メタルワン(三菱商事・双日系)の子会社であるメタルワン建材と、三井物産系の三井物産スチールの事業統合によって誕生したエムエム建材は、もともとの企業カルチャーや株主の利害関係の違いを乗り越えながら人・組織の融合・融和を推し進め、すべての社員が同じベクトルのもとで継続的なシナジーを発揮していく体制を築き上げてきた。
その背後では、会社設立前から牽引役としてプロジェクトをサポートしたアビームの姿があった。
メタルワン(三菱商事・双日系)の子会社であるメタルワン建材と、三井物産系の三井物産スチールの事業統合によって誕生したエムエム建材は、もともとの企業カルチャーや株主の利害関係の違いを乗り越えながら人・組織の融合・融和を推し進め、すべての社員が同じベクトルのもとで継続的なシナジーを発揮していく体制を築き上げてきた。
その背後では、会社設立前から牽引役としてプロジェクトをサポートしたアビームの姿があった。
経営/事業上の課題
課題解決に向けたアビームの支援概要
支援の成果
鉄鋼建材製品・鉄スクラップの専門商社であるエムエム建材は、メタルワン(三菱商事・双日系)の子会社であるメタルワン建材と、三井物産系の三井物産スチールの国内建設鋼材・製鋼原料事業の統合によって2014年11月に設立された。
当初は「三井物産メタルワン建材」の社名でスタートを切り、統合1周年を迎えた2015年11月1日には現在の「エムエム建材」に社名を変更すると共に、新本社への移転も行っている。
新社名の2つのエム(M)には、「高い志と自由闊達な精神で、『未来』の『マーケット』を切り拓く」「求められる役割と機能を果たすことで、『皆様』の『満足』を実現する」「株主である『三井物産スチール』と『メタルワン』の精神を受け継ぎ、健全な企業活動を展開する」、業界のリーディング・カンパニーを目指す決意が込められている。
統合によって生まれたエムエム建材の連結売上規模は業界の盟主となり、国内建設用鋼材や鉄スクラップのマーケットに対しても主導権を握るかたちとなった。
ただし、エムエム建材がさらなる発展・飛躍を遂げていくには、統合した2社が名実ともに一つの組織として機能していくことが前提となる。
「統合した2社が本当の意味で1つの会社としての体を成し、同じベクトルのもとで継続的なシナジーを発揮していくことが何よりも重要です。とはいえ、世間でよく『組織の三菱、人の三井』とされるように、三井物産スチールとメタルワン建材ではそもそも企業カルチャーが大きく異なります。それを乗り越えながら、どのようにして人・組織の融合・融和を図り、シナジーを発揮し続ける体制を築いていくか──。それが統合後の大きな課題でした。」と、エムエム建材代表取締役会長の安達俊哉氏は語る。
こうした課題を解決する上では、統合2社の経営資源を巧みに結集させ、顧客やメーカーはもとより、従業員やグループ会社など、あらゆるステークホルダーにとって最善の道を見定めていくことが必要とされる。エムエム建材が、そのための重要施策と位置付けていたのが、PMI(Post Merger Integration)の取り組みである。
そのPMIをともに推進するパートナーとして、エムエム建材はアビームを選定した。その選定理由を説明するには、統合契約が締結された2014年6月に時間を引き戻す必要がある。
その当時、アビームは三井物産スチール側のコンサルタントとして今回の統合案件に関わっていた。
「メタルワン建材との統合に当たり、三井物産スチール側では、『統合対象事業を本体から分離する』という前段階のプロセスを完了させておく必要がありました。そのため、親会社の三井物産から推薦されたアビームに支援をお願いすることにしたのです」と、安達氏は振り返る。
その後、三井物産スチールは、メタルワン建材側から「両社共通のコンサルタントとしてアビームに統合実務のプロジェクトマネジメントを依頼してはどうか」との提案を受けた。結果として、アビームが両社事業統合の準備委員会に参画することになったのである。
この経緯について、旧メタルワン建材代表取締役社長で現エムエム建材代表取締役社長の山元康雄氏は次のように説明を加える。
「すでに統合契約を締結した以上、両社の目標は一致しており、よりよい会社を短期間で立ち上げるために躊躇している場合ではありませんでした。メタルワン建材も内部統制プロジェクトなどで、アビームとは深い付き合いがありました。ですから、第三者的な視点を持って両社の間に立ち、統合実務を取り仕切ってくれるコンサルタントとしてアビームはまさに打ってつけの存在だったわけです。期待通り、入念なプラン策定やスケジュール管理の徹底などで、その手腕をいかんなく発揮してくれました」統合プロジェクトにおけるこうした貢献が2社の経営陣から高く評価され、アビームは統合後もそのままサポートを継続、新会社発足後に設立されたPMI委員会の事務局にもメンバーとして加えられたという。
PMIは「100日プラン」と言われるように、“短期勝負”が何よりも重要である。
「鉄は熱いうちに打てという格言がありますが、PMIの取り組みはまさにそれで、我々としても統合完了後の2014年11月から翌2015年3月までの短期間のうちに、新会社としての主要なタスクのすべてに道筋を付ける必要がありました。アビームの支援に大きく期待をかけたのも、この部分だったと言えます」と山元氏は話す。
ただ一方で、「統合後はできるだけ社内で自律的に物事を進めることも大切だと考えました」と、同氏は続ける。
この点について、エムエム建材の取締役常務執行役員で業務本部長を務める新徳真氏は次のような説明を加える。
「企業としての独自の文化や価値観を醸成していくためには、経営陣を含むすべての社員が当事者意識をもって新しい会社作りに取り組むことが大切です。そこで、PMIのフェーズから、アビームにはあえて後方支援に回っていただく体制に改めたのです」
新会社としての真の一体化は、制度やプロセス、ITの統合だけでは成しえない。
そこでPMIフェーズから後方支援に回ったアビームは、チェンジマネジメントを能動的に織り込んだサポートを提供するとともに、常に現場目線に立って社内のベクトルを合わせることに努めた。これに伴い、主に会話する相手も経営陣だけでなく、PMI委員会の事務局のメンバーへと大きく広がっていった。
「事務局メンバーにしてみれば経営陣に直接意見を求めに行くよりも、外部のコンサルタントのほうが気安く話しかけられます。社員たちの非常によい相談相手になってくれました」と新徳氏は評価する。
こうしたエムエム建材とアビームの新しい関係性のもと、新会社におけるさまざまな重要な道筋がつけられていった。
例えば、アビームは常にCI(コーポレート・アイデンティティ)の重要性を説き、新会社の社名・ロゴを変更する際も、「必ずその分野のプロフェッショナルに依頼すること」を提案した。同時に、社名変更を“新ブランドの確立”と社内的な“未来志向”の醸成、さらには新会社に対する社員ロイヤリティ向上を図る好機ととらえ、社内公募を行うことを進言した。
もちろん、こうした施策作りを延々と行っているだけでは、PMIの取り組みは前に進まない。
「アビームは私たちが今すぐ取り組むべきことは何なのかを常に冷静に判断し、意思決定と施策遂行のサイクルをあるべき方向に導いてくれました。どんな状況にあっても新会社にPMIの『100日プラン』を達成させようとサポートする意志の強さと徹底したスケジュール管理の能力はさすがプロフェッショナルだと改めて感心しました」と山元氏は語る。
山元氏は、エムエム建材における経営目標を、「収益拡大」と「コスト競争力の強化」の2つに定めている。
このうちコスト競争力については、今回のPMIを通じて目標をかなり高いレベルで達成できたと山元氏は言う。今後は、収益拡大に向けた戦略により注力していくことになる。2020年の東京オリンピック・パラリンピックや国内のインフラ整備等に向けて、鉄鋼建材製品やその材料となる鉄スクラップといった商材の需要がいよいよ本格拡大の動きを見せている。エムエム建材はこの“追い風”を最大限に受け止めることで収益拡大を図っていく考えだ。
「その中で、PMIの最も重要な取り組みと位置づけているのが、エムエム建材グループとしての販売ネットワークの最適化です。東日本地区の条鋼事業に関する在庫・加工機能を再編し、2017年4月に発足する新会社「エムエム建材販売」に一元化する等、当社の成長戦略を支えるネクストステージのPMIとしてすでに取り組みを始動させています。PMIには引き続き全社を挙げて取り組んで行きます」
と、山元氏は強い意欲を示す。
安達氏も同様の考えであり、とりわけブランド力のアップに力を注ぎたいとする。
「今回の統合とPMIによって、エムエム建材グループは鉄鋼建材でも鉄スクラップでも業界トップのシェアを持つに至りました。ただし、まだ知名度が足りません。鉄鋼業界はもとより世間一般でもその名を知られるような、社会的にも存在感のある会社へと一日でも早く成長させたいと考えています」
エムエム建材では現在、その具体的な目標として、広範な鉄鋼メーカー・加工メーカーと密接に連携しながら、物流機能や金融機能、さらには情報収集力を一層高め、高付加価値の新たな商品・ビジネスを積極的に創造していくとのビジョンを打ち出している。また、顧客にとってのベストパートナーであり続けるために、最適なトータル・ソリューションの提供と流通体制の確立にも力を注ぐという。それをどこまでスピード感を持って実践できるのか――。
「エムエム建材の真価が問われるのはまさに今からで、事業戦略、人・組織、企業統治、企業風土・価値観、そしてIT・業務などあらゆる領域に習熟したサポートが引き続き必要です」と山元氏と安達氏は口をそろえ、アビームとのパートナーシップに引き続き期待感を示している。
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2017年3月1日
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