米国BHC法対応業務を支える新システムをOutSystemsで構築し、ユーザー部署の自走体制づくりを支援

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ
事例
  • 銀行・証券
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の融資企画部BHC法対応企画室(以下、ユーザー部署)は、数万社に及ぶ出資先情報を統合管理し、米国BHC法関連規制への適合性確認や米連邦準備制度理事会(FRB)向け年次報告を支える業務基盤の高度化に取り組んだ。アビームコンサルティングは、業務を熟知するパートナーとして、2024年4月から本プロジェクトの支援を開始。ローコード開発プラットフォーム「OutSystems」と独自フレームワーク「ABeam OSF」(OutSystems Framework)を活用し、短期間でのプロトタイプ開発と実装反復を支援。登録・計算・出力を一体化したBHC法対応業務の新システムを約1年で構築。システムリリース後も、1年間の伴走支援を行い、ユーザー部署による継続的な改善・内製化の推進に貢献した。

経営/事業上の課題

  • 数万社に及ぶ出資先情報を、十数名の体制で最新の状態に統合管理する必要性
  • 手作業や目視確認を伴う運用から、堅牢で再現性・信頼性の高い業務基盤への移行
  • 制度変更や業務要件の変化に迅速に対応できる、ユーザー部署主導の継続改善体制の構築

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • OutSystemsと独自のフレームワークを活用し、WebアプリとRDB(リレーショナルデータベース)による堅牢な新システムを構築
  • 業務に精通したユーザー部署の知見を取り込みながら進めるEnterprise Agile(大規模組織向けアジャイル開発)により、約1年で本番稼働を実現
  • ユーザー部署との共同開発と、システム稼働後の伴走支援を通じ、段階的な技術移管による自走体制構築

支援の成果

  • OutSystemsとABeam OSFの活用により、新システムの開発期間を50%短縮
  • MUFGグループによる出資先の保有議決権比率の計算時間を、従前の数時間から10分程度に短縮(90%削減)
  • 業務効率化は最大30%、ユーザー部門のスキル向上と内製化を継続的に推進

クライアント課題の難所

高度な業務要件への対応と、ユーザー部署による自走を両立するプラットフォームの導入

ユーザー部署は、多数の出資先の情報を集約し、投資所管部署への米国BHC法関連規則に関する各種助言、米連邦準備制度理事会(FRB)宛の年次報告書作成、ボルカー・ルール遵守にかかる宣誓書対応などを担っている。法令遵守の観点から、高度な正確性と安定した業務継続性が求められる業務である。これを支えてきた既存の業務基盤は、当時の業務要件に応じて迅速に整備され、業務運営を支える基盤として活用されてきた。その後、業務の拡大や運用の高度化に伴い、自動化による手作業の削減を一体的に進めるとともに、システムの安定性向上、処理の可視化、将来の業務変更にも柔軟に対応できる業務基盤へ発展させることが求められる段階にあった。

本プロジェクトにおける最大の論点は、「自走(内製化)」と「機能の高度化」の両立であった。MUFG社内で一般的に利用可能なノーコード・ローコードツールは、ユーザー部署も開発に着手しやすいという利点があるものの、規制対応業務に求められる高度かつ複雑な要件を実装するには一定の制約もある。一方、フルスクラッチのプロ開発は、高度な要件に対応しやすいものの、コーディングの知見を持たないユーザー部署が保守・メンテナンスを担うことが難しくなる。「高度な機能をローコードで実現し、かつユーザー部署が自ら維持管理できる」という要件を同時に満たすプラットフォームとアプローチが求められた。

アビームコンサルティングは、現行EUCツールの開発・保守および基礎検討フェーズを継続的に支援してきた実績を持ち、業務・システム・データの流れを熟知するパートナーとして、高度な業務要件への対応と、ユーザー部署による自走を両立するプラットフォームの導入に貢献した。

プロジェクトの重要成功要因

業務に精通したユーザー部署の知見を取り込みながら進めるEnterprise Agileと自走体制構築への伴走

本プロジェクトの成功を支えた最大の要因は、内製化のための技術移管を意識した開発ステップと、ユーザー部署のニーズを取り込みながら進めるアジャイル型のプロジェクト運営にある。

アビームコンサルティングは、既存の支援知見を活かして、論点を事前に整理し、ユーザー部署と優先順位を確認しながら開発を進めた。一方で、仕様レベルの論点調整については、実際に動く画面(プロトタイプ)をデモ形式で確認するセッションを繰り返すこと、および、OutSystemsの開発環境をユーザー部署に直接提供し、自分のペースでシステムに触れ、習熟度を高められるよう配慮することで、仕様書ベースのレビューで生じがちな認識齟齬を回避した。

開発アプローチとしては、Enterprise Agileによる段階的な手法を採用した。メインシナリオから派生シナリオへと段階的にロットを組み、開発・テスト・ユーザー確認を繰り返す形で進められた。課題管理には、クラウド型プロジェクト管理ツールを活用し、進捗状況をオンラインで可視化・共有しながら、週次の進捗会議と隔週のオーナー報告会を軸にプロジェクトを管理した。

開発後半には、システム稼働後を見据えた技術移管を意識し、アビームコンサルティングが先行して開発した部分を活用しつつ、比較的シンプルな画面・機能の開発にユーザー部署が関与し、アビームコンサルティングのサポートのもとで実際に手を動かした。ユーザー部署も実際の開発に関わり、アビームコンサルティングとともに各工程の検討内容や成果物を確認・レビューする中で、システム開発への理解を深め、必要な知識と経験を段階的に蓄積した。こうした実務を通じた取り組みを、アビームコンサルティングが技術・品質の両面から伴走して支援したことが、自走に向けた人材育成と継続的改善の基盤形成につながっている。

アビームの貢献

業務理解と独自フレームワークで実現した高速開発と内製化支援

本プロジェクトにおけるアビームコンサルティングの貢献は、OutSystemsと独自フレームワークを活用した開発生産性の向上、ユーザー部署の業務への深い理解に基づく円滑なプロジェクト推進、そして自走を見据えた技術・人材面での伴走支援の三点に集約される。

アビーム独自のABeam OSF(OutSystems Framework)は、汎用性の高いスケルトンアプリや設計書テンプレートなどを備え、プロジェクト開始直後から段階的な実装反復を進められるEnterprise Agile開発を可能とした。ローコードツールとして認知されているOutSystemsを開発プラットフォームとし、共通部品やテンプレートの活用によって開発作業を効率化するとともに、標準化・均質化を推進した。また、アビームコンサルティングによる伴走支援のもと、ユーザー部署が一部機能の開発を担える体制を構築できるよう支援した。これにより、ビジネスロジックを反映した画面・機能を約10か月の開発・テスト期間で構築した。

こうして誕生した新システムは、2025年3月にリリースされ、安定した業務継続性、生産性の向上、セキュリティ・データガバナンスの強化に寄与している。稼働後も、ユーザー部署が実際の開発に関わり、アビームコンサルティングとともに各工程の検討内容や成果物を確認・レビューする中で、システム開発への理解を深めてきた。アビームコンサルティングは、技術・品質の両面から継続的に伴走し、システムの保守・メンテナンスに必要なスキルを特定・評価できるスキルマップの作成も支援した。こうした取り組みは、自走に向けた人材育成と継続的改善の基盤形成につながっている。変化する金融規制や業務ニーズに機動的に対応できる力を育てることは、コスト面に加え、規制対応の高度化や業務品質の向上という点でも重要な価値を持つ。

アビームコンサルティングは、本プロジェクトで得られた知見を踏まえ、融資企画部BHC法対応企画室における今後の業務高度化に向けた検討を支援するとともに、同様の課題を抱える他部署についても、OutSystemsを活用した業務改善の適用可能性を提案していく。


本プロジェクトは、米金融規制対応という、MUFGグループのグローバルな規制遵守を支える重要業務について、従来の運用を単にシステム化するのではなく、将来にわたり安定的に運営できる業務基盤へ再設計する取組みでした。新たな基盤導入により、データ取込、計算、帳票出力までのプロセスを標準化・可視化し、業務品質と継続性を高めることができました。アビームコンサルティングには、当室の業務特性や規制対応上の要請を的確に理解いただき、実務に即した形で構想策定から移行まで支援いただきました。規制対応の高度化を支える持続可能な基盤を構築できたことを高く評価しています。

融資企画部 BHC法対応企画室
次長
山本 晃祥 氏

今回の刷新では、金融規制の要件を満たす品質・機能と、ユーザー部署が自らのニーズを捉え改修できる柔軟性を両立することが重要なテーマでした。OutSystemsとABeam OSFを活用し、Enterprise Agileの考え方で段階的に開発・確認を進めたことで、当社のニーズを捉えながら、期限内にリリースができました。特に、動く画面を用いたデモや反復的なレビューは、仕様書だけでは捉えにくい業務要件の認識合わせに有効でした。アビームコンサルティングの業務・技術双方の知見により、堅牢性、セキュリティ、保守性を備えた実用的なプラットフォームを実現できたと考えています。

融資企画部 BHC法対応企画室
調査役
森川 克真 氏

システムは、リリースして終わりではありません。規制や環境の変化に対応しながら、安定して業務を継続できる体制を構築することが重要です。そのため、アビームコンサルティングによるスキルマップを活用した育成支援やペアプログラミングを通じて、私たち自身が保守・運用を担える力を培ってきました。リリースから約1年を経た現在は、データ品質を継続的に高め、適切な統制のもとでデータを管理できる自走体制が整いつつあります。単なる内製化にとどまらず、変化に対応しながら、業務とデータの信頼性を維持・向上できる業務基盤へと進化していると感じています。

融資企画部 BHC法対応企画室
調査役
田中 玲香 氏

左:株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 融資企画部 BHC法対応企画室 調査役 森川 克真 氏
右:株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 融資企画部 BHC法対応企画室 次長 山本 晃祥 氏

Customer Profile

会社名
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ
所在地
東京都千代田区丸の内一丁目4番5号
設立
2001年4月2日
事業内容
傘下子会社およびグループの経営管理、ならびにそれに付帯する業務
資本金
2兆1,415億円(2026年3月31日現在)
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ

2026年9月15日

専門コンサルタント

  • 小川 浩司

    Principal

Contact

相談やお問い合わせはこちらへ