日本企業のIT部門が直面する経営課題に対し、オペレーショナルエクセレンスビジネスユニット Technology Sourcingセクターを率いる渡邊政彦セクター長は、従来の「運用保守」という枠組みを超えた、戦略的パートナーシップの重要性を強調する。単なる作業の代行ではなく、クライアントの変革サイクルにおいて最も長く、重要なフェーズである「定着・改善」を担い、クライアントの次なる成長の起点を創り出している。「運用を預かる部門」だけではなく「変革を持続させる部門」 へと進化を遂げ、数年で体制を急拡大していくことを目指している。今回は、Technology Sourcingセクターが描く役割と、将来の展望、そして成長機会について話を聞いた。
プリンシパル
オペレーショナルエクセレンスビジネスユニット
Technology Sourcingセクター長
渡邊 政彦
2003年に新卒でアビームコンサルティングに入社。以来、一貫してITマネジメント領域の案件に従事。金融、商社、コンシューマービジネス、製造、サービス業など多様な業種に対し、IT戦略企画から導入、プロジェクトマネジメント、運用保守まで網羅的な支援を提供。2015年よりタイオフィスに駐在し、主要顧客のインドベンダーを活用したシステム導入や国内ロールアウト、運用保守立ち上げを全面支援するとともに、タイオフィスにおけるITマネジメントビジネスの立ち上げと拡大を推進。2022年、帰国後はオペレーショナルエクセレンスビジネスユニットの立ち上げに従事し、現職に至る。また、アビームコンサルティング全社のグローバルデリバリーモデル変革の推進も兼務。
現在のアビームコンサルティング(以下、アビーム)は戦略コンサルティング事業、ソリューションコンサルティング事業、そしてTechnology Sourcingセクターが属するアウトソーシング事業の三つの事業から構成されています。アビームが向き合っているのは、クライアントのエンドツーエンドでの変革と成長です。戦略の策定から実行、そして定着と改善に至るまで一貫して支援する中で、アウトソーシング事業は「定着・改善」という「最後のピース」を担い、再び次の戦略へとつなげる重要な役割を果たしています。
「アウトソーシング」と聞くと、多くの方は「業務代行」や「業務のサポート」といったサービスをイメージされるかもしれません。しかし、私たちの担う領域はそれにとどまりません。クライアントの変革が完了した後、いわゆる「ラン・ザ・ビジネス(Run the Business)」と呼ばれる通常業務を長期にわたり支援していくことがアビームのアウトソーシングの本質です。
時間軸で見ると、その違いはより明確です。戦略立案は半年から1年が多く、システム導入などの変革実行は1年から3年程度が一般的です。一方、その後にクライアントが実際に導入したシステムや仕組みを活用し、成果を出していくフェーズは5年、場合によっては10年以上に及ぶこともあります。
この最も長いフェーズにおいて、効果を定着させ、価値を実らせることこそが私たちの役割です。単なる運用にとどまらず、クライアントの成長を共に実現していく。そして、そこで築いた信頼と実績が、次の成長サイクルの起点となるのです。特にTechnology Sourcingセクターでは、企業のIT部門を主なクライアントとし、ITアウトソーシングの実行から、IT部門の通常運用の最適化に向けた組織設計や標準化など、上流領域まで包括的に支援しています。
現在、日本企業のIT部門は重要な転換期を迎えています。その背景には、日本社会全体における構造的変化があります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、IT人材へのニーズは急速に高まり、優秀な人材の確保は業界全体にとって喫緊の課題です。また、限られたリソースをいかに効果的に活用するかも、経営の大きなテーマの一つです。さらに、長年企業を支えてきたベテラン社員の世代交代も大きな課題です。豊富な経験と知識を持つ方々が培ってきたノウハウを属人化させずに次世代へ継承し、組織として持続可能な体制を構築することが急務となっています。
一方、IT部門に対する経営からの期待も高まっています。「DXを推進し、デジタルを活用して新たな価値を創出する」「コストセンターではなく、事業価値を生み出すプロフィットセンターとしての役割を果たす」といった要請が強まる中、限られたリソースでその期待に応えることは容易ではありません。
こうした状況において、クライアントはどの業務を内製化し、どの領域を外部パートナーと協働するかという戦略的な判断を迫られています。私たちは単に運用保守を提供するだけでなく、「ソーシング戦略」と呼ばれる、内製と外部活用の最適な配分をクライアントとともに策定します。さらに、中長期の計画やIT戦略の整合性を確認しながら、持続可能な成長を実現する最適解を導くことを目指しています。
そのため私たちのアプローチは、一般的にイメージされる運用保守サービスとは大きく異なります。クライアントからの問い合わせやエラー報告に受動的に対応するだけではなく、それに加えて継続的改善の機能と体制を必ず備えます。例えば、一定期間の運用実績を分析し、発生頻度の高い問い合わせに対しては、コスト削減に向けた改善提案を能動的に行います。
こうした提案型の改善活動により、クライアントの運用は次第にスリム化されていきます。その結果、クライアントは削減したリソースを新たな取り組みに活用することができるようになり、より大きな価値創出へと繋がります。こうした方法でなければ、真のパートナーシップは築けないと私たちは考えているからです。常に新しい価値を生み出し続ける継続的な運用の実現こそが、アビームがビジネスパートナーとして選ばれ続ける理由だと、私たちは考えています。
こうしたアプローチが可能なのは、アビームには「価値創出サイクル」という考え方があるからです。戦略・構想の策定から、システム構築・導入、運用・保守に至るまで、クライアントの状況に応じて最適な組み合わせでサービスを提供しています。
私たちとしてもアウトソーシング事業だけの支援を追求するのではなく、それを起点として、会社全体のクライアント支援へと繋げていく。戦略から実現(導入)まで担った後、そのままシームレスに運用・保守を続けることで、刻々と変わるビジネスアジェンダに即時に対応できる体制を長年にわたり継続していることも、アビームの差別化要因だと考えています。
さらにアビームのもう一つの強みは、グローバル連携にあります。日本にヘッドクオーターを置く体制で運営することにより、拠点間の壁がなく、リスクのない情報共有やスムーズな連携が可能となっています。
実際に、毎月全海外オフィスのアウトソーシング事業のリーダーが集まり、各国の事業計画や成功事例、改善活動の事例を相互に共有しています。東南アジアで採用されている欧米流の合理的なアプローチを日本へ「逆輸入」したり、日本で蓄積された豊富な事例を海外に展開したりと、グローバルな知見を活かしてクライアントの課題解決につなげています。
また、国内における人材確保という課題に対応するため、AI活用と並行して、日本企業が安心して海外リソースを活用できる支援も行っています。例えば、インド出身のメンバーが窓口となり、海外リソースを活用するプロジェクトもあり、グローバルな環境が整備されています。
Technology Sourcingセクターでは、入社早期からコンサルタントとしての醍醐味を実感できる環境があります。例えば、運用内容を分析し可視化したうえで、自身でクライアントへ課題提起と改善施策を提案するなど、自然とクライアントとのコミュニケーションと提案の機会が多く得られ、「課題発見から解決策の提案」までの一連のコンサルティングスキルを実践的に磨くことができます。また、その挑戦を後押しし、チームでフォローし合いながら責任を持ってやり遂げる文化が根付いています。ファーストキャリアとして、クライアントの現場の実態を深く理解し、変化に対応するスキルを身につけることで、次のキャリアステップでも活躍できる汎用的な能力が養えます。
アウトソーシング事業は、ビジネスコンサルティング事業、ソリューションコンサルティング事業と連携し、クライアントの変革定着や持続的な最適化による効果最大化に貢献する重要な役割を担っています。また、長期的な顧客基盤と変革のベストプラクティスを活用し、ビジネス拡大も目指しています。
こういったことを目指すにあたり、私たちはクライアントの成功と自社のビジネス成長の両方に情熱を注げる方と一緒に働きたいと考えています。例えば、キャリア入社において、コンサル出身である必要はなく、事業会社のIT部門で課題意識を持ち、多くの企業で変革を実現したい方や、クライアント側で変革を経験・志望する方を歓迎しています。あるいは、クライアント側の立場で変革を経験し、または変革したいという想いを持った方にこそ、活躍していただきたいです。さらに、「クライアントのために」という強い意志を持ち、積極的に学び、最後までやり抜く力が必要です。クライアントへの提案は、社内の他部署とも密に連携し、実現まで責任を負うため、高い責任感と主体的な行動力を発揮できる方を求めています。
クライアントと共に「新しいITの未来」を創り、日本企業の持続的成長を支えるという使命を胸に、共にさらなる価値創出に挑戦していきましょう。