1887年の創業以来、「音・音楽」を中心とした多様な製品やサービスを提供し、音楽、教育、文化におけるニーズに応え、さまざまな“感動”をサポートしてきたヤマハ株式会社。
グローバル情報分析基盤をインメモリデータベースにマイグレーションすることで、処理の高速化と業務の効率化、将来に向けた柔軟性、保守性の高い情報基盤を構築した。
1887年の創業以来、「音・音楽」を中心とした多様な製品やサービスを提供し、音楽、教育、文化におけるニーズに応え、さまざまな“感動”をサポートしてきたヤマハ株式会社。
グローバル情報分析基盤をインメモリデータベースにマイグレーションすることで、処理の高速化と業務の効率化、将来に向けた柔軟性、保守性の高い情報基盤を構築した。
経営/事業上の課題
課題解決に向けたアビームの支援概要
支援の成果
「音・音楽を原点に培った技術と感性で、新たな感動と豊かな文化を世界の人々とともに創りつづけます」という企業理念に基づき、楽器事業、音響機器事業、電子部品事業をはじめ、ゴルフ用品事業、自動車内装部品事業、FA(Factory Automation)機器事業、リゾート事業などをグローバルに展開しているヤマハ株式会社(以下、ヤマハ)。
創業125年以上の歴史と伝統で培ってきた技術やノウハウ、感性を生かし、初心者からプロフェッショナルまで多様なニーズに応えることができる製品・サービスを提供。アーティストとの協力による研究開発や、世界各国の販売現地法人による地域に根ざした“お客様視点”による製造・販売・サービス活動を推進している。
ヤマハでは「お客様視点」による事業展開を支える情報分析基盤として、「SAP NetWeaver BusinessWarehouse(BW)」を利用した4つの国内BWシステムと1つのグローバルBWシステムを稼働させている。
この5つのBWシステムは、部門最適で導入されてきたために、それぞれにバージョンが異なるほか、同一データの重複保持という課題を抱えていた。
またグローバル情報分析基盤において、「SAP NetWeaver BI Accelerator(BIA)」を採用しパフォーマンスを向上させていたが、BIAのサポート契約が2015年末で終了してしまうことから、グローバル分析基盤のマイグレーションも解決すべき課題となっていた。
このプロジェクトをアビームコンサルティング(以下、アビーム)が提案力を生かして支援している。
BW on HANAへのマイグレーションプロジェクトにアビームが選定されたのは、プロジェクト管理能力や現場を巻き込んだプロジェクトの推進などの実績が評価されたことが最大の理由である。また、BWを含むSAP ERP導入プロジェクトの実績や経験、ノウハウ、方法論や、ヤマハのグローバル拠点にSAP ERPを導入した実績も評価されている。関山氏は、「IS戦略室に配属される前は、技術情報を管理するPDMシステムを担当していました。その当時のプロジェクトで、SAP ERPシステムとの連携面でアビームにサポートしてもらった実績があり、そのときの対応を高く評価していました」と話している。
ヤマハでは、2015年3月よりグローバル分析基盤のマイグレーションプロジェクトをスタート。サポート契約が終了するBIAの次のツールとして、何を採用するかを検討した結果、インメモリデータベース技術を搭載した「SAP Business Warehouse 7.4, powered by SAP HANA(BW on HANA)」を採用することを決定した。
その後2か月の計画フェーズを経て6月よりサーバを調達し、まずはグローバル情報分析基盤に導入されている既存のBW7.0の7.4へのバージョンアップおよびUnicode化を実施した。次にデータベースのHANA マイグレーションを実施し、11月より並行稼働を開始。旧システムと新システムを並行稼働させながら、データを約1カ月間比較して、同じ数字になることが確認できたことから、2016年1月に本番稼働している。
ヤマハビジネスサポート ビジネス開発事業部 ICT業務部 インフラサービスグループ 企画推進担当課長の重野真也氏は、「BW on HANAマイグレーション作業がスタートして、半年後にはグローバル情報分析基盤を本番稼働することが必要でした。そのため、いかに短期間でのマイグレーションできるかが最大のポイントでした」と当時を振り返る。
またBIAをBW on HANAにマイグレーションするにあたり、既存BW7.0のBW7.4へのバージョンアップおよびUnicode化を実施して、その後、BW on HANAにマイグレーションする2段階の移行作業が必要だったことと、データの移行作業が複雑であることの大きく2つの課題もあった。
ヤマハ 情報システム部IS戦略室 企画担当課長の関山順一氏は、次のように語る。
「グローバル情報分析基盤は、各国のソースシステムとデータ連携をしている為、夜間バッチ処理だけでなく、各国のソースシステムのタイミングに応じて日中に随時更新処理が実施されています。ゆえに、既存のシステムと新しいシステムのデータをどのタイミングで比較して一致させるかが重要でした。特に、データ移行のリハーサル作業では想定していない課題も多々発生し、そのため本番作業までの期間で課題を解決するのに苦労しました」
6カ月という短期間でBIAをBW on HANAにマイグレーションするための開発環境として、アビームクラウド基盤を活用することを決定。ヤマハのプライベートクラウドとアビームクラウド基盤をVPNでつなぎ、ヤマハのデータセンターの延長線上に開発環境があるような仕組みを構築。アビームクラウド基盤上でバージョンアップとマイグレーションを実施している。
これにより、開発機器の調達や設定などのリードタイムをなくし、約2カ月の期間短縮を実現した。
またBWのバージョンアップおよびUnicode化に伴う開発・検証作業やデータ移行ツール開発などの作業については、中国のオフショアを利用することで作業の効率化を実現している。
重野氏は、「当初の予定では、開発機器の調達だけで2~3カ月かかってしまうことから、12月の本番稼働に間にあわないという課題がありました。しかしアビームから、アビームクラウド基盤の利用を提案頂き、当初の予定どおり、グローバル情報分析基盤を本番稼働できました」と話している。
BIAをBW on HANAにマイグレーションしたことによるインメモリデータベースの効果として、データ連携の処理速度を約40%向上させたほか、レポート実行の処理速度が約50%向上している。またカラム型データベースの特長であるデータ圧縮技術により、ディスク使用率を約68%削減することを可能にしている。
ヤマハ 情報システム部 IS戦略室 主任の前田茜氏は、
「データ連携速度、レポート実行速度の向上も大切な効果ですが、業務でシステムを活用する業務担当者から“処理が早くなった”と多くの声を頂き、業務効率の向上を体感頂いている事が、BW on HANAへマイグレーションした最大の効果です。今回、アビームのサポートもあり、ユーザインタフェースをまったく変更することなく、処理時間を半減することができたので、業務担当者は操作感に困惑する事なく純粋な速度向上効果を実感しています」と話す。
分析ニーズの変化で、たとえば品目単位でよかった分析が伝票単位になるなど、より詳細なデータが必要になっていた。そのためデータの蓄積方法も変えなければならず、データ量も増加し、データを集計する月次処理が14時間程度かかっていた。この月次処理も、BW on HANAへのマイグレーションで半分程度の時間に短縮され、運用保守作業の効率化も実現した。そして、短縮できた時間を他の機能拡充に割り当てる事も可能となった。
またシステム面での効果を重野氏は、次のように語る。
「BIAは不安定で、インデックスが不整合を起こすなど、システムが止まってしまい、再起動が必要な状況が時々発生していました。SAPに問い合わせても、カーネルのパッチが必要になるなど、大掛かりな作業になるために対応することが困難でした。BW on HANAは、特に大きな問題もなく安定して稼働しているので安心感があります」
さらに経営面での効果を関山氏は、
「以前は、BWからデータを抽出し、Excelで加工して、グラフを作り、それを切り貼りしてレポートを作成し、メールで経営層に送付していました。BW on HANAを導入したこととBIツールを活用することで、経営層を含めた事業部門に対して、より迅速な情報共有が可能になりました」と話している。
今後、ヤマハでは、ローカル領域の4つの情報分析基盤のバージョンアップやインスタンス統合することで、グローバル情報分析基盤および国内情報分析基盤を拡充させる計画。またデータの整理・シンプル化による保守性、利便性の向上や業務担当者によるセルフ分析環境の構築も検討している。これにより、データの精度向上、および現在は見ることができない業績評価指標の可視化を実現するために、必要な情報収集が可能な仕組みの実現を目指している。
システム面での今後の取り組みを重野氏は、次のように語る。
「今後、BW on HANAの最適化はもちろん、SAP S/4 HANAの導入を視野に入れた検討を推進しています。そのための基盤の構築とノウハウの蓄積はできたと思っています。新しい仕組みを導入できる余裕ができたのは大きなメリットです」
また業務面での今後の取り組みを前田氏は、
「今回、BW on HANAがスムーズに本番稼働するように、ユーザインタフェースやアプリケーションを変更することなく基盤だけを変更して効果を上げています。次の取り組みとして、分析に必要なデータを増やしていくことが必要になります。利用者が見たいと思っている情報を、できるだけ早く提供できる環境を構築したいと思っています。このとき、システム開発にパブリッククラウドを活用することで、開発期間の短縮や開発コストの削減なども模索していきたいと思っています」と語る。関山氏は、「利用者が、様々な指標を見るために苦労することなくデータを活用でき、報告書を作成するための労力を低減できる環境を作ることが今後の取り組みです。そのためには、分散しているデータを統合し、足りないデータを補うデータ整備が必要です。BW on HANAの導入で、利用できる機能が増えていますが、これらの機能をどのように使えばより効果が期待できるのか、今後のアビームの提案とサポートに期待しています」と話している。
「当初の予定では、12月の本番稼働に間にあわないという課題がありましたが、アビームクラウドの提案により、当初の予定どおりに本番稼働できました」
ヤマハビジネスサポートビジネス開発事業部
ICT業務部
インフラサービスグループ
企画推進担当課長
重野真也氏
「アビームのサポートもあり、ユーザインタフェースをまったく変更することなく、BWon HANAで処理時間を半減できたので、現場の担当者の負担軽減を実感しています」
ヤマハ株式会社
情報システム部
IS戦略室主任
前田茜氏
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2016年6月1日
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