こうした構造課題に対して当社が最も重視しているのは、表層的な構想策定や理念の提示ではなく、現場に深く入り込み、構造課題を実務レベルで分解するアプローチである。
実際の業務がどのように運用されているのか、どのプロセスが人の判断に依存し、どこがシステムによって支えられているのかを、現場の視点で一つずつ明らかにしていくことが不可欠である。しかし、これらはヒアリングだけでは決して見えてこない。
現地メンバーとの業務同席、データ・ログ分析、既存システムの実操作の確認、顧客対応の現場観察など、多角的な方法で現場の実像に触れることで初めて、統制すべき領域と競争力を発揮する領域の切り分けが可能となる。
アビームコンサルティング英国支店では、現在複数の欧州案件を通じて、次のような実践的なプラクティスを段階的に確立している。
- 短期間で現地業務・システム・競争力を把握するアセスメント手法
- 本社・現地が同じ絵を見て議論できる、業務×IT統合マップ
- ERP全面更改を前提としない、段階導入・段階統合型アプローチ
- ERP+Best-of-breedの共存を前提としたハイブリッド構成設計
- 現地ベンダー・現場人材との協働を前提とした運用・定着モデル
これらの取り組みは、日欧間に存在する抽象的な理念対立を、現場レベルの実務へと着地させるための知恵の集合体である。理念や理想論だけでは解決できない現場の課題に対し、実践的かつ段階的に対応することで、プロジェクトの成功確率を高めていく。
日欧プロジェクトの本質的な難しさは、単なる文化や言語の違い起因するものではない。
- 経営スピードの捉え方
- ガバナンスに対する距離感
- 現場裁量と本社統制のバランス感覚
といった、意思決定や業務運営の構造そのものの違いに根ざしている。こうした構造的なギャップが、プロジェクト推進の現場でさまざまな摩擦や停滞を生み出しているのである。
だからこそ必要なのは、「戦略を描く人」と「現場で手を動かす人」を分断するのではなく、その両者を実務レベルで接続し、翻訳し、実装できる存在である。単なる調整役や通訳ではなく、双方の論理や価値観を理解し、現場で実際に機能する仕組みへと落とし込む「実装のハブ」が不可欠である。
ERPは、その構造課題が最も分かりやすく顕在化する象徴にすぎない。アビームコンサルティングは、今後も欧州の現場に深く入り込みながら、日欧間に横たわる「見えない断層」を一つずつ埋め、変革を確実に実装する「実装のハブ」として価値を提供し続けたいと考えている。