横河電機株式会社

SAP Concurでグローバルの経費精算業務プロセスを標準化。先行事例として獲得したノウハウを今後のDX推進に生かす
事例
  • 財務会計/経営管理
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横河電機株式会社

プラント制御システム大手の横河電機株式会社。同社は、アビームをパートナーに、売り上げの7割弱を占める海外関係会社の経費精算業務にSAP Concurを導入した。プロジェクトはペーパーレス化、リモートワーク対応のシステム構築、アプリケーションの統一、業務プロセス標準化、業務集約、コストダウンを目指して展開。会議はすべてオンラインで行い、2022年10月時点で、国内外関係会社のうち60拠点でシステムの稼働を開始した。横河電機では、DX推進プロジェクトの先行事例として、ノウハウを今後の展開に生かしていく考えだ。

横河電機株式会社

経営/事業上の課題

  • 海外関係会社における経費精算業務システムの個別運用の解消
  • 経費精算業務のペーパーレス化、リモートワーク対応の実現

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • SAP Concurのグローバル展開プロジェクトの支援

支援の成果

  • グローバルでの業務プロセス標準化とアプリケーション統一、データ可視化を実現
  • 経費精算業務におけるペーパーレス化、リモートワーク対応を実現

プロジェクトの背景

海外関係会社の経費精算業務プロセス標準化とペーパーレス化を検討

横河電機株式会社(以下、横河電機)は、東京都武蔵野市に本社を置き、プラントやインフラ向けの制御システムやサービスなどの制御事業を主力事業とする1915年に創立された企業である。同社は、「YOKOGAWAは計測と制御と情報により持続可能な社会の実現に貢献する」を企業理念の1つに掲げ、制御事業ではエネルギー&サステナビリティ、マテリアル、ライフの3つの業種別セグメントに分けてソリューションを提供。早くからグローバル展開を進める中で、関係会社は国内11社に対して、海外110社、生産拠点展開国は13カ国、海外売上比率は7割弱に上る。
横河電機では、2018年度から2020年度までの中期経営計画「Transformation 2020」で、既存事業の成長と収益性向上、新事業創出による新たな成長分野の確立、それらを支える事業基盤最適化による生産性向上を柱に据えた。その中でDXによる業務プロセス変革とITインフラ強化を通して、成長基盤の確立を図ってきた。さらに2021年度から2023年度までの中期経営計画「Accelerate Growth 2023」でも、社内オペレーション最適化とマインドセットの変革を取り組むべき4つの基本戦略の1つとして打ち出し、重点施策の1つとして、Internal DX(社内におけるIT/DX活用)を進めている。
取り組みの1つとして計画したのが、海外関係会社で従来個別に運用されてきた経費精算業務の業務プロセス標準化とアプリケーションの統一である。
「全社的なワークスタイル変革で、グローバルを含めどこにいても仕事ができるようにするための取り組みを始めました。そのためにはペーパーレス化が不可欠で、経理部門では海外関係会社の精算業務をペーパーレスにしようと2019年に検討を開始しました」と横河電機 経理財務本部 経理部長 山田 晃嗣氏は語る。

山田 晃嗣氏

長年にわたるパートナーとして、アビームは今回も力を発揮してくれました。これからもリアルパートナーとしての支援を期待しています

横河電機株式会社
経理財務本部
経理部長
山田晃嗣氏

アビームの選定理由

2006年からSAP導入プロジェクトでの熱心で真摯な仕事ぶりを評価

横河電機ではペーパーレス化を進めようと、本社で2017年にSAP Concurを導入し、先行して展開してきた。これによって、証憑のペーパーレスが進み、社員はスマートフォンで証憑を撮影して申請すれば、出社しなくても決裁を受けられる仕組みができていた。そのメリットが非常に大きかったことから、経営陣がSAP Concurのグローバル展開を決めた。
実際に導入計画を立て始めたのは2020年3月、世界的に新型コロナウイルス感染症が急拡大し始めたのと同じ時期だった。感染拡大によって海外の関連会社の社員も在宅勤務になり、これまで紙などで実施していた経費精算業務に対してペーパーレス化やリモート決裁の実現を望む声が本社に寄せられるようになった。「コロナ禍が追い風になった部分もありますが、業務プロセスの最適化は全社レベルでの大きなテーマでした。業務を効率化して生産性向上を図るために、SAP Concurによりグローバルで1つのプラットフォームにして、業務プロセスの統一を進めました」と横河電機 経理財務本部 経理部 経理業務課 課長 池水 純史氏は説明する。
横河電機では、2006年からグローバルで業務の標準化に取り組み、SAP ERPの導入を進めてきた。その結果、売り上げの90%を占める制御事業を中心に、受発注から、エンジニアリング、会計までを同一プラットフォームで運用する環境が作り上げられていた。その経験があり、SAPのプラットフォームが土台として存在していたため、海外関係会社はSAP Concur導入への抵抗感はなく、スムーズに導入を決めることができた。その上で、アビームをパートナーにSAP Concurグローバル展開プロジェクトを進めることにした。
アビームは2006年のSAP導入プロジェクト以来のパートナーである。横河電機では今回のSAP Concurもアビームをパートナーに導入を進めることにした。「アビームには継続的に支援してもらっています。アビームは今までのどのプロジェクトでも、社員と一緒になって最後まで懸命に貢献してくれる。非常に心強く、一番信頼しています」(山田氏)。

プロジェクトの目標・課題と解決策

海外7リージョン56拠点約7300ユーザーへの展開を、オンラインで推進・実現

2020年10月に開始したSAP Concurグローバル展開プロジェクトの目的は、次の3つだ。1つ目がワークスタイル変革・リモートワークに対応したシステム構築で、コロナ禍をきっかけにしたリモート環境、ペーパーレス化のさらなる加速である。2つ目がアプリケーションの統一と業務プロセスの標準化・可視化、3つ目がグローバルでの業務集約とコストダウンだ。標準化することで、経理業務におけるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の推進と、付加価値業務への工数のシフトを図ることにした。
対象業務は、立替経費精算業務、事前申請・承認業務で、共通経営基盤であるSAPと業務・システム面で親和性の高い経費精算のConcur Expense、事前申請のConcur Request、そして経費分析のConcur Business Intelligenceをセットで導入。システム標準機能を最大限活用したテンプレートを構築して、海外関係会社の国の法的要件へのシステム・運用対応を行いながら、7リージョン56拠点約7300ユーザーへの展開を目指した。
複数国への短期間での導入を実現するため、海外関係会社との合意や要件定義などを行うための会議の調整に苦労したという。海外拠点側にもリージョンを集約して要件をとりまとめてもらうプロジェクトマネージャーを置いた。とはいえ、そのプロジェクトマネージャーだけでは把握しきれない部分もあり、経理担当者とIT担当者の参画を得て、全員が参加するオンライン会議を開いた。「経理は四半期ごとに繁忙期があるうえ、複数の拠点と会議を行う必要があり、調整が大変でした。例えば、アジアパシフィックはシンガポールが統括しているのですが、15社、30人近くの関係者に標準化のコンセプトやテンプレートの方針を説明しQAセッションを設けるなど大規模なものになりました」(池水氏)。
さらに各国の込み入った法要件が入ってくると、事前に準備した共通セッション資料やメールのやり取りだけでは相手の意図がくみ取り切れない部分が出てくる。そこで、各地域統括や各社などと個別に追加ヒアリング・検討会議を重ね、これらをすべてオンラインで達成。アビームに国ごとの法要件を確認してもらいながら、取り組みを進めていった。

池水 純史氏

非常にチャレンジングなプロジェクトでしたが、アビームのフルサポートにより完遂できました。とても感謝しています

横河電機株式会社
経理財務本部
経理部
経理業務課
課長
池水純史氏

導入効果と今後の展望

業者支払い経費のグローバル業務標準化とConcur Invoice展開を計画

横河電機とアビームは、SAPのグローバル展開以来の信頼関係があるため、意思疎通も良好で、プロジェクトをスムーズに進めることができた。同じ時期にアビームがSAPを活用した改善施策の推進も行っており、両施策のコンサルタントが連携を取りながら、導入を進めていった。「SAP Concurだけにとどまらない、SAPも含めたアビームの総合力が大きな力を発揮しました。仮にSAP導入をアビーム以外の会社が行っていた場合、システム間の整合を図るため、私たちが間に入って調整しなければなりません。それだと認識の違いなど様々な問題が発生して、進捗が遅れることが考えられます。今回、アビームは恐らく私たちが知らないところでも連携して取り組んでいたので、計画通りにプロジェクトを進められたのだと思います」(山田氏)。
2022年4月に海外関係会社42拠点、10月には海外56拠点を含む国内外関係会社60拠点でSAP Concurによる立替経費精算業務、事前申請・承認業務システムが稼働を開始した。これによって、グローバルでの業務プロセスの標準化とデータの可視化、リモートワーク環境が実現し、将来のコストダウンに向けたプラットフォームを構築することができた。
今回のSAP Concurグローバル展開プロジェクトは、海外関係会社への出張を全く行わず、オンラインで稼働までを完結させることができた。その背景には、SAP導入時の経験から、アビームの海外関係会社に関する知見があり、海外拠点の側もアビームや本社の取り組み方を理解し、双方が早い時期に合意できたことがある。「全く出張せずに、東南アジア7カ国の関係会社300人ほどを対象にしたオンライン説明会を2回ほど開催し、運用に入ることができました。以前であればとても考えられなかったことです」(池水氏)。
横河電機では、本社へのテンプレート展開と業務の再設計を行い、ローカライズされていたSAP Concurをグローバル展開したSAP Concurに置き換え、2022年9月から利用を開始した。加えて、日本だけでなく、グローバルでデータの可視化が可能になったことから、Concur BIを活用して、集約されたデータを基にしたグローバルでの経費分析やKPI設定、モニタリングをスタートさせる。こうして、DX推進事例としてSAP Concurグローバル展開を成功させた横河電機では、経費管理業務全体のグローバル標準化・可視化を目的に、業者支払い経費領域に対しても、グローバル業務標準化とConcur Invoice導入を進めていく計画だ。

Customer Profile

会社名
横河電機株式会社
所在地
東京都武蔵野市中町2-9-32
設立
1920年
事業内容
エネルギー&サステナビリティ、マテリアル、ライフから構成される制御事業、測定器事業及び新事業
資本金
434億105万円(2022年3月末現在)
横河電機株式会社

2022年12月1日

  • 会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

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