クライアントのトランスフォーメーションに当事者としてコミットする──アビームコンサルティングが推進するのは、従来のBPOをさらに進化させた「共創型BPX(ビジネス・プロセス・トランスフォーメーション)」だ。この野心的な挑戦を牽引するBusiness Sourcingセクターを率いる原市郎セクター長に、共創型BPXの真髄と、5年で20倍成長を目指す組織戦略について聞いた。
上席執行役員 プリンシパル
オペレーショナルエクセレンスビジネスユニット長
兼 Business Sourcingセクター長
原 市郎
外資系コンサルファームを経てアビームコンサルティング入社。 戦略、BPR、IT戦略企画からシステム導入・保守運用まで幅広い領域でコンサルティングを提供し、数多くの組織をリード。2015年から2024年にはタイオフィスのマネージング・ディレクターを務め、米国やシンガポールなど複数の海外拠点でのビジネス推進経験を有する。 2024年4月よりオペレーショナルエクセレンスビジネスユニット長に就任し、Business Sourcingセクター長も兼務しつつ、ビジネスソーシング事業の立上げを推進中。
Business Sourcingセクターが取り組んでいるのは、従来のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは一線を画すアプローチです。一般的なBPOはその名のとおりに、業務の一部を外部へ委託して効率化を図る狙いがあり、「オペレーション」や「アウトソーシング」といったイメージがとても強いです。
しかし、私たちが目指すのは「BPX(ビジネス・プロセストランス・フォーメーション)」です。クライアントのトランスフォーメーション全体を担うことが、最大の特徴です。オペレーションの受託はあくまで手段の一つであり、私たちが担うのは企業全体のプロセス変革です。通常のコンサルティングでは、アウトサイダーとして提案を行う形で関与いたしますが、私たちはビジネストランスフォーメーションに当事者としてコミットします。まさに、クライアントのパートナーとして共に推進していくイメージです。
これまでのコンサルティングは、クライアントの課題を解決することが成果になっていました。これに対し、私たちはもっと上流から入り込み、「どのように変えていくか」というところもクライアントと一緒に考え、実行まで伴走していく。だからこそ、私たちは“共創型トランスフォーメーション”を掲げています。
このアプローチは、アビームコンサルティング(以下、アビーム)の企業理念である「Real Partner®」やブランドスローガンである「Build Beyond As One.」を体現した動きでもあります。コンサルタントとクライアントという、発注・受注のみの関係ではなく、真のパートナーとして信頼され、ともに変革を推進できるかどうか、そこにこそ、私たちの存在意義があると考えています。
このようなアプローチが求められている背景について少し触れると、それは日本企業が長年取り組んできた業務改革が、新たなステージに入っているためです。
各企業ではシェアードサービスセンター(SSC)の構築や、海外拠点を活用したコスト削減など、この20年で様々な改革が進められてきました。しかし、その効果が頭打ちになってきているのが実情です。特に、中国を中心とした海外オフショアによるコスト削減は、為替変動や現地労働市場の成熟化、さらには地政学的リスクなどの影響を受け、従来のようにコストメリットだけで持続的な効果を期待することは難しくなっています。
国内での地方展開の動きも見られますが、各地域に業務を移管する際には人材確保という新たな課題に直面しています。結果として、安定的な労働力の確保コストが上昇し、単純なコスト削減効果だけでは十分な成果を得ることが難しくなってきています。
こうした状況を受けて、私たちは今「AI BPO」というものに注力しています。2025年9月にオープンした「AIC(アビーム・インテリジェンス・センター)」を通じ、AIを最大限活用して業務を抜本的に自動化し、業務プロセス自体を進化させる取り組みを推進していきます。AICは、企業変革を実現するコンサルティング力、AIソリューションなどのテクノロジー力、最適なオペレーションを実現するデリバリ力を統合して、クライアントに最適なAIPBOを提供する基盤となります。また日本で最大級のSSCであるNECビジネスインテリジェンス(NBI)とそのサービスデリバリを支えるNEC VALWAYとの協業によって、マーケットトップレベルでのSSCの高度化実績とサービスデリバリ力を有しています。これらの机上の空論ではない、実効性のあるサービスを提供できる体制を基盤とし、クライアントとWin-Winの関係が築ける共創型BPXをさらに推進していきたいと考えています。
Business Sourcingセクターは「5年間で20倍の成長」という大胆な目標を掲げていますが、この数字は決して無謀なものではありません。市場ポテンシャルを考えれば、さらに大きな成長も見込めるでしょう。そして、それを実現するための組織もユニークです。現在のメンバーのうち、新卒から在籍している社員は10%のみという構成で、それ以外は、BPO業界を代表する企業の要職にあった人材や、豊富な経験を持つトップ人材が集結しています。
アビームは現在「第三の創業期」を迎えていると考えています。1981年〜2000年頃までの「第一の創業期」では、創業メンバーのカリスマ性と卓越したビジネスセンスにより成長を遂げました。続く2000年〜2020年頃の「第二の創業期」では、優秀な新卒人材の獲得と多様な業界からのキャリア採用により事業領域を拡大しました。そして現在の「第三の創業期」では、さらなる成長のために外部から業界トップ人材を積極的に採用し、新しい組織文化を作ろうとしています。これは単なる人材補強ではなく、「次の20年」を見据えた組織変革でもあります。
Business Sourcingセクターは、この「第三の創業期」を体現していく組織として、共創型BPXというビジョンに共感した異なるバックグラウンドを持つ、多様な人材で、BPO業界における新しいビジネスモデルを実現しようとしています。
今まさに立ち上げフェーズにある組織ですので、組織拡大のプロセスそのものを経験し、マネジメント人材としての基盤を築くだけでなく、さらには買収やジョイントベンチャー、アライアンスなど新しい枠組みでのビジネスなど、多様な経験を積んでいってもらい、この事業創造に関わる全員が将来のアビームのリーダーになっていって欲しいと考えています。
テクノロジーの進歩により、人間はより難易度の高い業務に集中できる環境が整いつつあります。私たちも単なるコスト削減や業務効率化を支援するだけでなく、その先にある「人間らしい働き方」の実現まで見据えています。
例えば、AIの活用により業務効率化が進むことで、新たなキャリア機会を得る人材が増えることが予想されます。一方で、人手不足に直面している業界もあります。この需給ギャップを解決する、マッチングおよび再配置のモデルを実現できれば、単一企業を超えた社会課題の解決にも貢献できるはずです。つまり、私たちはAI活用の人員削減を単なるコスト問題で終わらせるのではなく、企業・個人・社会それぞれにとって価値のある、Win-Win-Winのモデルを構築したいと考えています。
企業がより動的な存在になる中で、人材の流動化と適材適所の実現は避けて通れない課題です。私たちは単なる業務効率化にとどまらず、人材のアンマッチ解消やAI時代の新しいキャリアモデル構築、さらには社会課題の解決まで視野に入れています。Business Sourcingセクターではこのような壮大なビジョンを実現するために立ち上げメンバーとして、ともに挑戦してくれる仲間を求めています。
また、私たちのビジネスは、アビーム全体の「価値創出サイクル」を支える重要な役割を担っています。BPOビジネスは価値創出サイクルにとっての「変革の実現」を担う基盤となるものです。CxOアジェンダから価値創出実現のオペレーションまで当事者としてコミットすることで、私たちは経営理念「Real Partner®」モデルを体現しているといえます。
「変革の実現」が進めば新たな「変革テーマの創出」につながり、具体的な変革構想が策定され、それを「実現」しようとする段階で、新たなニーズが生まれます。価値創出サイクルが回り続ける限り、クライアントも、私たちも、持続的な成長が可能だと確信しています。
日系ファームとして新しいBPOモデルである共創型BPXを実現し、業界のトップティアを目指す——これがBusiness Sourcingセクターの存在意義です。この使命に共感し、変革の最前線で新たなビジネスモデルを共に創造していける方々と、「第三の創業期」という歴史的な瞬間をチームで共有し、挑戦を続けていきたいと思っています。