CDMO(医薬品開発・製造受託)市場は拡大を続ける一方で、日系CDMOの多くは、売上成長に比して利益創出力や資本効率の伸びに課題を抱えつつある。前回のインサイトでは、日系CDMOが持続的に事業成長を遂げるためには、業界構造を踏まえたデータ活用が不可欠であることを示した。本稿では、その問題意識をさらに発展させ、CDMOビジネスの成長プロセスそのものを構造的に捉え直す。事業拡大に伴い、なぜオペレーションは複雑化し、売上成長に対して利益創出力が伸び悩むのか。その背景にあるCDMO特有の事業構造に起因する歪みを明らかにする。
世界的にCDMO市場が拡大する中、日系CDMOは依然として国内市場および低・中分子領域への依存が高く、海外市場や高分子・先端モダリティといった高成長セグメントへの展開が相対的に遅れている。その背景には、GMP(医薬品の製造管理・品質管理を厳格に定める規制)対応や受託製造特有の制約、製造・品質管理の高度化に伴い、CDMO事業が社内で「別世界(事業の別世界化)」として運用されやすい構造課題がある。その結果、本来活用可能な購買力、DX基盤、業務標準化ノウハウといった経営アセットが十分に活かされず、成長とともに複雑性と非効率が蓄積されていく。
本稿では、CDMO事業の成長プロセスで生じるこうした構造課題を整理した上で、生成AIをはじめとするテクノロジーを活用した、低投資・クイックウィン型の改善アプローチを提示する。大規模投資や組織再編に頼らずとも、意思決定基盤を高度化することで、成長と資本効率・生産性向上を両立させることは可能である。CDMO事業における次の競争力の源泉は、まさにこの点にある。