北海道電力では泊発電所の長期停止に伴い、2度の電気料金値上げを余儀なくされたことに加え、電力小売全面自由化に伴う競争激化の中で、経営効率化・コスト低減が大きな課題となっていた。従来の取り組みに加え、さらに効果が望める手段を模索した同社では、アビームコンサルティングをパートナーとして、外部の視点と手法を取り入れた調達改革に着手。電力安定供給の要となる電力資機材費用の大幅な低減を実現した上で、グループでのさらなる調達の高度化に取り組んでいる。
北海道電力では泊発電所の長期停止に伴い、2度の電気料金値上げを余儀なくされたことに加え、電力小売全面自由化に伴う競争激化の中で、経営効率化・コスト低減が大きな課題となっていた。従来の取り組みに加え、さらに効果が望める手段を模索した同社では、アビームコンサルティングをパートナーとして、外部の視点と手法を取り入れた調達改革に着手。電力安定供給の要となる電力資機材費用の大幅な低減を実現した上で、グループでのさらなる調達の高度化に取り組んでいる。
経営/事業上の課題
課題解決に向けたアビームの支援概要
支援の成果
北海道電力株式会社(以下、ほくでん)は1951年に設立された北海道を営業地域とする電力会社だ。「ともに輝く明日のために。Light up your future」をコーポレート・スローガンに掲げ、総合エネルギー企業として、エネルギー供給の担い手という責任ある役割を全うすることで、地域の持続的な発展を支えていくことを目指している。
2016年の電力小売全面自由化による本格的な競争の開始、2020年の発送電分離による送配電部門の法的分離・別会社化により、電力業界は大きな変革期を迎えている。そうした中でほくでんでは、東日本大震災後の泊発電所の長期停止に伴う2度の電気料金値上げで、顧客への負担増を余儀なくされてきた。こうした背景の中、持続的な競争優位の確保と安定した利益を生み出すことができる体質を構築するために、グループ一丸となって、収入拡大策と経営効率化・コスト低減策を推進している。
「電力会社は設備産業なので、発電所や変電所の機械装置、送電線や電柱など電力資機材の支出は非常に大きなウエイトを占めます。その低減は直接的な利益増につながるため、経営層からの強い指示もありました。発電所関連機材は発電部門が、送配電関連は送配電カンパニーがそれぞれ主管しますが、今回は全社を挙げてのコスト低減であり、資機材の購入契約窓口である資材部が果たす役割が非常に重要となります。加えて、従来の手法ではスピードやコスト低減規模に限りがあるとの判断から、社外の知見や手法を積極的に取り入れ、コスト低減と調達の高度化を図ることにしました」と北海道電力 資材部長 金谷 俊昭氏は語る。
ほくでん資材部は、他の電力会社でコスト低減の実績があるアビームコンサルティングをパートナーに、2014年7月から、まずは消耗品費や通信費といった一般購買品(以下、間接材)のコスト低減の取り組みを開始。間接材はすでに他の電力会社でも成果が上がっており、また比較的容易に着手できる品目だったことから、コストを低減することができた。
その成果が確認できたことから、資材部では2016年4月からより難易度の高い電力資機材のコスト低減に焦点をあて、本格的に調達改革に取り組むことにした。そのためにアビームコンサルティングだけでなく、複数のコンサルタント会社から提案を受けて、コンペを実施し、最終的にアビームコンサルティングを選んだ。
「アビームコンサルティングを選んだ理由は、コンサルティング会社の考え方を一方的に押しつけるのではなく、私たちが納得するまで時間をかけて取り組みを進めてくれると考えたからです。電力の安定供給を最優先してきた伝統がある中で、コスト低減のために第三者が入ってきて強引なコンサルティングをすると、主管部から反発を受け、取り組みそのものが頓挫する可能性があります。アビームコンサルティングであれば、そこに配慮しながら、主管部の理解を徐々に得て、取り組みを進めることができると判断しました」(金谷氏)
調達改革は、2014年7月から2016年6月までの間接材購買コスト低減を第1ステップに、2016年4月からは電力資機材調達効率化を開始し、現在も取り組みを続けている。電力資機材調達効率化では2016年度は潤滑油、PCB処理・運搬などの資機材を中心に競争効果の深耕に取り組み、2017年度からは火力発電所や原子力発電所用の機械装置を中心に、代替性が低く金額も大きい資機材に絞り込んで取り組みを進めている。
さらに、2016年10月から2017年3月まで、火力発電所の石炭灰サイロ新設に関わるコスト低減支援を実施、2016年10月から2017年9月まではグループ会社の調達力強化の取り組みも進めてきた。
ほくでんでは信頼性の高い設備を作り、安定的に電力を供給することを重要視してきた。電力業界で規制緩和が進む以前はその考え方でもよかったが、泊発電所の長期停止によって燃料費が支出に占める割合が増加し、さらに電力小売全面自由化による競争激化も加わり、コスト低減が大きな課題になった。
「電力資機材は支出の中で大きな比率を占めていますから、従来の価格からどれだけ引き下げることができるかが重要です。定量的な効果を出すことが求められますので、効果を経営レベルで検証して、次に進めるかどうかを確認しながら、取り組みを進めてきました」(金谷氏)
ただし、電力資機材のコスト低減は資材部だけでは達成できず、技術部門も含めた主管部の協力がないと進まない。そのため、主管部にも会議に参加してもらい、情報の提供を受けて、一緒になって議論できるような信頼関係を築くことが重要になる。そこでアビームコンサルティングは、専門知見を有するコンサルタントを参加させ、資材部と一緒になって主管部との協力関係を作ろうとした。
「主管部との関係では技術面で納得が必要なので、対等に技術的な話ができるコンサルタントをアサインしてもらいました。それでも発電所向けなどの電力供給において重要な資機材については、最初は懐疑的でしたが、徐々に効果が出るようになって、主管部も私たち資材部の意見に次第に耳を傾けてくれるようになりました」(金谷氏)
資材部では、電力資機材調達効率化の取り組み開始から半年が経過した2016年度下期から、成果を早い時期に刈り取りたいと考え、運営体制を再検討した。資材部60数名の中から、コアメンバーを選出し、彼らを中心に取り組みを進めることにしたのだ。コアメンバーとグループリーダー(課長)による定例会議を行い、グループ横断での議論のもとで、取り組みが一部のメンバーだけで終わることがないように、進捗状況も全体で共有することにした。その結果、取り組みがスピードアップ、効果も迅速に出すことができるようになった。
コスト低減対象も、まず電力供給への影響が少ない分析装置などから開始し、主管部の理解を得るようにした。そのうえで、2017年度は定期更新時期を迎えた発電用ボイラーなど、電力の安定供給に欠かせない発電所用の装置・設備のコスト低減に取り組んだ。「重要な資機材で、仕様が複雑なため特定メーカーからの調達が必要であり、複数の製品を比較することができません。ですから、製造元メーカーが算出した見積りを細かく分析し、価格の妥当性を評価していきました。類似製品の実績や材料の市況と照らし合わせながら、専門知見を有するコンサルタントのノウハウも使い、交渉していきました。具体的に理論立てて交渉していったので、最終的には製造元メーカーの納得も得て、価格を引き下げることができました」(金谷氏)
提出された見積りの評価にあたっては、主管部からも過去の工事記録や実績を提供してもらうことができ、それでコスト構造を分析、細かな交渉が可能になったことが価格引き下げを実現できた最大の要因だった。
ほくでんでは、東日本大震災前の資機材調達コストから1割引き下げることを目標に取り組み、それを達成することができたが、それにはアビームコンサルティングがパートナーとして支援した調達改革が大きく貢献している。
「従来、このサプライヤしかできないと硬直化した考え方に陥っていたことに対して、アビームコンサルティングは別の考え方や全国レベルでは他にもサプライヤが存在していることなどを提案してくれました。アビームコンサルティングの進め方は、サプライヤから広く情報を収集し、価格と共に仕様も評価しながら絞り込んでいくもの。とても柔軟でした。最終的には、従来と同じサプライヤを選定しながらも価格を抑えることができ、主管部からも高い評価を得ました」と北海道電力 資材部 資材企画グループ グループリーダー 高田 雅史氏は振り返る。
また、ほくでんでは従来、グループ会社の経営は各社の自主性に委ねていたが、グループとして総合力を発揮していくために、自主性を重んじつつも、ほくでん本社の関与度合を引き上げている。その中で、今までほとんど本社が関与していなかったグループ会社の調達についても、計画を作って、PDCAサイクルを回して検証していくようにした。その実現のために、本社資材部がアビームコンサルティングと一緒に支援し、共同調達をはじめとするコスト低減策を進めている。2016年10月から2017年9月まで1年間の支援の結果、多くのグループ会社が自力で計画を策定し、PDCAサイクルを回す調達業務を行うようになった。
資材部では今後、アビームコンサルティングからコスト低減や情報収集の手法について伝授を受けながら、社員の意識改革や考え方の転換を行い、自律的にコスト低減を実現し、会社全体の利益の積み上げに貢献できるようにしていく考えだ。
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2018年8月1日
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