岩田地崎建設株式会社

エンゲージメントサーベイを起点に、人材戦略策定から施策実装までを一貫して推進し、現場社員の技術力とエンゲージメントを向上
事例
  • 人的資本経営
  • 不動産・建設・住宅
岩田地崎建設株式会社

岩田地崎建設株式会社は、2022年に創業100周年を迎えた北海道最大規模の総合建設会社である。国内外に拠点を展開し、社会インフラ整備を通じて「安心で豊かな社会環境づくり」に貢献してきた。高い技術力と顧客志向の提案力が強みである一方、エンゲージメントサーベイの結果から、働き方やコミュニケーションに関する課題が明らかとなり、組織的な対応が求められていた。
そこで持続的な価値創出の要となる施工管理技術者の技術力を維持・向上させるため、2024年6月からアビームコンサルティングが支援し、全社的な組織変革に取り組んでいる。

経営/事業上の課題

  • 建設現場が遠隔地に分散し、現場実態を経営層や管理者が的確に把握することが難しい状況の改善
  • 人的領域におけるあるべき姿と優先課題の明文化、経営資源の最適な配分
  • 時間外労働規制やコンプライアンス強化などの環境変化に適応した、従来の職場内訓練(OJT)スタイルでの人材育成からの脱却

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • 数百名規模の若手社員アンケートと数十名のインタビューを通じて現場実態を可視化し、経営陣、現場・内勤社員が同じ土俵で議論できる環境を整備
  • MVVを体現する事業戦略上のボトルネックを起点に人的重要課題を整理し、KPIとロードマップを備えた3カ年の人材戦略を策定
  • OJTマニュアル(上司・部下編)と内勤サポートマニュアルを整備し、上司・部下・内勤それぞれの役割や育成における心構え・振る舞いを共有化

支援の成果

  • 経営陣、現場・内勤社員が共通の課題認識を持ち、事実にもとづく意思決定を行うことで、変革を後押しする推進力が醸成された
  • 人的領域における「あるべき姿」を明文化し、集中投資すべき重要課題を特定。3カ年の人材戦略として経営と合意した
  • 明文化された教育の心構えや関わり方を基盤に、会社全体で浸透・実践に向けた取り組みが始まり、PDCAで継続改善する体制が整った

クライアント課題の難所

環境が大きく変わる中で、ミッションを追求し続ける会社組織であり続けるために、現場社員の技術力とエンゲージメントをいかに高めていくのか

岩田地崎建設株式会社は、2022年に創業100周年を迎えた北海道で最大規模を誇る総合建設会社である。道内のみならず、全国各地に広く拠点を有し、海外にも事業を展開している同社は、社会インフラの整備を通じて、ミッションである“安心で豊かな社会環境づくりに貢献する”ことを追求してきた。“安心”には、人々の安心で快適な日常生活を提供するための誠実・堅実なものづくりを、“豊かさ”には、地域の課題解決に果敢に挑み、「三方よし」の精神で関係者全体の価値を高めるという思いが込められている。このような同社のミッションにもとづく高い技術力や提案力が、広く社会から高い信頼を得てきた。

一方、エンゲージメントサーベイから、働き方やコミュニケーションに関する課題が明らかになり、時間外労働規制の厳格化や業容拡大に伴う業務量増加などの環境変化に対し、組織的な対応が不可欠であることが示唆された。持続的な価値創出を支えるのは”人材”であり、とりわけ施工管理技術者が安全・品質・工程・原価を守り抜くことが提供価値の要である。そのため、変化への対応を誤れば、エンゲージメントと技術力が低下し、中核ミッションの遂行に支障が生じうるとの認識が社内で共有された。

そこで、現場の技術力とエンゲージメント向上の両立を実現すべく、戦略策定から実行支援までを一貫して行う実績を有するアビームコンサルティングをパートナーに選定。2024年6月から経営陣や現場社員を巻き込んだ全社的な組織変革に向けての取り組みがスタートした。

ミッション追求のための環境変化に適応した戦略策定の必要性 ミッション追求のための環境変化に適応した戦略策定の必要性

プロジェクトの重要成功要因

人的重要課題を起点とした、現場社員の育成を会社組織で支える仕組み作り

アビームコンサルティングのリードのもと、以下の取り組みを推進・実行した。

【人材戦略で”現場社員の教育の器を広げる仕組み作り”を人的重要課題に定め、経営陣、現場・内勤社員が一体となって進めた育成改革を始動】

エンゲージメントサーベイにより、現場社員の育成機会や成長実感にばらつきがある実態が明らかになった。これを受け、全社的な変革を進めるにあたり、経営陣は自らの変革の必要性を認識し、同社の原点と今後のあるべき姿を確認するため、MVV(ミッション・ビジョン・社訓)について深く議論を重ねた。人材戦略策定では事業戦略との連動性を重視し、限られたリソースの重点配分を検討。その結果、優先すべき人的重要課題の一つとして「現場社員の教育の器を広げる仕組み作り」を特定した。MVVを軸に、外部・内部環境の変化も踏まえて課題を丁寧に分析・議論し、全社が納得感を持って取り組める形としたことが、育成改革の第一歩となった。

【”教える・教わる”を会社組織で支える新たなモデル確立が急務】

時間外労働規制や社員の多様な価値観への対応により、現場の教える側である上司は、従来から行ってきた職場内訓練(OJT)を実施しづらくなり、また教える時間そのものも制約を受けていた。よって、“部下が育ちづらく、上司も育てづらい状況”が深刻化していた。このような状況を鑑みて現場の上司だけでなく、教わる側の部下の心構えや振る舞いを高めることや内勤社員が現場の上司・部下に寄り添ってサポートするという考えのもと、「上司・部下・内勤が共に考え、支え、学び合う」姿を育成のあるべき姿として明確化した。これを体現するために、経営陣、現場・内勤社員の全員で議論を尽くし、職場内訓練(OJT)の心構え・振る舞いを言語化したOJTマニュアル(上司編・部下編)と、内勤社員の支援行動を示した内勤サポートマニュアルを策定した。

【現場で使いながら磨き上げていく、マニュアルを“育てる”という仕組み】

OJTマニュアル、内勤サポートマニュアルは「作って終わり」ではなく、現場で使いながら改善していく“育てる仕組み”として位置づけた。マニュアルは、現場社員と内勤社員が対話を通じて継続的にブラッシュアップしていく前提で運用。言語化された育成のノウハウを軸に改善を重ねることで、属人的な知見を会社組織に蓄積・展開していくことが可能となった。

育成の目指す姿とその実現に向けた中核を担う仕組み 育成の目指す姿とその実現に向けた中核を担う仕組み

アビームの貢献

プロジェクト推進の中で、当事者が“やる気を生む仕掛け”を組み込む

アビームコンサルティングは、エンゲージメントサーベイの実施から人材戦略の策定、そして現場での施策実装までを一貫して支援。本プロジェクトでは、成果につなげるために、単なる設計支援に留まらず“当事者が本当に動くこと”に重点を置き、初期段階から経営陣や現場・内勤社員を巻き込んだ。

具体的には、経営陣とのMVVに関する議論を通じた今後のあるべき姿の明確化や、数百名規模の若手社員アンケートと数十名のインタビューを通じて現場実態を可視化し、経営陣と現場・内勤社員が同じ土俵で議論できる環境を整えた。これによって同じ課題認識を持ち、事実にもとづく意思決定を行うことで、変革を後押しする推進力を生み出した。戦略や施策を担う主体が納得しなければ、どんなに優れた戦略や施策も実行には移らない。だからこそ、戦略策定・施策設計段階で“やる気を生む仕掛け”を意識的に組み込んできた。

人材戦略では「現場社員の教育の器を広げる仕組み作り」という人的重要課題を、トップ、ボトムの視点から具体度を高めて整理。施策においては、OJTマニュアルや内勤サポートマニュアルを策定することで、新たな価値観と運用を具体化し、それぞれの立場が納得して動けるように整えた。本質的な組織変革は、まさに今、始まったばかりだ。アビームコンサルティングは今後も岩田地崎建設のパートナーとして、同社のミッション追求に向けて伴走を続ける。


当社は2007年に2社が合併して誕生しました。しかしそこから業界として冬の時代が続いたなか、当社としての存在意義、目指す方向性、共有すべき価値観が薄れていたと感じ、2022年に創業100周年を迎えた際、ミッション、ビジョンの策定と既存の社訓の再解釈を行いました。
ところがそれも浸透せず、当社としての良さや強みを失いかけ、離職率も高止まりしていたこともあり、本プロジェクトに着手しました。
アビームコンサルティングの皆さんと、改めて当社の経緯、現状の内部的・外部的要因、強みと弱みを整理して課題を抽出し、MVV(ミッション、ビジョン、社訓)の全社的共有、元来の強みであるはずの現場対応力や提案力・ソリューション力の強化と、優先順位をつけて施策に取り組むことができました。

岩田地崎建設株式会社
代表取締役副社長執行役員 経営企画本部長
岩田 幸治氏

岩田地崎建設株式会社 代表取締役副社長執行役員 経営企画本部長 岩田 幸治氏

私は経営企画部の前は人事部に所属しており、施工管理職の採用難や離職者数の増加といった課題を目の当たりにしていました。採用しづらく、辞めやすい時代ではありますが、数ある企業の中から当社を選んで入社した社員には、できる限り長く働いていただけるような環境を整備したいと考えております。その一環として、リテンション強化を目的にエンゲージメントサーベイを実施し、課題を的確に捉え、課題に即した戦略の策定と迅速な施策の実行をしていきたいと考えていました。
今回、アビームコンサルティングの皆さんにご支援いただき、経営層や現場など多くの関係者を巻き込みながら、戦略策定から施策の実装まで一貫して取り組むことができました。MVV浸透プロジェクトも並行していたことから、創業以来の当社の歴史を深く理解していただき、豊富な知見にもとづく的確なアドバイスをいただけたことは非常に心強く感じました。今後は継続していくことが何より重要だと考えていますので、引き続き全社一丸となって取り組んでいきたいと思います。

岩田地崎建設株式会社
経営企画部 経営企画課長
渡邉 亮氏

岩田地崎建設株式会社 経営企画部 経営企画課長 渡邉 亮氏

Customer Profile

会社名
岩田地崎建設株式会社
所在地
札幌市中央区北2条東17丁目2番地
設立
1922年
事業内容
総合建設業
資本金
20億円
岩田地崎建設株式会社

2025年10月24日

専門コンサルタント

  • 佐藤 一樹

    Director

Contact

相談やお問い合わせはこちらへ