ソリューションコンサルティング事業
CXセクター
“顧客中心”の変革をリードする。CXセクターの挑戦と未来

デジタル技術の進展や消費者の価値観の変化、人材確保の難しさなど、企業を取り巻く課題は複雑化している。その中で、重要なテーマの一つが顧客体験(CX)だ。エンタープライズトランスフォーメーションビジネスユニット CXセクターは、単に顧客接点を改善するだけではなく、企業全体を「顧客中心」に変革することで、消費者により良い経験を提供できるよう支援している。セクター長の磯貝智崇に、変化の激しい時代におけるCX改革の真髄と、そこで働く価値について聞いた。

プリンシパル
エンタープライズトランスフォーメーションビジネスユニット
CXセクター長

磯貝 智崇

2003年にアビームコンサルティングに入社。CRMおよびCXを中心に、マーケティング、セールス、サービス領域の変革をリードし、顧客起点の経営実現に向けたコンサルティングに従事。金融、製造、ハイテク、自動車、通信など幅広い業界において、戦略立案からシステム実装、定着化まで一貫した支援を提供。近年はデータ/AI活用やRevOpsの推進を通じ、収益拡大と顧客体験向上の両立を目指すモデル構築に注力。

企業全体で「顧客を中心に据える」変革を推進

CXセクターは、2024年にCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)セクターから、CX(Customer Experience:顧客体験)セクターへと改名しました。これは、企業全体の変革を通じて、顧客に新しい体験を提供するという意図を明確に示すためです。

CXセクターのミッションは、顧客起点の変革によりクライアントが顧客への価値提供や顧客体験をより高いものへと変質させるとともに、より効果的な顧客アプローチを実現し、収益効率を最大化することで、企業の持続的な売上成長に貢献することです。その実現のためには、マーケティング、コールセンター、営業といった「顧客接点」の改革だけでなく、物流やサプライチェーン、そこで働く人材など企業全体を「顧客中心」に変革することも重要です。その結果、顧客体験の質が向上する——そうした包括的な変革を目指しています。

顧客体験というとBtoC企業を想起する人も多いですが、BtoB企業においても営業活動や顧客との関係性を通じた体験は重要であり、同様にCXの視点で取り組むべきテーマが存在します。そのため、CXセクターが関わるクライアントの業界は多岐にわたっています。

企業の活動全体を意識した持続的なCX変革

顧客体験(CX)を高めるためには、顧客とのタッチポイント(Web、営業担当者、お客様サービスセンター)を改革するだけでは十分ではありません。商品開発や生産、サプライチェーンなどのバリューチェーン全体、そしてそれを担う従業員の働きやすさやサポート体制の整備、すなわち従業員体験(EX)の向上までを含め、あらゆる企業活動を「顧客中心」に捉えることで、初めてより良い顧客体験が実現できると考えています。例えば、あるクレジットカード会社のコールセンター支援では、CXとEXの両面からコンサルティングを行い、顧客には一貫した高品質なサービスを、従業員にはよりやりがいを持ちながら挑戦しやすい環境を提供しました。このように、あらゆるバリューチェーンに顧客を中心に据えて、プロセス作りや組織や従業員のマインドセット双方を改革することが、企業の持続的な成長に不可欠です。

アビームコンサルティングでは、業務プロセスや業務ルールの設計、システム環境の整備に加えて、組織や従業員のマインドチェンジなどを通じて、顧客接点の質と従業員の提供価値の最大化を実現させる支援を行っています。こうした取り組みを支えているのが、CXの知見に加え、人事、サプライチェーン、デジタルといった幅広い専門チームの連携による「領域を横断する力」です。これにより、複雑化するCX課題に対して全社横断の視点で変革をリードできることが、私たちの強みとなっています。

CXは社会状況の影響を強く受けます。新型コロナ禍では、化粧品業界から「対面でのタッチアップ接客が難しい中での新たな接客方法」についての相談が寄せられました。近年では、人材確保の難しさや価値観の多様化が課題となり、社員の長期的な育成や定着が企業にとって重要なテーマとなっています。
そうした中で問われているのは、優秀な人材をどう確保・定着させるか、そして人的リソースに過度に依存しない顧客接点をどう構築するかという点です。その解決策として注目されているのがAIの活用です。私たちはまず、従業員の業務をサポートする領域からAI導入を進めるべきだと考えています。すべての従業員がすべての質問に即座に対応できるわけではありませんが、AIが補助することで、品質を保ちながら負荷を軽減できます。

今後はAIの活用がさらに進み、創造的な業務や収益向上への貢献といったトップライン改善にもつながっていくでしょう。そのなかで、「人とAIの共存」をどのように実現するかは、今まさにクライアントと共に模索しているテーマです。
CX変革はもはや、目の前の課題を解決するだけでは対応しきれません。急速に進化するAIにより、5年後すら予測が難しい今、企業の持続的な成長を左右するのは、「どんな未来を描くか」にかかっています。私たちはクライアントとともに将来のあるべき姿を描き、そこから逆算して今取り組むべき課題を明確にする「バックキャスト型」のアプローチで、変革を支援しています。

自ら実践し現実的なクライアントの課題解決を追求

複雑化する顧客接点の課題に対応するため、CXセクターでは社員一人ひとりの学びや組織力の向上にも注力しています。例えば、CRMツールを活用して市場動向や課題を予測し、クライアントへの提案に活かすための顧客接点管理の高度化や、知見を社内で共有するナレッジポータルの整備を進めています。こうしたツールの導入は容易ではなく、軌道に乗るまでは社員への継続的な活用促進が欠かせません。しかし、このプロセスこそが貴重な財産となり、同様の課題を抱えるクライアントに対しても、実践に基づいた提案を行う基盤となっています。私たちは、このように自ら試行錯誤しながら課題解決に取り組んでいます。

また、組織文化を象徴する取り組みとして、メンバーが自発的に企画・運営するイベントも多数あります。中でも「CXラジオ」は、ランチタイムにさまざまなゲストを招いて情報を発信する企画で、運営もすべてメンバーの自主性に委ねられています。ほかにも、従業員同士が感謝の気持ちを伝え合うアワードや、年次に関係なく参加・企画できる勉強会など、多様な活動が展開されています。キャリア入社の社員が、入社間もない視点を活かしてイベントを企画することも珍しくありません。

これらの取り組みは、トップダウンで指示されたものではなく、メンバーの自発的な発案を組織として支援するかたちで実現されています。特にリモートワークが定着するなか、自分たちの働く環境を自らデザインする文化がCXセクターには根付いています。これらの活動は、CXセクター内の知見や成長を促すだけでなく、クライアントからの「社内コミュニケーションの改善」などの相談にもつながっています。

組織の壁を越えた真のCXへの追及

現在、CXセクターが特に注力しているのは、マーケティング・営業・カスタマーサービスのプロセスを一体化させ、収益性の向上と顧客エンゲージメントの強化を同時に実現することです。その鍵となるのが、「レベニューオペレーションズ(RevOps)」や「マーケティングオペレーションズ(MOps)」といった概念です。しかし、日本国内ではまだこれらの概念が十分に浸透しているとは言えません。そこで私たちは、日本企業の文化や慣習に適した形で、独自のレベニューオペレーションズを確立することを目指しています。

この挑戦において私たちが求める人材は、将来の見通しが不透明な状況下でも、自ら仮説を立て、何をすべきかを考え抜く「外向きの視点」を持った方です。CX改革には、戦略の立案だけでなく、AI活用のためのデータ収集・整備やプロセス設計、さらには各種パッケージソフトウェアへの知見も必要です。上流の戦略から顧客接点、業務プロセス、アプリケーション、データ基盤までを一貫して見渡せるオールラウンドなスキルが求められます。

私たちにとってクライアントは、単なる顧客ではなく、業界や社会を変革するパートナーです。クライアントが先進的な企業として注目されることで、日本企業の「横展開力」を活かしながら業界全体を変えていく——。そうした変革の循環モデルを生み出すことが、私たちの使命です。

CXセクターは、社会にインパクトを与えるさまざまな業界の変革最前線で、実務に携わることができる環境にあります。支援したクライアントの新店舗のデザインやサービス改善が、日常生活の中で“目に見える形”で実現されることも多く、手触り感のある仕事を経験できる点も、大きな魅力のひとつです。
また、私たちはクライアントとともに「新しい顧客体験の未来」を創造する使命を担っていると考えています。将来を見据えて仮説を立て、自らの専門領域を広げながら挑戦していける方と、新たなCXの未来を切り拓いていきたいと考えています。