世界的な電子部品メーカーとして、グローバルで事業を展開するTDK。TDKは、2021年度から中期経営計画「Value Creation 2023」でDXを推進している。その一環として、経営監査グループでは監査の変革を目指し、ビジネスシステムグループと10年以上の協働実績が豊富なアビームコンサルティングとともに、監査DXプロジェクトを開始した。本プロジェクトを契機に、TDKでは人手に頼る従来の監査からデジタルテクノロジーを活用した次世代監査を実現しようとしている。
世界的な電子部品メーカーとして、グローバルで事業を展開するTDK。TDKは、2021年度から中期経営計画「Value Creation 2023」でDXを推進している。その一環として、経営監査グループでは監査の変革を目指し、ビジネスシステムグループと10年以上の協働実績が豊富なアビームコンサルティングとともに、監査DXプロジェクトを開始した。本プロジェクトを契機に、TDKでは人手に頼る従来の監査からデジタルテクノロジーを活用した次世代監査を実現しようとしている。
経営/事業上の課題
課題解決に向けたアビームの支援概要
支援の成果
TDK株式会社(以下、TDK)は、1935年設立の磁性技術で世界をリードする受動部品、センサ応用製品、磁気応用製品、エナジー応用製品などの製造を手がける電子部品メーカーである。
TDKは社是「創造によって文化、産業に貢献する」と社訓「夢 勇気 信頼」のもと、2024年度に10年後のありたい姿として、長期ビジョン「TDK Transformation」を策定した。これには社会のTransformationへの貢献とTDK自身が変革し続けていくという意味があり、この2つを推進することで、サステナブルな未来の実現に貢献していく。
TDKでは、2021年度から2024年度までの中期経営計画「Value Creation 2023」で、DX(デジタルトランスフォーメーション)とEX(エネルギートランスフォーメーション)を加速させてきた。DX推進における取り組みの1つが監査のトランスフォーメーションである。監査は長年、経営監査グループの社員が各拠点に出張し、拠点の担当者に依頼して紙のファイルを用意してもらい、人の手で確認してきた。1~2週間はかかるため、被監査部門の負担が重いだけでなく、監査の頻度も年1回から3年に1回程度にとどまっていた。「被監査部門にとって、監査はポジティブなものでなく、忌憚されているイメージが強いのが実情でした。それを根本から変えて、被監査部門にありがたいと感じてもらえる、喜んでもらえる監査にしていきたいと考えました。そこで監査のトランスフォーメーションを目指すことにしたのです」とTDK 経営監査グループ G.M. 西澤 裕氏は語る。
次世代監査をグローバルに展開する際には、アビームの海外拠点とネットワークによる支援をぜひともお願いしたいと思います
TDK株式会社
経営監査グループ
G.M.
西澤 裕氏
TDKでは、2011年からアビームをパートナーに、グローバルでSAPの導入に取り組み、アビームは2016年からSAPの運用、保守も担当している。さらに、TDKではデータから導き出した知見による価値創造の充実を目指して、経営システム本部ビジネスシステムグループ内にCoE(センターオブエクセレンス)を設置し、業務部門も含めたDX推進に取り組んできた。
ビジネスシステムグループではアビームからプロセスマイニングツールの紹介を受け、SAPに蓄積された大量のデータの分析による業務変革に向けたPoC(概念実証)を行った。「プロセスマイニングでデータの掘り起こしができ、いろいろな部署で使えそうだということが分かりました。ただどこの部署も使い方がよく分からず、躊躇していたのですが、経営監査グループから監査のトランスフォーメーションに使えるのではないかという声が上がってきたのです」とTDK 経営システム本部 ビジネスシステムグループ ビジネスアプリケーション1部 部長 藤本 直哉氏は説明する。
そこで、ビジネスシステムグループと経営監査グループは監査DXプロジェクトを発足させ、最新のデジタルテクノロジーを活用した業務改革の知見や実績が豊富なアビームをパートナーとして、プロジェクトを始動した。
アビームが提供してくれる情報が良い刺激になっている。今後も他社事例を含め当社に役立つ情報を期待しています
TDK株式会社
経営システム本部
ビジネスシステムグループ
ビジネスアプリケーション1部
部長
藤本 直哉氏
2022年5月、監査DXプロジェクトがスタートした。現地出張、紙ファイル、手作業、目視判断で、1年もしくは複数年単位で実施する従来の監査から、先進的なデジタルテクノロジーを活用した次世代監査の実現をプロジェクトの目標に据えた。「次世代監査で目指したのは、どこでも監査業務ができるロケーションフリーと、ランダムサンプリングではなく全件テストができることです。人の目に頼らず、自動もしくは半自動で判定することによって、短周期での監査やリアルタイムでの監査を実現し、監査品質改善と現場の業務改善につなげることを目指しました」(西澤氏)。
プロジェクトは、経営監査グループとビジネスシステムグループの2グループと、アビームが協働する形で進めた。もっとも意識したのは、社内とはいえ、お互いの業務は分からない部分があったため、業務、アプリケーション、IT管理といったそれぞれの組織の専門領域を決めた上で、緊張感を持ちながら進めていくことだった。「プロジェクトではコンサルティングファームとクライアントという関係を超えて、1つのチームとしてお互いを尊重しながら、遠慮なく意見を出し合うことができました。アビームがチームに溶け込み、社内の2つの部署と同じように関わってくれたことが短いサイクルで成果を出すことができた最大の要因です」(西澤氏)。
また、進め方は2カ月程度のスモールプロジェクトを繰り返す方針を取った。長いスパンでは途中で到達点が分かりづらくなることと、本当に成果を出せるかどうか不透明なところから始めているので、短期間で成果を確認して、成功体験とメンバーの自信につなげることを目指した。
「2カ月単位でプロジェクトを回していくのは本当に大変で、毎週定例ミーティングを開いていましたが、最初はなかなか成果が見えず、自分たちは何をすればいいのか分からないという状況でした。しかし、6カ月目から、経営監査グループが現場に持っていって納得してもらえるようなアウトプットが出始めるようになり、徐々に手応えを感じました」とTDK 経営システム本部 ビジネスシステムグループ ビジネスアプリケーション1部 CoEグループ リーダー(課長) 佐々木 裕氏は振り返る。
本プロジェクトで苦労した点の1つが、監査方法の変更について、監査法人の承認を得ることだったが、監査品質向上に向けた取り組みの目的や意義やメリット、さらにデータの在りかや参照方法といった技術的な説明をアビームにしてもらうことで、監査法人の理解を得ることができた。「業務に精通しているコンサルタントの支援が非常に助かったのと、アビーム社内の連携を活かすことで、プロジェクトメンバーだけでなく自社のナレッジをフルに活用してプロジェクトを推進してくれた点が印象的でした」(佐々木氏)。「本プロジェクトをどう進めるかという観点ではなく、業務や部門全体をより良くしようというアビームのスタンスがあったからこそ取り組みが進みました」(藤本氏)と語る。
本プロジェクトに限らず、さまざまな部門でアビームの支援を受けており、頼りきっているといっても過言ではないです。今後も共にDX推進を強化していきたいです
TDK株式会社
経営システム本部
ビジネスシステムグループ
ビジネスアプリケーション1部
CoEグループ
リーダー(課長)
佐々木 裕氏
TDKでは本プロジェクトを通して、デジタルテクノロジーを活用した業務変革の成功体験や変革の進め方のノウハウを得たとともに、デジタルテクノロジーに対するモチベーションが組織内で高まったと評価している。今後は、「監査だけでなく他事業領域にも展開し、事業部門内での自律的な業務改善プロセスの推進にも貢献していきたい」(西澤氏)。「監査という観点で、不正を未然に防ぐだけでなく、より効率的な業務プロセスを通じた新たな価値創出を目指している」(藤本氏)。さらにグローバル展開も射程に入れて、さらなる業務プロセスの高度化や新たな価値創出を進めていく考えだ。
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2025年3月24日
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