人口減少と市場縮小を背景に、多くの日本企業が海外展開を成長戦略の柱に据えている。しかし、グローバル拠点のマネジメントは複雑で、本社が各拠点の状況をタイムリーに把握するのは容易ではない。
アビームコンサルティングの「製造&商社ソリューションセクター」は、30年以上にわたり培ったSAP導入の実績を基盤とした独自のプラットフォームを武器に、こうした日本企業の課題解決を支援している。セクター長の富田雅樹に、プラットフォーム型ソリューションの真価と今後の展望を聞いた。
執行役員 プリンシパル
インダストリアルクラウドプラットフォームビジネスユニット
製造 & 商社ソリューションセクター長
富田 雅樹
大学在学中にアビームコンサルティングの前身である等松・トウシュロス コンサルティング株式会社に入社し、商社、運輸業、製造業を中心に、戦略策定、経営改革、業務改革、IT改革など多岐にわたるコンサルティングプロジェクトを実施。クライアントの経営課題の本質に踏み込み、実行まで伴走する支援を行う。2023年より、インダストリアル クラウドプラットフォームビジネスユニット 製造&商社ソリューションセクター長として、業界特化型クラウドソリューションの提供をリード。
私たちの使命を一言で表すと、「日本企業、主に製造業と商社が海外市場で真の競争力を発揮するための『見える化』を実現すること」です。
日本の人口減少を背景に海外進出を進める企業は増えていますが、海外拠点のマネジメントが難しく、ガバナンスが効きにくいという課題をもつ企業も多くいます。本社が海外拠点の状況をタイムリーに把握できず、意思決定が遅れるケースも少なくありません。結果として、海外成長戦略が想定通りに進まないなど、企業の成長を阻む要因となることもあります。
一方、海外のグローバル企業は既に先進的な仕組みを構築しており、本社がどの国でも状況を把握できる体制を整えています。日本企業も同様に統一的な経営基盤を整えることが海外市場で真の競争力を発揮する上で重要となります。
私たち製造&商社ソリューションセクター(以下、M&Tセクター)は、こうした課題を解決するプラットフォームを有しています。このプラットフォームは、SAPを中心に構築されており、1995年以来30年以上にわたり培った知見の結晶です。SAP標準機能では対応しづらい日本特有の商習慣にも独自に対応し、より使いやすい形で提供しています。
さらにクラウド技術の活用により、どの国からでも同じデータベースにアクセスでき、各社がサーバーを購入し管理する負担も不要になりました。そして何より、海外拠点の状況をリアルタイムで把握可能です。
現在、このプラットフォームは20を超える国と地域、5つの業種に対応しており、その対応範囲の広さもクライアントから高く評価されています。アジアの新興国から欧米先進国まで、各国の法制度や商習慣に対応しながら、統一されたガバナンス体制を構築できることが、私たちの大きな差別化要因となっています。
外部環境の変化に対応できるグループ経営基盤の構築と、データドリブン経営の実現に対するニーズが高まっています。現在、特にクライアントから期待されているのは、「基幹システムにおける人間の介在をAIで代替・自動化すること」です。
従来は人間が入力処理や判断をしていたプロセスを、AIを導入し人間が介在せずに自動処理できる世界、あるいは判断なくして進められる業務をAIに委ねることへの期待が高まっています。こうした仕組みを個別に開発していくと非常に時間と手間がかかるものを、アビームコンサルティング(以下、アビーム)のプラットフォーム上で標準機能として提供できるよう整備を進めています。プラットフォーム自体を継続的に進化させ、クライアントに持続的な価値を提供し続けることが、私たちのモデルです。
このように継続的に価値を提供するために、約60人の専門チームが常にプラットフォームの改善・機能向上に取り組んでいます。通常であれば各社が大きな工数をかけて対応するソフトウェアのバージョンアップも、当社のプラットフォームでは一括対応が可能となっています。また、インボイス制度のような法改正にも迅速に対応できる点も大きな強みです。
継続的な投資体制を維持している点も私たちの強みの一つです。テンプレートを提供するだけで終わるのではなく、クライアントの利用価値を高め続ける取り組みに力を注いでいます。そのような姿勢がクライアントからの高い評価につながっていると考えています。
さらに現在は、製造業・商社に加えて他の産業にも展開を広げています。私たちは、日本企業が海外進出する際に直面する共通課題を解決し、社会全体の生産性や価値創出に貢献したいと考えています。アビームの多様な業界知見を活かし、プラットフォームの進化につなげることで、クライアントと共に新しい可能性を切り拓いていくことを、引き続き目指していきます。
M&Tセクターの人材育成では、いわゆる「T型人材」の育成を重視しています。幅広い業務知識(横軸)と深い専門性(縦軸)を両立させるために、循環型のキャリアパスを確立しています。例えば、入社初期には、企業全体の業務プロセスを横断的に学ぶため、プラットフォームチームに所属します。基幹システムの構成やデータ活用の流れを体系的に理解することで、その後の成長につながるためです。
その後はプロジェクトに配属され、実践を通じた経験を積んでいきます。さらに、新たな専門性を身につけたい場合には、再びプラットフォームチームに戻り、学び直した上で次のプロジェクトに挑戦します。このような循環的なキャリア構築により、幅広い知識と深い専門性を効率的に習得することが可能です。また、M&Tセクターでは、グローバル案件に携わる機会も豊富に用意されています。年次に関係なく、海外拠点の支援に参加できるチャンスがあり、早期からグローバルな視点を身につけることができます。
さらに、AIをはじめとした最新テクノロジーの検証や導入にも積極的に取り組んでおり、常に最先端の技術に触れながら成長できる環境が整っています。こうした機会を通じて、個人のキャリア形成を支援するだけでなく、一人ひとりが培った業界知見やテクノロジーの知識を社内に蓄積し、それをクライアントへ還元するサイクルを築いているのです。
私たちが提供しているのは、単なる「ソフトウェア」ではありません。クライアントの海外進出や経営成長を支援する業務改革そのものであり、その実現手段としてソフトウェアを活用しています。非効率な業務や顕在化している課題に対して、クライアントと共に「どう解決するか」を考え、確かな業務改革を通じて企業の成長を後押ししています。そしてそのためにも、「クライアントが本当に求めていることは何か、を常に考えるコンサルティングマインド」、「課題解決に直結する提案力と価値創出力」「Real Partner®として最後までやり遂げる責任感」というマインドを持った方と一緒に働きたい。そんな人材を育成し、クライアントと共に新たな価値を創出する未来を築いていきたいと考えています。
日本企業のグローバル展開には、依然として多くの課題が存在します。その一つは「言語の壁」です。しかし、適切な仕組みとサポートがあれば、日本企業は海外市場でも十分に競争力を発揮できます。だからこそ、私たちの仕事には大きな価値があると考えています。
M&Tセクターは、日本企業が真の意味でグローバル化を実現し、海外市場で競争力を発揮するための支援を行います。それは単なるシステム導入にとどまらず、企業の変革に最後まで伴走することです。最終的には、日本企業が自信を持って新たな挑戦に踏み出し、グローバル市場で存在感を高めていくことにつながると考えています。こうしたチャレンジを推進するために必要なのは、新しいことへの好奇心と、グローバル市場への挑戦意欲です。クライアントを導き、業務改善を共に実現するコンサルタントとしての資質も重要ですが、既知のスキル以上にポテンシャルやマインドを重視して採用しています。
英語力についても流暢である必要はありません。しかし、最新のテクノロジーに関する情報は英語で発信されることが多いため、成長のためにも英語での情報収集やコミュニケーションに前向きに取り組む姿勢は欠かせません。
アビームの強みである業界知見や業界アジェンダの深い理解と、最新のテクノロジーを融合させ、最適化したサービス・ソリューションをプラットフォームとして構築し、社会や業界に貢献することがM&Tセクターのミッションです。この使命に共感し、一緒に日本企業の可能性を世界へと広げていきたい方をお待ちしています。