生成AIと対話を核に、管理職の役割と意思決定プロセスを再設計し、組織実行力を強化するエンゲージメント変革

キッコーマン株式会社
事例
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  • 経営戦略/経営改革
  • 人材/組織マネジメント
キッコーマン株式会社

エンゲージメントサーベイの導入後、多くの企業が「スコアを上げるための作業」の形骸化に直面している。キッコーマン株式会社においても、管理職主導で現場改善の施策は進めてきたが、本質的な課題へのアプローチが困難であり、管理職の負担が増していた。

アビームコンサルティングは、この課題に対し、管理職の役割を「スコアの分析者」から「現場の本音に基づいて意思決定と合意形成を主導する存在」へと再定義した。さらに、AIと従業員との対話を統合したプログラムを設計し、属人性に依存しない意思決定プロセスの確立を支援した。その結果、「正解のない分析」に閉塞感を抱える状態から、現場の声を踏まえて課題を構造化し、納得度の高いアクションを設計・実行できる状態へと転換した。これにより、エンゲージメント施策は単なる現場改善にとどまらず、組織全体の意思決定の質と実行力を高める経営基盤として機能し始めている。

経営/事業上の課題

  • 分析・意思決定能力の分散による組織知の未活用
    管理職ごとに分析・施策検討を担う一方、手法や視点が体系化されず、組織としての知見が蓄積されていない。
  • 施策の表層化による組織課題への未到達
    施策が面談頻度向上やマナー改善に留まり、構造的課題に踏み込めず、改善の実効性が限定されている。
  • 質的データ不足による意思決定精度の低下
    サーベイは状態把握(What)に留まり、真因(Why)を捉えるための質的データが不足している

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • AIと対話スキルの統合による意思決定力の強化
    AIとの対話と部下の本音を引き出す対話を統合的に習得し、現場の情報を意思決定に接続する能力を強化。
  • 再現性ある思考基盤の構築による判断の標準化
    AI活用基礎とプロンプト設計を体系化し、属人性に依存しない思考プロセスを整備。判断のばらつきを抑えつつ、施策立案の精度と意思決定スピードの向上を実現。
  • 管理職の役割再定義による組織実行力の向上
    管理職の役割を分析中心から、意思決定と合意形成に集中する存在へ転換し、組織実行力の向上につなげた。

支援の成果

  • 意思決定プロセスの再設計によるマネジメント高度化
    「分析はAIに委ね、対話と意思決定に集中する」という役割の明確化により、管理職の活動が作業中心から意思決定・変革創出へとシフトした。
  • 施策設計思想の転換による組織変革力の強化
    従来の活動量に依存した施策から、可視化と双方向性を基盤としたアプローチへと転換し、組織課題に対する打ち手の精度と実効性が向上した。
  • AI活用の定着による組織実行力の底上げ
    AIの活用が管理職層に浸透することで、組織課題の特定から施策実行までのプロセスが高度化し、自律的かつ継続的に改善を推進できる可能性を見出した。

クライアント課題の難所

表層的施策から脱却し、真因に基づく意思決定へ転換する

管理職の多くは「組織を良くしたい」という強い意志を持ち、サーベイ結果に対して真摯に向き合っていた。しかし最大の難所は、数値という「診断結果(What)」を、現場で起きている「真因(Why)」へとつなげるプロセスにあった。適切な分析手法や多角的な視点を持たないまま孤軍奮闘する管理職にとって、膨大な質的データ(部下の生の声)から本質を抽出し、納得感のある施策に落とし込むことは容易ではなかった。

その結果、改善アクションは「会議の頻度を増やす」「挨拶を徹底する」といった、安全ではあるが効果の限定的な施策に留まりやすく、組織として課題を深く捉え、実効性のある打ち手を講じる力が十分に発揮されにくい状態にあった。これは単なる現場の困難にとどまらず、組織全体における意思決定の質の低下や、戦略実行の遅延といった形で、経営インパクトに直結し得る構造的な課題である。

さらに、真因に迫るには部下の「本音」を引き出す必要があるが、心理的安全性や対話スキルの不足により、インタビューが表面的なやり取りに終始しがちであった。その結果、組織課題の解像度が上がらず、意思決定に必要な情報が十分に構造化されないまま施策が検討される状況に陥っていた。

そこでアビームコンサルティングは、生成AIを単なる分析ツールではなく、質的データの整理、論点抽出、仮説形成を支援することで、意思決定に必要な情報を構造化する基盤として位置づけた。これにより、管理職がデータ処理に過度な負荷をかけることなく、本質的な意思決定と現場への働きかけに集中できる環境を整える必要があると判断した。

プロジェクトの重要成功要因

AIと人間の役割を分断せず、「共創」させるための再現性の追求

本プロジェクトの成功は、単なるAIの導入ではなく、管理職が抱えていた「認知負荷」と「心理的障壁」をテクノロジーによって低減し、彼らの介在価値を「対話と意思決定」という高付加価値領域へシフトさせた点にある。その要因は以下の3点に集約される。

(1)認知負荷の解消による「リーダーシップの再定義」
従来のエンゲージメント向上策は、管理職が「分析・特定・策定」の全工程を担う必要があり、その膨大な作業負荷が「思考の停止」と「無難な施策への逃避」を招いていた。
本プロジェクトでは、非定型で複雑な「質的データの構造化」や「仮説生成」をAIの役割として切り出した。これにより、管理職は「データ処理の担い手」から、AIが提示した多角的な論点をもとに部下と向き合う「変革のファシリテーター」へと、その役割を転換。戦略と現場のエンゲージメントを、AIという架け橋で繋ぎ合わせ、管理職の視座を高める「認知の拡張デバイス」として定義したことが、意識変革の源泉となった。

(2)標準化されたプロンプトによる「組織知」の獲得と再現性
AI活用における課題は、出力の質が個人のリテラシーに依存する「属人性」である。これを解消するため、アビームが培ってきた知見をプロンプトとして体系化し、テンプレートとして提供した。
これにより、デジタル習熟度に関わらず、全管理職が一定水準の示唆を得られる環境を整備し、意思決定プロセスのばらつきを抑制。組織としての判断の再現性と精度を同時に高めた。

(3)実行可能性を担保する「運用アーキテクチャ」による組織実行力の強化
優れたアクションプランであっても、追加負荷を伴う設計では現場で定着しない。本プロジェクトでは、施策を単なる「アイデア」に留めず、既存の業務インフラに組み込む「運用アーキテクチャ」の設計を徹底した。
「1on1の回数を増やす」といった行動量に依存するではなく、「低負荷かつ高インパクト」な仕組みとしてプランを定義し、フィードバックループが日常のワークフローの中で自動的に回る仕組みを構築。管理職の負担を最小化しつつ、エンゲージメント向上の実効性と持続可能性を担保し、組織全体の実行力を底上げした。

アビームの貢献

経営戦略と人事施策を直結させる、「AI時代における新たな組織実行力」の実装

エンゲージメント施策が形骸化する背景には、管理職がサーベイ結果を読み解き、真因を見極め、施策に落とし込むまでの負荷が高い一方で、それを支援する仕組みが十分に整備されていないという構造的な課題がある。アビームコンサルティングは、この課題に対し、生成AIを管理職の意思決定の質を高める支援基盤として位置づけ、エンゲージメント向上を「定型施策」から「組織変革」へと転換することを目指した。

本プロジェクトでは、単発の研修にとどまらず、「役割再定義・現場実践・定着」を見据えた一連のプログラムを設計した。具体的には、三つのフェーズで構成される。まず事前ワークショップにおいて、AI活用の基礎と、部下から本音を引き出す対話手法を習得する。次に、管理職がAIを壁打ち相手として活用し、自ら設定した組織課題の仮説をもとに、部下とのグループインタビューを通じて真因を深掘りする。最後に、事後ワークショップにおいてインタビュー結果をAIとともに分析し、具体的なアクションの検討につなげる。

当社の強みは、生成AIの活用知見にとどまらず、経営戦略・人事戦略・現場運用を接続し、行動変容を実装段階まで落とし込む設計力にある。本プロジェクトにおいても、AIを一部の熟練者に限定されたツールとせず、プロンプトやワークシートを標準化を通じ、管理職が再現性をもって活用できる仕組みを構築した。

その結果、管理職は課題整理や施策検討を効率的に進めながら、メンバーとの対話により多くの時間を充てることが可能となり、現場の声を反映した納得度の高いアクションプランの策定につながった。さらに、管理職自身が組織課題を自ら捉え、継続的に改善を推進していく状態が生まれている。こうした取り組みを通じて、データ、テクノロジー、人間理解を掛け合わせ、意思決定の質と組織実行力の向上に結びつける伴走支援を提供している。


これまで当社はエンゲージメントサーベイの結果を組織づくりに活かすことを模索してきました。しかし、管理職にとって結果を適切にアクションプランへ落とし込むことが困難な場面もありました。そこで、今回、アビームコンサルティングの皆さんにご協力いただき、AIを活用したアクション案をもとにメンバーとの議論を促す取り組みを行いました。AIから正解が提示されるわけではありませんが、新たな気付きを得るきっかけとなりました。受講者からは、視点の広がりや改善策の明確化につながったとの声が上がり、エンゲージメント向上の実効性向上に手応えを感じました。今後、多くの管理職に展開するために検討を継続します。

人事戦略部 人的資本グループ
グループ長
西本和令

人事戦略部 人的資本グループ グループ長 西本和令

エンゲージメントサーベイを活用した各組織におけるアクションプラン策定や、その実行に向けた所属長への支援については、さらなる工夫の余地があると考えてきました。そこで今回、サーベイ結果を実効性のある組織改善につなげるため、アビームコンサルティング株式会社様のご協力のもと、AIを活用したアクションプラン策定の取り組みを実施しました。所属長がAIを活用しながらアクションプランのたたき台を作成することで、課題整理や施策検討を効率的に進めるとともに、メンバーとの対話により多くの時間を割くことが可能となり、現場の声を反映した納得度の高いアクションプラン策定につながったと感じております。エンゲージメントサーベイ×AI活用をマネジメント層に更に促進し、活用してもらい、今後も働きがいのある組織づくりを推進していきます。

人事戦略部 人的資本グループ
鎌田沙織

人事戦略部 人的資本グループ 鎌田沙織

Customer Profile

会社名
キッコーマン株式会社
所在地
東京都港区西新橋2-1-1 興和西新橋ビル
設立
1917年
キッコーマン株式会社

2026年4月21日

専門コンサルタント

  • 久保田 勇輝

    Principal 人的資本経営戦略ユニット長
  • 佐藤 一樹

    佐藤 一樹

    Director

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