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金融業界の多様な経営課題に対し、銀行・証券・保険・ノンバンク領域で戦略立案から実行まで一貫支援するFinancial Services Business Unit。新規事業構想、デジタルサービス創出、経営統合やサステナビリティ経営など、クライアントと共に価値を創り、変革と成長を実現します。
豊田さんと長澤さんが携わった、池田泉州ホールディングスにおける国内初の事業者向けデジタルバンク「01銀行」の立ち上げプロジェクトを通じた変革・共創・成長について話します。
長澤
Financial Services Business Unit
Senior Consultant
2020年 新卒入社
豊田
Financial Services Business Unit
Senior Manager
2016年 キャリア入社
私たちは、池田泉州ホールディングス(以下、池田泉州HD)傘下の「01銀行」立ち上げプロジェクトに携わりました。01銀行は、国内初の事業者向けデジタルバンクで、データを活用した新たな融資モデルを展開する中小事業者向け融資に特化した銀行です。アビームコンサルティング(以下、アビーム)は構想の初期段階から開業まで支援させていただきました。池田泉州HDとは過去の銀行合併・統合支援などを通じて長年のお付き合いがあり、その信頼関係のもと本プロジェクトのご支援が始まりました。
私が参画したのは構想策定を終えたフェーズからです。新銀行立ち上げという挑戦に、大きな期待を抱いていました。
従来の銀行融資では、過去の財務データを重視した審査が一般的です。一方で、中小事業者からは、「過去の実績だけでなく、現在の事業活動や将来性を評価してほしい」という声が多く聞かれていました。
こうしたニーズに応えるため、従来とは異なる事業性評価を実施しているのが、デジタルバンクの01銀行です。
そうですね。01銀行では、決算書などの財務データを必要とせず、SaaS等のクラウド事業者(プラットフォーマーと定義)と連携し、共有されたデータを融資審査に活用しています。例えば、応援購入サービス「Makuake」における応援購入金額やサポーター数、ポジティブ・ネガティブコメントの内容といった「非財務データ」も融資審査に組み込んでいます。「今、どう評価されているか」という“生きたデータ”を反映できる点が、画期的だと考えています。
プラットフォーマーごとに審査に有効なデータを見極め、非財務データも含めた多面的な事業性評価を実現している点が、新たな挑戦でした。
過去の実績だけではなく、現在のビジネス活動の実態をもとに審査してほしいと考える中小事業者に対し、銀行貸出における新しいビジネスモデルの先駆けとなったと考えています。
ご支援の中で印象的だったのは、金融庁の審査対応支援でした。他の金融機関や類似事例をもとに説明できるデータを収集し、事業計画(5か年の財務三表のシミュレーション等の数値計画を含む)のロジック構築を目指しました。
戦略から施策へ落とし込み、数字に変換し、その確からしさを検証したうえで、説明しやすい一連の資料として取りまとめる。クライアントとワンチームとなり、愚直に取り組み続けました。単に数値計画を見直すだけでなく、戦略や施策とセットで、金融庁をはじめとした各ステークホルダーに説明ができるよう対応しました。
アビームに銀行立ち上げの知見はありましたが、前例が必ずしも通用するわけではありません。知見が活かせる部分は活かしつつ、プラスアルファでクライアントと共に議論を重ね、一緒に課題を解決していく姿勢が、常に求められました。
私にとって最も困難だったことは、開業後のPDCA管理の設計でした。
具体的には、経営企画・営業企画・融資企画の各部門と議論を重ね、必要な管理指標・算出定義・頻度等を確認し、どのようなサイクルで運用するのかを定めるとともに、システム部門とデータ整理や可視化方法を調整し、実際に運用できる形へと落とし込んでいきました。
一方で、プロジェクト全体として開業を目前に控え、クライアントメンバーは非常に多忙な状況でした。開業後を見据えた当領域は、どうしてもプロジェクト内での優先度が上がりづらい状況にあり、クライアントに遠慮してしまいどの程度の温度感で推進すべきかを探りながら進める必要がありました。
長澤さんの課題は「自分ごと化」でした。コンサルタントは、論点を整理した上で「A、B、Cの選択肢がありますが、どうされますか。」と提示し、クライアントに判断いただくことが一般的です。しかし、新規事業開発且つクライアント伴走型のこのプロジェクトでは、正解がないことも多く、「私はこうすべきと考えます」と「自分ごと化」した提案型のスタンスが求められていました。
その姿勢を強く意識するようになったきっかけが、開業後のサービス展開スケジュールの検討でした。
開業準備と並行していたことから、クライアントメンバーのリソースも踏まえて幾つかのパターンを提示したところ、クライアントからは「選択肢は分かったが、どのパターンで進めるべきと考えているのか」と聞かれ、上手く回答ができませんでした。正解がない状況だからこそ、自分の考えをより明確に持ち、当事者として向き合う姿勢が求められていたのだと気づかされました。
それまでの私は、相手の要望にできるだけ寄り添おうとするタイプでしたが、状況を見極め、時には踏み込んで物事を前に進める必要がある。このようなマインド転換こそが、このプロジェクトを通じて得られた、成長に向けた大きな気付きだったと感じています。
私自身も、「自分ごと化」と「第三者性」のバランスを改めて学びました。プロジェクト管理では第三者的な視点で冷静にチェックや検証を行う一方、事業推進ではクライアントやエンドユーザーの立場に立ち、自分ごととして考えることが求められます。
この二つのバランスを取りながらクライアントと向き合う難しさはありますが、以前の銀行立ち上げの際にも感じていた感覚が、今回のプロジェクトを通じて、より明確なものとして確立されたと思います。
私が担当していた事業計画は、クライアントの担当者と協力しながら、ビジネスモデルに合わせて策定していきました。
また、事業計画の前提に変更が生じるたび、担当者と共に事業計画を見直し、開業後についても実績を踏まえて更新を重ねていきました。「どのような前提・考え方で計画を設定するのか」を丁寧にすり合わせながら進めることが、特に重要でした。
また、プロジェクトに関わるクライアント側のメンバーにとっても、新たな経験や視点を得ながら、組織としての力を高めていく機会になるようにと意識しながら、プロジェクトを進めてきました。ノウハウがクライアント側に蓄積されるよう、方針や論点、考え方・進め方を体系的に共有しながら共に考える姿勢を大切にしていました。
数値計画のように、細かな数字の算定ロジックや根拠等理解している人が限られる領域については、クライアントの新任担当者に対し、レクチャーやナレッジ共有、質疑応答を通して引き継ぎを行いました。
また、開業後の運用設計では、クライアントの関係者を巻き込みながら進めるとともに、一部の運用についてはマニュアルを作成するなど、属人化を防ぎ、プロジェクト終了後も無理なく運用が継続できることを目指しました。
実際、開業が近づくにつれて、徐々にクライアントとの役割分担は変化していき、開業直前になると、「現状がこうなっているが、この変更でも問題ないか」と、クライアント側の検討結果について確認を求められるようになり、私たちは検証・確認の立場へと役割が変わっていきました。
私がプロジェクトに参画したのは社会人3年目の頃でしたが、一人の担当者として、クライアントの経営層と直接ディスカッションする機会を持てたことは、今振り返っても非常に貴重な経験だったと感じています。
今回はクライアント側がデジタルバンクとして必要最小限の組織体制だったこともあり、Senior Consultantという立場でありながら、長澤さんが銀行経営層と近い距離でプロジェクトを推進する場面が多くありました。経営者の視点や考え方に触れることで、視座が大きく引き上げられる経験になったのではないかと思います。
豊田さんともう一人の上司が、常に相談しやすい雰囲気をつくってくださった影響も大きかったと思います。悩んだときは、私はよく豊田さんにチャットしていました。論点や選択肢を整理したうえで、自身の考えを添えて相談すると、今後の指針となるアドバイスをくださるので非常にありがたかったです。
また、豊田さんもご自身の上司に同じように相談できる関係だとおっしゃっており、チーム全体の文化として根付いているのだと実感しました。
アビームには「人を育てる社風」があり、それが代々受け継がれていると感じています。自分で努力して調べる、考える、それでも分からないことは遠慮せずに質問する。一人に聞きづらければ社内の複数の人に聞く。クライアントに教えていただくこともあります。自分ごと化して真剣に学ぼうとする姿勢を否定する人はいません。
社内のプロジェクトメンバー間の週次ミーティングがあり、インプットの機会も多くあります。風通しの良さと人の良さに、これまで何度も助けられてきました。期待をされながらも安心して挑戦できる環境の中で、これからも自分の限界に挑戦していきたいです。
金融業界、特に今回携わったような池田泉州HDをはじめとした地域に根差した金融機関は、いわば「地域のCFO」のような存在です。私たちが金融機関を支援することで、地域の方々がより便利に資金を活用できるようになり、暮らしや社会全体によい影響が広がっていく。その波及効果の大きさが、金融業界プロジェクトの魅力だと考えています。
また、金融業界はあらゆる業界と接点があるため、ここで得た経験や知見の応用範囲が広い点も特徴です。今回のデジタルバンクのような新しい業態のプロジェクトでは、社内の様々な部門を横断して相談し、連携できるという、アビームの文化が特に活きました。
今後は、クライアントと共に事業を生み出していくことを目標としています。銀行設立の支援で培ったノウハウは、将来的な新たな事業づくりにも活かせるはずだと考えています。
私自身、ビジネスをゼロから生み出す領域の経験は、まだありません。だからこそ、その領域に挑戦したいという想いがあります。社会的な影響力が大きい仕事に携われることも、この領域で働く大きな魅力だと感じています。
01銀行の取り組みは事業を成長させていくフェーズに入り、新しい銀行として多くの困難と向き合いながらも前に進まれています。私たちはこのプロジェクトを通じて、その挑戦の一端に関わらせていただきましたが、これからも01銀行の取り組みを応援し続けたいと思っています。“データでビジネスを応援する”という想いが着実に実を結び、多くの中小事業者にとって欠かせない存在へと成長していくことを願いながら、今後も私たちが貢献できることがあれば、常にクライアントに寄り添い、共に考え、共に前へ進み続けていきたいと考えています。