D×P 法人のファンドレイジング拡大に向けた提案資料作成の支援

 


企業目線を注入することで、ソーシャルセクターへの支援の重要性を感じてもらえる提案用資料の作成を支援しました
 

1. 背景

NPO法人D×P(ディーピー)(以下D×P)への寄付は、個人寄付が大部分を占めており法人寄付が少ないことが課題として挙げられていました。また既存の提案用資料は、個人に向けた共感重視の内容であり、法人向けにファンドレイズ拡大を図るにあたっては意思決定を行う経営層へ刺さるストーリーへのブラッシュアップが必須でした。

そこでアビームコンサルティングは、被支援者が抱える困難さを可視化するためのデータ分析(※)で明らかとなったファクトを基に企業目線を注入することで、企業のキーパーソンにD×Pへの支援を促す納得感のある資料作りを支援いたしました。
 

2021年度、当社にてデータ分析を実施

2. アプローチ

本取り組みでは、言語化の難しい「若者の孤立」という問題や、D×Pが提供するソリューションの有効性を資料に落としこむ為、若手メンバーを中心に毎週D×Pのマネジメント層と議論を行いながら進めていきました。
ターゲット像や訴求ポイントについてチームで事前に仮説を整理したうえでD×Pとのミーティングに臨み、討議を通じて仮説の検証・進化を行いました。

また、ソーシャルセクターおよび「若者の孤立」への知見があるシニアメンバーの参画や、本業を通じて得た企業の意思決定メカニズムへの理解により、企業目線でキーパーソンを動かすストーリー作りをすることができました。その結果、短期間かつ各メンバーが本業の合間を利用しての活動でしたが、先方の期待値を超えるアウトプットを出すことができました。
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3. 資料のストーリーライン

寄付獲得につながる説得力のある提案用資料とするため、企業のキーパーソンに訴求したい以下3つのポイントを軸にストーリーラインを組み立てました。

① 「若者の孤立」という問題の重大さ・危機感を情緒面・論理面の両方から伝える

既存の資料は、被支援者の生の声を掲載する等、読み手に共感を求めD×Pが取り組む課題を自分ゴト化してもらうよう促す内容でした。他方、問題の構造やその解決方法、D×Pが実施している支援については、実績があるにもかかわらず十分に提示されていませんでした。

そのため、支援者によって「若者の孤立」という問題へのタッチポイントが様々であること、またターゲットである経営者等の企業のキーパーソンが寄付実施を行う判断材料を提供するため、情緒的なストーリーだけでなく論理的な構成によって納得感を持たせる必要があることを考慮し、情緒的な要素と論理的な要素の両面からアプローチする資料構成としました。

<情緒的なアプローチ>
事実を視覚的にわかりやすく表現し、D×Pが取り組む問題の重大さを読み手が理解し、共感できるような構成

<論理的なアプローチ>
統計情報等から、情緒的なアプローチの中で訴求した事実の全体像や背景情報を伝えるような構成


さらに、過去に支援を行ったデータ分析で明らかとなった10代の若者の孤立問題の構造をファクトベースで提示することで支援の必要性を訴えかけました。

<10代の若者の孤立問題の構造>
一度問題を抱えた場合、連鎖的に複数の問題を抱えやすく、より問題の解決が困難な状況に陥りやすい

dp若者の孤独



② 問題に対してD×Pが提供しているソリューションの有効性を説明する

単なる活動紹介資料ではなく、継続寄付を獲得するための提案用資料であるため、聞き手から見て寄付先であるD×Pがどのようなソリューションを提供しているのか、すなわち「若者の孤立」という問題をどのように解決しているのかについて具体的に示す必要がありました。

従って、被支援者の現状(As-Is)とあるべき姿(To-Be)を整理し、D×Pの取り組みによって被支援者にどのような変化が起こるのかについて図解しました。

また、活動の実績を数値で示すことで、取り組みのインパクトを視覚化しました。

dp取り組み
dp取り組み



③ 信頼できる寄付先であることを示す
寄付先の団体が信頼できる存在であること、また寄付金の使途が明確であることは寄付者にとって非常に重要な観点です。特に法人寄付において、寄付先の経営が安定しているかどうかや、認定NPO法人格を取得しているか等は、寄付実施を促す有効な要素となりえます。

そこで過去3年の財務情報をもとに、D×Pの安定した経営状況ならびに問題解決に向けた積極的な事業投資の姿勢を表現しました。また、これまで構造化できていなかった事業展望について整理することで、問題の根本的な解決に向けたD×Pとしての強いメッセージを資料に込めました。 

dp財務
dp財務

4. 取り組みの成果

本取り組みでは、支援の現場でD×Pが目にされた孤立の実態に基づき、議論を通じて根本原因を深堀しました。
その結果、若者が負の連鎖に陥りやすい状況にあることを言語化することができ、訴求力のあるストーリーラインの構築に繋がったと考えています。

また、様々な議論を通じ、“団体ミッションの見直しをするうえで大切な気づきを得た”とのお言葉をいただきました。 本取り組みが、団体ミッション刷新の一助となれたことは、大きな成果だと捉えています。

今後は、今回作成した資料を用いながら実際に提案活動を実施いただき、実践の場で得た知見をもとに更なるブラッシュアップを予定しています。
 

5. STAFF VOICE

今回の取り組みでは、アビームメンバーが持つスキルやノウハウをプロボノ活動として活用し、D×P様がリソース不足等により普段手を伸ばしたくても伸ばせなかった領域での活動をサポートさせていただきました。

アウトプットとして、ソーシャルセクター支援の重要性を伝えたうえで「寄付」というアクションに繋げるようなドキュメントが求められており、仮説思考で問題の本質を捉える力やメインメッセージを端的に分かりやすく表現する力など、結果的にこれまで本業で培ったあらゆるコンサルティングスキルが発揮される取り組みとなりました。

こうしたプロボノ活動を通じた社会貢献の輪が、アビームから広がることで、今よりもっとわくわくする未来を創造することができるのではないかと考えます。


エンタープライズ・トランスフォーメーションビジネスユニット

コンサルタント
井倉 愛穂

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