株式会社じぶん銀行

一人ひとりの顧客と強い絆を結ぶためのCRM高度化支援。スマホユーザーのニーズに応える「じぶん仕様」プロジェクト
事例
  • 銀行・証券
  • マーケティング/セールス/顧客サービス
株式会社じぶん銀行

“スマホ銀行”として順調に業績を伸ばしてきた株式会社じぶん銀行。
さらなる業績の拡大を目指し、新たなCRM戦略の策定・施策の実施を計画。パートナーには、マーケティングやCRMだけではなく、金融、Fin-Techへの卓越した知見が求められた。
そこで選定されたのが、豊富な経験に裏付けられた提案を行ったアビームコンサルティング。
スマートフォン(以下、スマホ)をメインチャネルに付加価値の高いユーザーエクスペリエンス(UX)をお客様一人ひとりに提供し、One to Oneのマーケティングを実践、顧客獲得を実現した。

経営/事業上の課題

  • 収益顧客が限定的な構造の改善
  • 顧客に対する資源配分の適正化
  • パーソナライゼーションによる顧客との関係構築と強化

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • CRM高度化の構想策定から導入支援(要件定義・業務設計・UAT支援)
  • スマホを利用した顧客経験価値の新たな創造
  • One to Oneマーケティング実現基盤の整備

支援の成果

  • スマートフォンをメインチャネルとしたCRM活動の抜本的強化の実現
  • スマホアプリの全面リニューアルやEBM(Event Based Marketing)機能の導入により、顧客と継続的な関係を構築
  • スマホアプリの利用者数の増加、利用者の利便性・満足度の向上

プロジェクトの背景

業績の拡大を目指し、マーケティングに「顧客軸」を追加

株式会社じぶん銀行(以下、じぶん銀行)は、2008年に三菱東京UFJ銀行とKDDIの共同出資により設立されたネット専業銀行だ。SMARTな「金融サービス」とMOBILEならではの「楽しさ」の提供を通じて、お客様に素敵なSMILEをお届けすることをスローガンに、2011年から「スマホ銀行」を標榜、スマートフォンでの銀行サービス提供に力を入れている。

じぶん銀行の総預金残高と口座数は順調に拡大、現在、4,000万件に及ぶKDDIとauの契約者、1,800万人のauWALLETを顧客基盤に、創業期から成長期へと移行しつつある。その中で、同行がさらなる業績の拡大を実現するためには、従来の商品軸を起点にしたマーケティング活動に、新たに「顧客軸」を追加する必要があると考えていた。

「以前は、例えば外貨預金を増やすキャンペーンを実施する場合、外貨預金利用者全員の手数料を一律で半額にしていました。顧客データを整備しきれていなかったため、One to Oneでのマーケティングには至ってはいませんでした。

ATM利用料の無料回数限度など他のサービスも同様の考え方で実施していましたが、その後データウエアハウスの整備が進んだことなどにより、お客様1人ひとりの活動を把握することができてきました。そこで、均等すぎる経営資源の配分を見直すとともに、顧客軸を起点にしたきめ細かな営業活動、マーケティング活動を行うことにしたのです」と、じぶん銀行 執行役員の井上 大輔氏は話す。

そこでマーケティング活動の強化に取り組むパートナーに選ばれたのが、アビームコンサルティング(以下、アビーム)だった。

吉川 徹氏

社内資料も経営陣向け、担当者の議論用、コールセンターの説明用ではまったく異なります。
アビームは、各用途に合わせた資料を短時間で作成してくれました。
こうしたことの積み重ねにより、非常にスピード感の高いプロジェクト展開が可能になったと思います

株式会社じぶん銀行
執行役員
経営企画・マーケティングユニット担当兼
経営企画ユニット長
吉川徹氏

アビームの選定理由

地に足のついた提案力とCRM戦略や施策の策定の経験とスピード感

じぶん銀行がCRM戦略の策定と展開のためにアビームを選んだのは、マーケティングやCRM全般に対して深い知見を持っていること、じぶん銀行の経営課題に対する十分な理解があること、そして銀行や金融機関のビジネスに対する豊富なコンサルティング経験があることが理由だった。

「他社の提案の中には、少なからず、当行が直面する課題を逸脱したものがありました。その一方でアビームの提案は、どこよりも我々クライアント目線に寄り添うものでした。
しっかりと地に足がついていて、どうしたら業績を拡大させ、利益を上げるところまで持って行けるのか。当行の課題を的確にとらえ、その課題に対して、一足飛びではなく、段階を踏まえて解決するプランをご提案いただきました」と、じぶん銀行 執行役員の吉川 徹氏は振り返る。

プロジェクトに先駆けて、じぶん銀行内では、パーソナライゼーションによる顧客との関係構築・強化によって収益を高めるというCRM戦略の方向性について、合意が得られていた。それに対する喫緊の課題は、プロジェクトを前進させるスタッフ不足という点。

成長フェーズにさしかかったベンチャー企業にあって、新たなCRM施策を立案・実行するための人材、ソリューションが求められていたのだ。
アビームの提案には、描き上げたCRM戦略を具体策に落とし込むことや、豊富な陣容を整えていることなど、課題に対してジャストフィットした内容が盛り込まれていた。

プロジェクトを推進する上での課題

じぶん銀行の行員と同じくスピーディーに施策を立案、実行

2014年4月、じぶん銀行はCRMプロジェクトを開始し、アビームはスマートフォンを中心としたユーザー・エクスペリエンス(UX)の確立、情報系システムの拡張支援のために参画。6月からは顧客優遇制度の検討支援をスタートさせ、7月以降は関連施策を統合して、経営戦略部・マーケティング部における構想策定から要件定義、業務設計などのCRM施策全体の高度化支援業務を始めた。「実際にプロジェクトが始まってみると、コンペで評価したとおりで、私たちの期待に違わない仕事ぶりでした。プロジェクトの節目ごとの報告は当然ですが、例えば経営から投げかけられた問題にも、おうむ返しに単純な解答を返すだけではなくて、行内を走り回って、密度の濃い適切な情報を足で稼いで、実務面でも影響が出ないような解決策を提示してくれました。加えて助かったのは、資料の作成です。通常は、全容の7割から8割程度を説明して初めて期待に沿うものが出てくるケースがほとんどですが、アビームは2割から3割程度説明するだけで、非常に精度の高い資料を提示してくれるのです。タイトなスケジュールの中、目指すべき方向を経営陣に説明、説得するための大きな力になりました」と、井上大輔氏は語る。

ネット専業銀行という特性上、じぶん銀行の事業展開、施策実行スピードは非常に速い。普通の銀行のおよそ3割から5割増しといったところだろうか。当然ながら、本プロジェクトもスピード感を持った実現が欠かせない。「大きな判断が伴う時間を要する場面でも、アビームは先回りしてその枠組みを作り、マイルストーンを明確に提示してくれました。当行の担当スタッフが少ないため、複数案件を同時並行で議論しなければならない時でも、適材適所でその職域やレイヤーに合致した内容で議論をファシリテートしてくれるので、とても心強かったです。当初はコンサルタントと行員という接し方でしたが、次第に当行の行員同士のような関係で率直に議論できるようになっていきました」と、じぶん銀行 マーケティング部長兼Web企画部部長の井上 直樹氏は振り返る。

課題解決のソリューション

CRM高度化構想を策定し、スマホアプリを全面リニューアル

リテールバンキング事業の収支拡大のカギは、運営コストの抑制とサービス・プロダクトの改善、クロスセル・アップセル・顧客誘引の仕掛けによる収益顧客化の3点に集約される。これらを実現するための基本方針として、じぶん銀行は顧客と同行の関係性をひとつの大きなパイプラインに定義付けた。すべての顧客はその流れのいずれかに位置付いており、始点から終点までバランスよく、網羅的な移行を促すことで、顧客全体のボトムアップを図ることにした(図1)。

具体的には、口座開設による顧客獲得(Acquisition)、関係性構築による稼働化(Engagement)、黒字化による採算化(Monetize)、高採算化による収益化(Profitable)と4つの段階に分け、特にEngagementの構築を重視して、金融取引以外の付加価値に優れた顧客体験・サービス(UX)を提供。併せて資源配分を適正化し、取引が深まった顧客にはOne to Oneでアプローチ。インセンティブを提供し、関係を維持することで収益を改善する。

また、全行戦略として収益成長の軸を3点にしぼった。まずは顧客数の拡大、次いで、預金・貸出・決済各分野での商品の強化・拡充、そしてクロスセルやリテンションなどCRMの推進による顧客とのつながり拡大である。スマートフォン経由のアクセスが全体の約8割を占めるため、CRMもスマートフォンからのアクセスを中心に考え、CRMの推進プラットフォームとしてスマホアプリUXの全面リニューアルを計画した。

「CRMではインタラクティブな施策で利便性の認知を図り、顧客の関与度を向上させ、取引に応じたインセンティブの提供による関係性の深化とおもてなし感を醸成しようと考えました。その上で、お客さまとの信頼関係を作った上で、利用状況の変化の分析によって、金利や手数料を変動させた金融商品を提供するEBM(Event Based Marketing)でタイムリーに適切な顧客への提案を行い、収益化を図ることにしました」と吉川 徹氏は語る。メインチャネルとして鍵となるスマホアプリUXについては、先進的で付加価値の高い機能を提供、顧客がお金にまつわる出来事を自分ごととして直感的に捉え、アクションへとつなげるコミュニケーションプラットフォームを構築することにした。

井上 大輔氏

アビームは人材がとても豊富だと感じました。
私たちの意向を先回りして察知してくれ、常に最適な人材が投入されましたし、プロジェクトの節目でスタッフが交替するときにも、遜色ないタレントを投入していただきました

株式会社じぶん銀行執行役員
マーケティングユニット長兼
営業副ユニット長兼
経営戦略部部長
井上大輔氏

図1.収益改善プロセスと留意ポイント

導入効果と今後の展望

2016年6月から17年3月まで3段階に分けてスマホアプリの新機能やサービスを提供

2016年6月には、こうしたサービス改善・利便性を高めていく取り組みを、顧客に対して伝えるため「じぶん仕様プロジェクト」を立ち上げ、特設Webサイトを公開。スマホを軸にしたCRM展開の第1弾として、スマートフォンアプリを全面リニューアルし、タイムライン、サマリー、マイメニュー、3D Touch、Touch IDの提供を開始した。とりわけ、タイムライン機能は国内の銀行で初めての導入であり、口座の入出金明細と顧客の取引に関連付けたキャンペーン情報を時系列で表示、スマートフォンの画面をスワイプさせるだけで、過去の入出金明細を確認できるなど直感的なサービスである。また、サマリーは毎月の円普通預金の収支や残高の推移、円・外貨預金のリアルタイムでの資産状況をグラフなどで見やすく表示、マイメニューは顧客がよく使う機能を優先的に表示する機能だ。

そして、2016年11月には第2弾として、顧客が自分の金融資産の状況をライフステージや平均的な金融資産などの統計情報に基づいて独自の切り口で比較、分析できるサービスを開始。2017年3月には、第3弾として、EBM機能を強化し、顧客の預金残高やWebサイトの利用状況、為替変動などのデータを分析し、金利を上乗せして金融商品を提供するサービスをスタートさせた。「CRMの起点として、『銀行をいかに便利に使ってもらえるか』を目標にして取り組んできましたが、2017年3月で計画通り完了させることができました。3段階にわたるアプリのリニューアルと新サービスの追加を行う中で、アプリの利用は順調に伸びていて、当行が目指した“便利さ”をお客様が実感していることの結果だと考えています」と井上 直樹氏は語る。

井上 直樹氏

私たちのスピードに付いてきてくれたのが、とても心強かったです。少ない担当メンバーで同時並行で複数のテーマを議論しなければならない時でも、それぞれに合った内容で話の流れを整理し、合意形成を図る先導役を果たしてくれました

株式会社じぶん銀行マーケティングユニット
マーケティング部長兼Web企画部部長
井上直樹氏

スマートフォンの徹底活用とCRMのさらなる推進で顧客の拡大と関係性強化を目指す

じぶん銀行は、今後もスマホ銀行として新たなサービスを積極的に実現していく考えだ。具体的には、以下の6領域に力を注ぐ。①スマートフォンの徹底活用、②決済、③UX・利便性・ロボティクスのレベルアップ、④APIを使ったKDDI・auとの外部連携の強化、⑤CRM・ビッグデータ・DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)・AIの一層の活用による顧客とのつながりの高度化、そして、⑥セキュリティー強化である。スマートフォンをメインチャネルに、サービスのラインアップや機能を拡充、質を磨き上げることで、リアルとの結節点とコミュニケーションチャネルとしてのスマホアプリの進化を図っていく。
また、CRMのさらなる推進による顧客との関係性の強化では、徹底したUXの追求、すなわち「使える・利便性」のレベルから、より高度な「Delight(喜び)・楽しさ」や革新性を実現し、ビッグデータの活用によって顧客理解に基づくOne to Oneサービスの展開を進める構えだ。その中で、デジタル・マーケティングの強化と最先端の施策を展開し、顧客接触頻度の増大と継続的な関係性構築の強化、効率性の改善を実現していく。

(写真左から) 株式会社じぶん銀行 井上 大輔氏、吉川 徹氏、井上 直樹氏、アビームコンサルティング 田辺 健太 (写真左から) 株式会社じぶん銀行 井上 大輔氏、吉川 徹氏、井上 直樹氏、アビームコンサルティング 田辺 健太

Customer Profile

会社名
株式会社じぶん銀行
所在地
〒103-0027 東京都中央区日本橋1丁目19番1号 日本橋ダイヤビルディング14階
設立
2008年6月17日
事業内容
銀行業(インターネット専業銀行)
資本金
500億円
株式会社じぶん銀行

2017年7月1日

  • 会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

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