人材育成や期待する人材を獲得できてもそれらの人材が価値を発揮できるよう、組織全体がデジタルファースト組織に変革しなければ、一過性のものとなってしまう。過去の支援事例等では、現状を変えたがらない抵抗勢力からの納得が得られず、思ったように変革が進まないケースも散見される。このような障壁を克服するためには組織文化の変革も併せて推し進めるべきである。組織が備えるべき文化を明示するとともに、銀行トップがその文化の模範となる言動・行動を示すことで文化をトップダウンかつスピーディに変えていくこと、また、組織の目標設定や従業員の評価にも目指す組織文化を反映することで、組織全体に確実に新しい文化を浸透させることが重要と考えている。
<デジタルファースト組織が備えるべき主な文化>
- 革新的・顧客中心のサービス創出への挑戦
- 強固なデータガバナンス・データ品質管理
- 全従業員の自律的な学習
- 市場の変化や顧客ニーズへの迅速な対応
なお、組織に文化を浸透させるには、各国固有の文化を考慮することも忘れてはならない。例えば、SEAの中でも特に銀行業界が主要産業となっているシンガポールにおいては、一般的な傾向として綿密な計画を立てるよりも、規則は最小限として新しいことに取り組む文化が根付いている。この文化背景もあってか、シンガポールのDBS銀行は世界で最も優れたデジタル銀行に選出されるほど、銀行業界において新しい取り組みが盛んにおこなわれている※2。