プロジェクトでは現状の課題を解決すると同時に、国内外の大手企業で広く利用されているSAPの標準機能を活用することで、導入費用の削減と開発期間の短縮を目指した。パッケージの標準機能を最大限利用し、導入に適した方法論を活用、追加開発を抑制する変更管理の適用で、機能改変及び追加開発を最小化するアプローチを採用したのだ。
導入システムはSAP S/4HANA®とProPlusのマルチプロダクト構成で、周辺システムはそのまま残るため、その連携が最大の課題だった。マルチプロダクトのため、プロジェクト参加企業もJFEスチールとJFEシステムズ、アビームコンサルティング、そしてプロシップと4社構成になり、相互にコミュニケーションをとりながら、円滑に進めていくことが求められた。
「プロジェクトマネージメント体制としてJFEスチール実務部門とIT改革推進部で1名ずつ、JFEシステムズ社PMとアビームコンサルティングPMの計4名で体制構築し、相手の立場を深く理解しつつ、コミュニケーションを円滑に進められた事が大きな成功要因だったと考えています。その中で、アビームコンサルティングのPMは、プロジェクト管理全般に関する知見に裏打ちされたアビームコンサルティングのルールを生かしながら、独自のやり方も加味して、人間的で誠実にプロジェクトを進めてくれました。アビームコンサルティングのメンバーだけでなく、プロジェクトを構成する4社と密にコミュニケーションを図り、プロジェクトを進めてくれたことに感謝しています」(田村氏)
また、導入が進む中で、アビームコンサルティングは導入フェーズに応じて、最適なスタッフを配置した。フェーズ特性に応じて、会計士の資格を持つ社員やSAPを使って経理業務を行っていた経験を持つ社員もプロジェクトに加わった。「グループ会社から業務に関する質問が来ることもあり、私が答えられるものには答えるのですが、繁忙期と重なりなかなか対応しきれません。そうした時に絶妙なタイミングで適切な回答をしてもらえたので、とても助かりました。アビームコンサルティングのスタッフは皆、自分のタスクを強く意識して仕事をしていて、私がやらなければならないことについても、棚卸しも含めてきちんとコントロールしてもらいました。こうした形のサポートがなかったら、プロジェクトは計画通り終わらなかったかもしれません」(中井氏)
さらに、業務部門では一般会計の入力画面も変わるので、短い期間の内にプロジェクトに関わっていない本社経理部門の社員や各製鉄所の経理担当にも変更を伝え、慣れてもらう必要があった。特に17年4月のJFEホールディングス、及び、JFEスチール本体の切り替え前の2月頃からはコミュニケーションを密にして、入力を試してもらいながら、新しいシステムを前提にした業務マニュアルの見直しなどを各部門で行い、切り替えを進めていった。