テクノロジーの進化によって、仕事やキャリアのあり方が大きく変わるなか、AI時代に人が発揮すべき価値はどこにあるのでしょうか。それは、自ら問いを立て、判断し、新たな価値を創造すると共に、多様な人を巻き込みながら変革を実現へと導く力です。
デジタルコンサルタントは、テクノロジーを起点に変革を推進する仕事です。多様な専門性を持つメンバーがチームで力を掛け合わせ、企業のみならず、社会や業界の未来にもつながる変革に挑みます。
本記事では、AI時代におけるデジタルコンサルタントの役割と、このコースで挑戦できる仕事、身につけられる力についてお伝えします。
福田
AI & Technology Modernization Business Unit
IT Management Sector
Director
Sierにてシステム構築を経験した後、海外勤務を経て、総合系コンサルティングファームへ。アビームへは2008年に入社し、現在はDirectorとしてテクノロジーを軸に多種多様な企業の戦略・構想策定やプロジェクト・プログラムマネジメントを支援するほか、企業のIT/デジタルケイパビリティ全般を支援する組織の運営や人材育成にも寄与している。
まず、AIやテクノロジーの進化によって、学生のキャリア選択にはどのような変化が起きていると感じますか?
キャリアの入口で経験する仕事の基礎となる作業の多くが、コンサルタントに限らず、すでにAIに代替され始めています。これまでのようなキャリア形成の第一歩が見えづらくなり、不安を感じている学生も多いのではないでしょうか。
そのため、コンサルタントのようにAIの進化による影響や早い成長が求められる環境に不安を感じ、将来のキャリアを考えるうえで慎重になる方がいることも理解できます。
ただ、歴史を振り返れば、技術の進化によって人は単純作業から解放され、そこで生まれた余力や新たな技術を活かし、新しい仕事や活躍の場をつくってきました。AIに代替される仕事があるのなら、その先に新たな機会を生み出していけばいい。私はそう考えています。
若手の成長機会についても同様です。これまで若手が経験を積んできた仕事がAIに代替されるのであれば、それに代わる新たな成長機会を組織が意図的につくっていかなければなりません。AIによって仕事が変わることを前提に、若手がより早い段階から新たな経験や挑戦を重ねられる環境をつくる。それは、これからの組織に求められる重要な役割だと考えています。急速な変化はビジネス環境における前提となっています。コンサルタントは、変化する環境にクライアントと共に向き合い、変革を前に進める仕事です。その経験を重ねることで身につくのが、組織能力を表す言葉としてよく使われる「ダイナミックケイパビリティ(変化する環境に対応しながら、自らを変革し続ける能力)」だと考えています。この力は、変化の激しい時代において、高い価値を発揮しながら自らキャリアを切り拓いていくための礎になると思っています。
福田
AI時代に価値を持つ仕事とは、どのような仕事だと考えますか?
AIが前提となる企業活動では、「AIは『速度』と『量』、そしてその特性に応じた品質を担い、人は『判断』『責任』『創造』を担う」とよく言われています。
例えば「判断」一つを取っても、そこには必ず判断基準があります。AIやRPA(業務自動化ツール)に任せられない判断を人間が担うので、その基準は簡単には言語化できない複雑で高度なものになっていくでしょう。
限られた情報の中で、状況の変化を捉え、その企業ならではの勝ち筋を踏まえて判断する。そして、その判断をもとに異なる立場や考えを持つ人を巻き込み、実行へとつなげていく。そのためには、論理だけではなく、人の感情も含めて「この方向に進もう」と思ってもらえる判断(基準)が必要です。こうした領域は、本質的に責任を負うことのできないAIでは担えないと考えています。
そして、判断や創造の出発点にあるのは「問い」です。何を問うのかによって、その後の思考の質が変わり、価値ある判断や創造につながります。そのため、「どの仕事がAI時代に残るのか」ではなく、「人だからこそ生み出せる問いを持ち、判断し、創造できるか」が重要だと思っています。そのような能力を発揮できる人が、仕事に人間ならではの価値を生み出していくのだと信じています。
もう一つ重要なのが、「責任」です。より正確に言えば、「責任設計」だと考えています。AIは本質的に責任をとることができませんが、ミスをする可能性はあります。だからこそ、そのミスが大きな経済的・社会的影響につながらないよう、予防・発見できる仕組みを設計する。そのうえでAIが安定して仕事を担える範囲を広げ、それでも問題が起きたときには、人間が責任を持って対処する。こうした「責任設計」を、テクノロジーを活用しながら最適化していくことも、AI時代に人が担う重要な役割だと思います。
福田
AIでは代替しにくい、コンサルタントならではの価値は何だと思いますか?
コンサルタントという立場では、「問い」「創造」「実現」「合意形成」、そして「コミットメント」だと考えています。
これまでコンサルタントは、調査・分析や資料作成など、アウトプットをつくることに多くの時間を費やしてきました。そこをAIに任せられると、その分、クライアントの変革を実現し、成果を生み出すこと、すなわちOutcomeにより深くコミットできるようになります。
私は、AIを人の仕事を奪うものではなく、人の力を引き出し、可能性を広げるものだと捉えています。そう考えると、AIによってむしろ、コンサルタントが本質的な役割に向きあい価値を出しやすい環境が生まれているのではないでしょうか。
こうした向き合う役割や価値の変化は、アビームコンサルティング(以下、アビーム)のコンサルティングにも表れています。アビームでは、戦略や構想を描くだけでなく、その実現や定着までクライアントと共にやり切ることを大切にしております。だからこそ、AIの力も活用しながら、よりクライアントの本質的な課題の解決や価値創出に私たちの能力を注げるようになってきています。
過去のデータから導き出せることはAIの力を借りながら、私たちはより「未来を創る」ことに力を注いでいく。何を「問い」、何を「創造」するのか。そして、それを「実現」するために、異なる考えや感情を持つ人たちの間に橋を架け、「合意形成」しながら関係者を巻き込んでいく。そこに、これからのコンサルタントが発揮すべき価値があると思っています。
福田
企業変革を前に進めるうえで、「巻き込み」や「合意形成」はなぜ重要なのでしょうか?
どれだけ優れた構想を描いても、実現しなければ「絵に描いた餅」で終わります。企業変革には、経営層や現場、国内外の拠点、社外のパートナーなど、異なる立場や専門性を持つ多くの人が関わります。それぞれに守るべきものや重視することがあるため、論理的に正しい答えを示すだけでは、人や組織は動きません。
実現可能性を高めるためには、技術的な検証も必要ですが、何より大切なのは関係する人たちを「巻き込み」、変革の実現に向けた行動に「合意」してもらえるかどうかです。
それには単に相手を説得するだけでは十分ではありません。目指す未来や変革の意義に共感・共鳴し、「一緒に実現したい」と思ってもらう。そこまで関係者の意識を動かしていくことが重要だと考えています。
だからこそ、企業変革を「実現」するためには高いレベルでの「巻き込み」と「合意形成」が欠かせないのです。
福田
若手は、企業変革にどのように関わることができますか?
一概には言えないほど、幅広い場面に関わる機会があります。若手のうちから変革の様々なフェーズに携われるのはコンサルタントならではの醍醐味だと思います。
また、自分が直接経験したことだけが学びではありません。上司やプロジェクト責任者から、現場の状況や意思決定の背景を聞き、「自分ならどう考え、どう動くか」を思考すれば、他者の経験も自らの学びに変えることができます。プロジェクトを越えて情報を共有し合う場もたくさんあります。
多様な立場の人と向き合い、チームで変革を前に進める経験を通じて、視野の広さと思考の深さを身につけていけると思います。
福田
デジタルコンサルタントとは、具体的にどのような価値を提供する仕事なのでしょうか?
「テクノロジーを起点に、ビジネスに変革をもたらす」仕事だと考えています。例えば、AIを活用して企業の意思決定の質を高めたり、それを継続的に運営・改善できる組織や人のケイパビリティをクライアントと共に育てたり、あるいは、デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルを描き、その実現まで伴走することもあります。
価値提供する領域は多岐にわたりますが、共通しているのは、テクノロジーを企業価値向上につなげること。それがデジタルコンサルタントの仕事だと思います。
福田
デジタルコンサルタントコースでは、戦略立案から実行・定着までの中で、どのような役割を担うのでしょうか?
戦略立案から実行・定着まで、すべてのフェーズで役割を担います。例えば戦略や構想を描く段階では、テクノロジーによる新たな可能性を提示する。実行段階では業務やシステム、データ、組織を具体的に設計し、導入後はそれらが現場に定着して成果が生まれる状態まで支援します。
今や、テクノロジーなくして企業のビジネスを語ることはできません。だからこそ、それぞれのフェーズで「テクノロジーによって、ビジネスの成果をどう最大化するか」を考え、実行し、その実現につなげていく。それが私たちの役割です。
福田
具体的なプロジェクトを例に、デジタルコンサルタントがどのように価値を発揮するのか教えてください。
私が関わったプロジェクトの一つに、2030年を見据え、AIによってクライアントのシステム開発・運用がどう変わるのか、さらに、その変化に合わせて組織をどう変え、どのような能力を獲得すれば、高い生産性を実現できるのかを描くプロジェクトがあります。
そこで重視したのは、調査機関が発信する情報をもとに、机上で議論するだけでは終わらせないことです。
AI駆動開発に詳しいメンバーには、クライアントに実際にその技術を体験してもらう機会をつくってもらいました。一方、技術の未来予測やKGI・KPI設計に強みを持つメンバーには、将来のロードマップと各段階での指標の変化を捉え、将来の大きな効果に繋がる小さな予兆を検知できるKGI・KPIツリーを設計してもらいました。また、若手メンバーも将来の業務フロー設計やその効果の定量的試算、業務を実現するAIエージェントのアーキテクチャ検討などに関わり、それぞれの専門性を発揮しながらプロジェクトに貢献していました。
このように、テクノロジーを軸としながら、異なる専門性を掛け合わせ、一つのストーリーとして統合していく。そうすることで、単なる未来予測ではない、クライアントが実感を持って未来を描き、行動できる成果につなげることができました。
クライアントが抱える課題は、ますます複雑化・高度化しています。一人のコンサルタントが持つ専門性だけで、そのすべてに応えることは難しい。だからこそ、多様なデジタルの専門性を持つコンサルタントが協働し、それぞれの強みを組み合わせながら、統合的な成果を生み出していくことが重要だと考えています。
福田
アビームのデジタルコンサルタントコースで働くことで、AI時代にどのような力を身につけられると考えますか?
2027年卒採用まではテクノロジーコンサルタントとAIコンサルタントを別々のコースとしていましたが、2028年卒採用から一つに統合しています。
その背景には、AIが企業活動のあらゆる領域を変革し、その可能性を広げる技術になってきていることがあります。これからは、「AI×それぞれの専門性」によってどのような変革を描き、実現できるかが、これまで以上に重要になります。
アビームにはテクノロジーに関する多様なフィールドがあります。そのため、築いていける専門性も一つではありません。ただ、AIについては、すべてのデジタルコンサルタントが身につけるべき専門性になっていくと考えています。
そのうえで、一人ひとりが自分の軸となる専門性を磨き、そこに新たな専門性を掛け合わせていく。そして、多様な専門性をつなぐHubとなり、クライアントの経営アジェンダにテクノロジーの側面からアプローチできる。そんな人材になっていってほしいと思っています。
そして、AI時代に重要なのは、単にAIを導入しているかではなく、AIを使いこなし、変革を実現できる「人・組織・仕組み」を持っているかだと考えています。
それを仮に「AI Nativeな状態」と定義すると、私たちはその状態を様々なアプローチでクライアントと共につくり、変化を先取りしながら、自らを変え続けていける企業へと導いていきます。
デジタルテクノロジーを活用して発揮するその力を、先ほどお話したダイナミックケイパビリティのデジタル版、「デジタル・ダイナミックケイパビリティ」と私は呼んでいます。変化の激しいAI時代に、テクノロジーを武器に自ら変革を生み出し、進化していく。そのような力を一人ひとりのデジタルコンサルタントに身につけていってほしいと思っています。
私たちも、そうした人材を一人でも多く社会に送り出せる組織でありたいです。
福田
デジタルコンサルタントコースに向いているのは、どのような人ですか?
「テクノロジーを武器に、世の中を変えていきたい」という想いを持っている人だと思います。
目線を会社の枠だけに留めず、その先にある社会まで見据え、経済価値と社会価値の両立を目指していく。そして、自らが変化の起点となり、目の前の課題を自分ごととして捉え、周囲を巻き込みながら能動的に行動できる。そうした姿勢を持つ人に向いている仕事だと思います。つい先日、私が最終面接を担当した今年度入社のデジタルコンサルタントのメンバーと食事をしたのですが、皆さん「誰かのためになりたい」「社会・未来を良くしていきたい」「テクノロジーの可能性を力にしていきたい」「構想だけでなく実現まで伴走したい」「チームでより大きな価値を提供していきたい」等と話しており、アビームのデジタルコンサルタントのアイデンティティのようなものを早くも感じました。
大切なのは未知の領域にも好奇心を持って向き合い、自ら学び続けること。そして、多様な強みを持つ人と力を合わせ、貢献意識を高く持ち、考えるだけで終わらせず、クライアントと共に変革の実現に向けて行動し続けられることだと思います。
福田
最後に、AI時代のキャリアに不安や迷いを感じている学生へ、メッセージをお願いします。
AIの進化だけでなく、少子高齢化による労働人口の減少、気候変動、地政学的リスクなど、私たちを取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。先を見通しにくい時代に、キャリアへの不安や迷いを感じるのは自然なことです。
だからこそ、変化を恐れるのではなく、変化を乗りこなす力を身につけてほしいと思っています。
ぜひデジタルコンサルタントの世界に飛び込み、テクノロジーを武器に、不確実な状況でも自ら考え、行動し、変革を実現する経験を重ねていってください。私たちも、その挑戦と成長を全力で支えていきます。
そして、そこで培う「デジタル・ダイナミックケイパビリティ」はこれから先、環境がどれだけ変化しても、自らのキャリアを切り拓いていく力になるはずです。
ぜひ、これからの時代の主役として、未来を明るい希望で照らしていってください。
福田