では、日系企業をはじめ私たちは、こうしたグローバルな動向への対応要請や人的リソースのひっ迫に対応する上で、どのように課題に立ち向かっていくべきか。アビームコンサルティングが独自に実施した「製造DXレポート」※2を参照しながら考えていきたい。
同レポートは、2024年から2回にわたり、売り上げ規模100億円未満から1兆円以上まで、多岐にわたる業種約500社を対象に製造Automation・DX(スマートファクトリー)の取り組みの実態と課題を把握するために実施された。
結果から明らかになった課題は、「デジタル化」と「自動化」である。前者の求めるところは、製造品質の向上といった従前からのテーマや技能伝承のデジタル化であり、後者は人手不足の克服である。
これらの課題解決を妨げる要因は、やはりデジタル化では人材や技術力不足、自動化では多品種少量生産・変種変量生産が大きい。企業規模と自動化度には、逆説的関係があるという興味深い発見もあった。
今回の結果では、売り上げ100億円未満の企業において少品種のために自動化は進む傾向にあるが、100~1,000億円未満の企業では多品種少量化により自動化度が低下。そして1,000億円から1兆円までは再び自動化度が上がっていくという結果が見られ、中堅企業が最も自動化に苦労している実態が浮き彫りになった。また自動化全体の現状は、取り組み意欲は高いものの工程別に進められるケースが多く、なかなか全体的なスマートファクトリー化に到達しない企業が多い状況も明らかだ。
一方のデジタル化の取り組みについても、「技能伝承のデジタル化が困難」という深刻な課題が判明した。この背景には、就職氷河期世代の不足により技能伝承が円滑に行われていないという構造的な問題がある。だがそれ以上に、五感活用部分、いわば「職人技」の解析は非常に困難であり、伝承できるのは結果的に形式知化できる部分に限られてしまうことが挙げられる。
これを克服できない理由はさまざまだが、明らかなのはデジタル化を推進できる人材の不足である。単にデジタル化を進めるだけでなく、生産技術を理解しセンシングもできるスペシャリストや、先進技術に詳しくどのようなデータを取るべきか判断できる人材が足りないということになるだろう。こうした複合的な人材・技術力不足がデジタル化の進展を妨げているのだ。
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