学校法人早稲田大学

学校法人早稲田大学

Customer Profile

会社名 学校法人早稲田大学
所在地 東京都新宿区戸塚町1-104
設立 1882年10月21日
事業内容 中・高等教育研究機関



 

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

「SAP S/4 HANA」を基盤とする研究支援・財務システムを導入。中長期計画「Waseda Vision 150」実現に向けた土台を築く

2032年に創立150周年を迎える早稲田大学は、中長期計画「Waseda Vision 150」を策定し、「アジアのリーディングユニバーシティ」であり続けることを目指している。その一環として、アビームコンサルティングをパートナーに、「SAP S/4 HANA」を基盤とする研究支援・財務システムを導入した。研究支援システムと財務システムの連携が実現し、研究課題ごとの適切な残高管理、リアルタイムでの予算執行状況の確認が可能になった。今後は稼働したシステムを基盤に、事業別・部門別収支の把握と管理会計の充実を図っていく考えだ。

プロジェクト概要

導入前の課題

  • 大きく変化する財政構造への対応
  • 研究室ごとに個別最適な研究費管理
  • 各箇所でカスタマイズされたシステム

ABeam Solution

  • 「SAP S/4HANA」とスクラッチ開発を組み合わせた大学改革基盤の構築
  • 大学の研究費管理強化と全体最適を実現するプロセス設計・システム構築力
  • 大規模プロジェクトを成功に導くプロジェクトマネジメント

導入後の効果

  • 研究費管理の一元化による、研究課題ごとの適切な残高管理
  • 研究費のリアルタイムでの予算執行状況確認
  • データの蓄積による管理会計、事業別収支把握のための基盤構築

Story

足立 心一 氏

リアル・パートナーとして、今後とも、早稲田大学のチャレンジに対して私たちが持っていない業務改革やシステム構築の知見によって貢献いただくとともに、早稲田大学の事例を広く社会に役立てて欲しいと思います

 

早稲田大学 
情報企画部
事務部長
足立 心一 氏

Story

プロジェクトの背景

「Waseda Vision 150」実現のために、研究支援・財務システムをパッケージで構築

  早稲田大学は、2032年の創立150周年に向けた中長期計画「Waseda Vision 150」を2012年に策定し、教育・研究の質を飛躍的に向上させ、「アジアのリーディングユニバーシティ」として世界に貢献する大学であり続けることを目指している。同計画では、初めて数値目標「20年後の早稲田大学」を設定、当時4万4000人の学部生を3万5000人に減少させる一方で、大学院生を9400人から1万5000人、社会人学生を3万5000人から8万人に増やすことにした。また受け入れ研究費も96億円から200億円、寄付金も32億円から100億円に拡大させる計画を立てた。

  財務面から見ると、学費収入が全体の7割の割合を占めている状況であるが、研究費の獲得や寄付金の拡大などを中心に据えて収入を増やしていくことが求められる。「この数値目標によって、財務構造が大きく変わっていきます。そうすると、財務システムも従来のような費目をもとにした静的なレポートでは対応することができません。そこで収入とその使い途を事業ごとに分け、計画を立てていく大学経営に使える財務システムが必要だということになったのです」と早稲田大学 情報企画部事務部長 足立 心一 氏は語る。

  今まで、早稲田大学の情報システムは各箇所の担当者の業務を効率化することを目標とし、すべて独自開発で構築されてきた。それに対して、2014年に考え方を根本的に転換、業務のあり方を見直しパッケージをなるべくカスタマイズせずに導入し、業務プロセスを標準化していくことにした。そして、まずは業務システム刷新の核となる研究支援システムと財務システムからスタートさせることにした。「導入にあたって、研究推進部や財務部にも加わってもらい、プロジェクトチームを作って、パッケージを使っている大学を調べました。研究費の受け入れから決算までを管理する研究支援システムと財務システムを構築しようと考えたのですが、どこの大学にも例がありません。いろいろと話を聞く中で、ERPパッケージが企業で管理会計に使われていることが分かりました。そこで、ERPパッケージを基盤に必要な機能を作り込んでいこうという結論になりました」と早稲田大学 情報企画部 マネージャー(情報システム担当) 神馬 豊彦氏は説明する。

 

神馬 豊彦 氏

コンセプトの明確化とその実現にともに取り組む中で、コンサルタント会社のあり方を教えてもらいました。システムが無事稼働できたのもアビームコンサルティングの力によるところが大きいと感謝しています

 

早稲田大学 
情報企画部 
マネージャー(情報システム担当)
神馬 豊彦 氏

Story

アビームコンサルティングの選定理由

SAPとワークフローの組み合わせで費用抑制と使いやすさを両立させた

  大学理事会による導入方針決定を受けて、情報企画部ではERPパッケージと開発を担うパートナーの選定に入った。その中で何社かのベンダーやコンサルティング会社から提案を受けたところ、複数社がSAPを活用した提案だったことから、SAPを中心に費用を抑えながらユーザーが使いやすいような仕組み・工夫を求めた。使いやすさのみを優先しSAPのアドオン開発を増やすと、費用にはね返ってしまう。そこで、SAP本体へのアドオン開発は極力控えた上で大学側の要求が実現可能なことを要件に比較し、最終的にアビームコンサルティングを選んだ。「アビームコンサルティングの提案はパッケージとスクラッチ開発をうまく組み合わせて、SAP本体はアドオン開発をあまり行わず、ワークフローエンジン上でスクラッチ機能を構築するというものでした。SAPそのものに手を入れたり、逆に完全なノンカスタマイズの提案が多い中で、開発費用の抑制と使いやすさを両立させる提案が本学の要望をもっとも満たすものであったので、アビームコンサルティングに決めました」(神馬氏)。

  プロジェクトの目標は研究費の獲得から執行、履歴管理、決算までの一連の流れを管理する研究支援システムとそれとの連携による部門・事業別予実管理と管理会計の実現だ。そのために、SAP S4/HANAを基盤に据え、研究資金情報管理、採択・契約管理、実績管理の研究支援システムと、発注入力、支払請求入力の財務システムをワークフロー上に開発することにした。

  今まで研究費は、研究室単位で個別に手管理されていた。「研究費を管理するシステムもあったのですが、財務システムと連携されておらず、二重に登録しなければなりませんでした。お互いの関連性もはっきりしておらず、本部の主管箇所には情報が上がってきません。そこで、一元管理を実現して、研究資金獲得時の対応から資金の管理まで、きちんと情報を把握しようと考えました」と早稲田大学 研究推進部 研究支援課長 中川 勝之氏は語る。

  「これまでのシステムは文科省の基準に沿った制度会計を基本とした処理であり、消耗品費などの費目で見ることが軸となっていました。そこで事業別に評価できる管理会計が可能なシステムの導入を目標に据えました」と早稲田大学 財務部 財務企画担当課長 大庭 慎二氏は説明する。

図 SAP S/4 HANA を中心とした経営基盤

  • 制度会計( 学校法人会計基準) と管理会計( 事業別・部門別会計) を両立させ、その予実管理を実現するために、基幹システムの中心にSAP S/4HANA を導入しています。
  • 教員・事務職員が利用する研究支援・財務の入力機能は、NEC 社のワークフロー製品である「FlowLites」上で開発し、SAP S/4 HANAとのリアルタイム連携を実現しています。
画像を削除しました。

 

中川 勝之 氏

ユーザー部門の要求に応えたシステムができたのはアビームコンサルティングのスタッフが誠実で、やさしく私たちに対応し、タフに仕事をしてくれたおかげです

 

早稲田大学 
研究推進部 
研究支援課長
中川 勝之 氏

大庭 慎二 氏

アビームコンサルティングが大学の業務を理解し、お互いに譲るところは譲り合って取り組んだことがプロジェクト成功の要因だと思います

 

早稲田大学 
財務部 
財務企画担当課長
大庭 慎二 氏

Story

プロジェクトの目標と推進する上での課題

大学側の想定と離れたシステムを見直して、プロジェクトを建て直す

  パートナーにアビームコンサルティングを決めたのが2015年末で、そこから構築作業を開始したが、1年後の2016年12月、構築が進んだシステムが大学として必要と考えている要件を十分には満たしていないことがわかった。そこで2017年春にかけて、プロジェクトのあり方を見直すための議論を行い、稼働期日を1年延期(2018年春のカットオーバー)し、プロジェクトを建て直した。「私たちはSAPとは何かについてほとんど知識がなく、そのことに対する危機意識も薄いものでした。アビームコンサルティングのコンサルタントと同じ言葉を使って話していて、認識は同じだと思っていましたが、後になって実はずれがあったと感じることがかなりありました」(足立氏)。

  大学側とパートナーのアビームコンサルティングの間でプロジェクトを進めるにあたって、大学のコンサルタントへの過度な期待値とそれへの対応に差があったことが問題の一つにあった。「コンサルタントと仕事をするのは初めてだったこともあって、私たちが1といえば、10も100も理解して期待する以上のものができ上がる、魔法の杖みたいなものだと誤解していました。その上にSAPやワークフローも十分に理解しきれていないことも重なりました」(神馬氏)。

  「ユーザー側も業務には精通しているものの、パッケージを知っている者はほとんどいませんでした。その中でアビームコンサルティングが私たちのリクエストをシステムに再現してくれるので、自分たちは完成品を確認すればよいという考えでいたのです」(中川氏)。

Story

課題の解決策

徹底的な議論でユーザー部門とトップマネジメントを深く巻き込む

  こうした状況を打開するために、プロジェクトでは大学側のスタッフとアビームコンサルティングのコンサルタントが徹底的に議論した。大学の業務は縦割りで仕事の範囲が決まっていて、システムもそれに沿って担当者の目線に近いところで考える傾向がある。その結果、部分最適の傾向が強くなり、全体最適の観点が薄れつつあるという課題が浮き彫りになった。またシステムはできあがって提供されるものではなくて、ユーザー部門も主体性を持ち、コンサルタントとしっかり意見を交わすことで良いものができるという認識も得ることができた。

  そこでユーザー部門も良いシステムを構築するために必要なタスクを再点検し、プロジェクトを計画管理するWBS(Work Breakdown Structure)へタスク・課題を追加し、主体的に解決していく取り組みを始めた。またトップマネジメントの関与が足りないとの判断から、ステアリング・コミッティのあり方を見直し、所管理事を含んだステアリング・コミッティを再組成して、トップマネジメントの意思が現場まで浸透するようにした。

  「アビームからは週1回の定例ミーティングで、定量的にQCDを評価していくというプロジェクトマネジメントのやり方を学びました。ところが2016年末位まではアビームの報告を受けるのみで、大学としてやるべきことが管理できていなかったこともあり問題が発生したのです。それをリプランで反省、両者の協力関係がきちんとでき上がったことで、プロジェクトがうまく進んでいくようになりました」(足立氏)。

  こうして、各業務要件に対する仕様を一つずつ検証して、改修項目を洗い出し、2017年いっぱいをかけて、問題部分を修正していった。

Story

導入効果と今後の展望

データを蓄積、分析することで、事業ごとの収支を評価、管理会計の実現を目指す

  リプラン後の1年間はそれ以前と比べスムーズな関係の中でプロジェクトを進められ、2018年4月に研究支援・財務システムを本稼働させることができた。「従来のシステム開発ではまずは稼働させた上で不具合を修正していくというやり方をとっていたので、カットオーバー時は問い合わせの電話が鳴り続けることもありました。今回はそれがまったくない状態でカットオーバーを迎えることができました」(足立氏)。

  新しい研究支援システムと財務システムが稼働したことで一番大きいのは研究費関連のデータがすべて蓄積できるようになったことだ。これによって、研究課題ごとの適切な残高管理とリアルタイムの予算執行状況確認ができるようになった。そして事業を管理していくための分析が可能になり、それを管理会計で活用して行く基盤ができあがった。「データを一元化して溜めることで、それを応用して、外部資金の獲得に教職員が活用して行けるようにしたいと考えています」(中川氏)。

  今までは予算が先にあり、その予算の範囲内で事業計画をたてるという構造になっていた。それに対して、新システムでは蓄積されたデータから年間の事業別収支内訳を細かく分析することができ、事業計画と予算を合わせた取り組みが可能となる。従来のような前年踏襲型の予算ではなく、実態に合わせた予算編成が可能になり、2019年度からは事業計画一体型予算の実現に向けた取り組みを始められる。それを踏まえて、早稲田大学では事業ごとの収支を評価していくことを通して、新たな分野への資金投入を検討するとともに、データの分析から研究資金の獲得に向けた計画を立てていく考えだ。

PDFダウンロード

お客様事例一覧へ

page top