチェーン戦略・プロセス・システム・データ管理・人材管理などの成熟度により、進め方や投資の規模などは企業それぞれで異なる。経営層は、不確実性が高まりリスクが多様化している事業環境の中で、たとえ想定外のインシデントが発生したとしても、無策ではさまざまなステークホルダーへの責任を果たしているとは言えないことを十分理解する必要がある。その上で、初動を早め影響を緩和し早期の復旧を目指すために平時からリスクへの備え・仕組み作りを行うことが求められる。本ホワイトペーパーで取り上げる各施策に対して、必要な投資判断をしていくことが、さらなる経済的価値(事業継続性)、顧客価値、社会価値向上に繋がるものと考える(図5)。

図5 リスク対応型SCM実現による企業価値の向上

■ホワイトペーパーの全文は下記をご覧ください。

  • 山中 義史

    Principal
  • 今村 達也

    Principal

Contact

相談やお問い合わせはこちらへ