Hondaグループ唯一の商社である株式会社ホンダトレーディング。同社は新たなビジネスドメイン拡大に向けて企業改革プロジェクトを発足、アビームと共にグローバル基幹システムの構築・展開を行い、業務プロセスの標準化、ガバナンス強化を行った。基幹システムの構築にとどまらず、このグローバル共通のデジタル経営基盤を最大限活用しながら、HT 2040 Global Vision実現に向けたさらなる改革をアビームと継続して進めている。
Hondaグループ唯一の商社である株式会社ホンダトレーディング。同社は新たなビジネスドメイン拡大に向けて企業改革プロジェクトを発足、アビームと共にグローバル基幹システムの構築・展開を行い、業務プロセスの標準化、ガバナンス強化を行った。基幹システムの構築にとどまらず、このグローバル共通のデジタル経営基盤を最大限活用しながら、HT 2040 Global Vision実現に向けたさらなる改革をアビームと継続して進めている。
経営/事業上の課題
課題解決に向けたアビームの支援概要
支援の成果
株式会社ホンダトレーディング(以下、ホンダトレーディング)は、1972年、本田技研工業(Honda)の100%子会社として設立されたグループ唯一の商社である。同社は、北米、アジア、ヨーロッパ、中東の21カ国・地域58拠点のグローバルネットワークの強みを生かして、軽金属、鉄鋼、樹脂、PGM(白金族金属)などの原材料の調達および供給と、1万点に及ぶ部品の供給、設備・金型の調達から保守メンテナンスまでを行っている。
ホンダトレーディングはHondaが世界各地に建設した工場への原材料や部品の供給で成長してきており、現在、Hondaの新たな挑戦に同期していく形で、さらなる成長を目指す取り組みを始めている。取り組みの代表例のつ1が、廃車になった自動車のリサイクルだ。今までもリサイクルビジネスを行っているが、資源はすべてグループ外に売却していた。Hondaはリサイクル資源をグループ内に戻していくことを方針として定め、実行へと進めていく中で、同社の知見を生かし、Hondaと共同で企画を立て始めている。
ホンダトレーディングでは、2016年から各地域で議論を重ね、2017年に「HT 2040 Global Vision」の前身となる「HT 2030 Global Vision」を策定した。
「当社は従来、親会社のHondaからの仕事を受ける受動的な側面が強い会社でした。しかし、このままでは未来がないと考え、営業力と企画力、競争力で勝ち抜いていける会社にしたいと、目指す方向を定めました。その実現のために、業務プロセスを改革し、30%減の業務効率化に取り組み、リソースを企画力の向上に充てることを打ち出しました」と、株式会社ホンダトレーディング 常務執行役員 鶴東 一成氏は説明する。
ホンダトレーディングでは2017年5月、企業改革プロジェクトを発足させ、職場環境の整備、業務プロセス改革、営業力、企画力の4つで、HT 2030 Global Visionの実現を目指すことにした。職場環境の整備と業務プロセス改革に取り組み、改革の土台の構築を図ることにして、業務プロセスのグローバル統一化、それを実行するデジタル経営基盤としての基幹システムを日本とアジア、中国で同時に導入することを決めた。「そもそも、他の商社がどういったシステムを使っているのか知らなかったので、商社のあるべきオペレーションが分かりませんでした。そこで、基幹システムを構築し、業務を効率化していくための方策を練るには、外部の知見が必要だと考えました」と、鶴東氏は振り返る。
そこで、コンサルティング会社をパートナーに業務プロセス改革に取り組むことを決め、5社ほどから提案を受けた。その中からアビームコンサルティングをパートナーに選び、企業改革プロジェクトに参画してもらうことにした。アビームを選んだ理由は、商社業界・業務に詳しく、システム構築経験が豊富なことと、提案書にあったプロジェクトの推進アプローチが分かりやすく、ホンダトレーディングの業務プロセス改革の道筋を描くことができると判断できたためだった。
ホンダトレーディングでは、アビームの支援の下、あるべき業務フローの定義を開始した。まずは人手による作業において、データ入力が二重にされていることがあり、間違い発生の原因となるオペレーションの効率化を図ることにした。「マネジメントの観点からいうと、データが連続的に運用されておらず、その都度入力するやり方だったので、可能性としてデータの改ざんができてしまう危険性があり、コンプライアンス上課題があるとの危機意識がありました。業務効率化の取り組みとして始めたものの、統制の観点も盛り込むようにしました」と株式会社ホンダトレーディング 専務取締役 石戸谷寿和氏は振り返る。同社はHondaと同レベルの統制が求められるため、システム構築の目的として、効率化とともに統制強化が加わることになった。
ホンダトレーディングは日本・アジア・中国に対し、SAP S/4HANA® Cloudをベースとした商社業務・グローバル要件に対応したABeam Cloudの商社ソリューションを用いてグローバル基幹システム(GATES)を導入することにした。「日本とアジアのオペレーションは少し違います。日本は輸出中心ですが、海外は輸出や国内向けが主体で、スコープは海外の方が広いのです。そのため、日本で構築したテンプレートでそのまま海外に持って行くことができないものがあります。その構築を海外側でやる必要がありました」(石戸谷氏)
導入は、一般的なロールアウトの場合、グローバル共通機能をテンプレートとして構築した後、各拠点に展開しながら、各国要件を取り込んで、1次、2次と展開していく。しかし今回は、事業規模の大きい日本とタイの要件を取り組み、初期構築時のテンプレート要件の充足度を高めて導入、その後にアジア、中国に展開して、各拠点の負荷を軽減、短期間でロールアウトを完了させることにした。「アビームは商社業務に関する知見と経験を持っているコンサルタントが多く、全体をよく理解してくれました。最低限の工数でテンプレートを構築することができましたし、周辺サブシステムのSAPへの接続もうまく進めることができました」(鶴東氏)
アジア地域では、最も大きい現地法人から一番小さい法人まで会社規模が異なり、IT担当が1人しかいない現地法人もある。当初の計画では統括拠点であるタイから経験のある社員を他の拠点に派遣して、ロールアウトをサポートすることにしていたが、コロナ禍で渡航ができなくなった。「行き来ができなくなる中で、どうロールアウトしていくかが大きな課題でした。そこで急きょ、各国のアビームの拠点のコンサルタントに統括拠点のスタッフの代わりになってもらって、展開を進めました。対面のオペレーショントレーニングもできなくなってしまったので、アビームにビデオ教材を作ってもらい、拠点で研修ができるようにもしました」(鶴東氏)
グローバル基幹システム(GATES)導入アプローチ全体像
GATESは、2020年10月に日本とタイが同時稼働、その後、2021年4月にマレーシアと広州、同年10月にベトナム、フィリピン、上海等の6拠点がそれぞれ稼働を開始した。これによって、国内外10拠点での運用が計画通り始まった。
「オンスケジュール、オンバジェットで進めるためには、日本・タイで構築したテンプレートに、各拠点から要求される機能だとしても簡単に手を入れることはせず、業務のやり方を変えてもらうことで対応しました。そこで、アビームから、テンプレートを修正せずに行うことができる業務のやり方をいくつも提案してもらいました。それがロールアウトを計画通り進めることができた大きな要因です。アビームのコンサルタントは拠点の大小を問わず、同じレベルのスキルを持っていたので、ロールアウトを安心して任せることができました」(石戸谷氏)
ホンダトレーディングではGATESの導入で、グローバル標準プロセスに基づく業務プロセスの標準化、ガバナンスの強化を実現させるためのプラットフォームを手に入れることができた。ただ、なお業務効率化と改善の余地があることから2021年10月、一層の改革を進めるべく、業務効率化活動を立ち上げた。時期を同じくして、ホンダトレーディングにおいても、自動車業界における100年に一度の大変革期といわれる環境変化に直面しており、人と社会の豊かな未来の実現のために新価値の創造と提供に挑戦し続けていくという思いを込めた、HT 2040 Global Visionを新たに制定した。企業改革プロジェクトとしても、Visionの実現に向けた2ステップ目として、営業力・企画力を上げるためのリソースを創出する取り組みを開始した。「以前の基幹システムは10年以上利用しており、改修を重ね、社員が使いやすいようになっていました。ところがGATESは業務をシステムに合わせてやらなければいけないので、拒否感が出てしまうこともあります。そこでアビームの支援の下、問題点を明らかにして、業務の効率化を進めています」と株式会社ホンダトレーディング 企業改革プロジェクト 業務改善リーダー 持田宰門氏は語る。
「アビームはこの活動の立ち上げから支援いただいているので、単なるGATESの導入会社ではなく、当社が目指す方向性、強み・課題を理解してくれています。そこに商社実績から来る彼らのノウハウを掛け合わせ、ホンダトレーディングにとってのベストな解決策を一緒に考えていただいているので、とても助かっています」と株式会社ホンダトレーディング 部品事業部 事業部長(兼)企業改革プロジェクト プロジェクトマネージャー 田中啓介氏は語る。
ホンダトレーディングでは、今後、タイで開発したダッシュボード機能のアジア地域への展開など、GATESを起点とした周辺システム・機能や業務プロセスのグローバルでの共通化・効率化や、データドリブン経営に向けた準備を進め、HT 2040 Global Vision実現に向けた広範な改革に取り組んでいく考えだ。
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2022年9月1日
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