ソリューションコンサルティング事業
Value Chain Excellenceセクター
バリューチェーン専門集団で挑む、企業改革の最前線

「調達困難、製造停止、物流制限、販売不振」ーコロナ禍や地政学的リスクの影響により、企業のサプライチェーンは未曽有の課題に直面している。こうした変化の最前線で、バリューチェーン全体の改革を通じて企業価値向上を支援するのが、アビームコンサルティングのValue Chain Excellenceセクター。約600名のコンサルタントを擁し、変革を推進する国内最大規模の専門組織を率いる結城淳一セクター長に、激動するサプライチェーンの現状とこれからのコンサルタントに求められる姿について聞いた。

プリンシパル
エンタープライズトランスフォーメーションビジネスユニット
Value Chain Excellenceセクター長

結城 淳一

アビームコンサルティング入社以来、サプライチェーンおよびバリューチェーン改革の専門家として、グローバル製造業を中心に数多くのプロジェクトを牽引。販売・物流・需給・生産・調達など、サプライチェーン・バリューチェーン全体にわたる業務の高度化を推進し、構想策定から実行支援まで一貫した価値提供を実現してきた。多様なソリューションを駆使し、現場と経営をつなぐ実践的なアプローチに定評があり、企業のバリューチェーン全体の変革を支援している。

現場にこだわる600名の専門集団で、社会価値向上に貢献

Value Chain Excellenceセクター(以下、VCEセクター)は、企業のサプライチェーンやエンジニアリングチェーンを中心とした「バリューチェーン改革」を専門とする組織です。現在、600名を超えるコンサルタントが在籍しており、日本のコンサルティング業界では屈指の規模を誇ります。

私たちが掲げるミッションは「経済価値・顧客価値・社会価値向上につながるバリューチェーン改革の実現」、そして「企画・構想に留まらず現場に深く入り込み、クライアントの変革を共に実現する」ことです。つまり、単なる改革案の提示ではなく、実現までクライアントに寄り添い支援することを重視しています。

その中で特に私たちが注力しているのは、デジタル技術を活用した変革の実現です。もちろんデジタルだけが解決手法のすべてではありませんが、業務プロセスの再設計や組織変革と組み合わせることで、クライアントの「真の変革」を構想から実現まで一気通貫で支援する体制を構築しています。

現在の事業環境を俯瞰すると、クライアントを取り巻くサプライチェーンリスクは極めて高まっています。パンデミックによる需給バランスの急変、国家間の対立によるサプライチェーンの複雑化、半導体の調達課題、グローバル物流の不安定化、サイバーセキュリティリスクの増大、自然災害など、様々な外的要因が企業活動に影響を与えています。

こうした状況下において、クライアントは「調達困難、製造停止、物流制約、販売不振」といった課題をそれぞれ抱えており、さらに強靭かつ柔軟なサプライチェーン体制の構築が急務となっています。従来の効率性重視モデルから、突発的な変化にも対応できる新たな体制への転換が求められる時代になっているのです。

VCEセクターでは、こうした変化に対応するため、サプライチェーン各機能の稼働状況をリアルタイムで可視化するシステム構築、サプライチェーンの多重化・複線化といった抜本的な再編、そして迅速な対応・意思決定を可能とする組織改革まで、クライアントのレジリエンス強化に向けた施策を全社レベルで支援しています。

「物流制約リスク」から「戦略的S&OP」まで、多層的な課題解決へのアプローチ

現在、私たちのクライアントが直面しているサプライチェーン課題の中で、特に深刻化しているのが「物流制約リスク」です。いわゆる「物流の2024年問題」として知られる課題で、人手不足や法規制の変化により、製造した商品を顧客に届けることが困難になるリスクが、現実のものとなりつつあります。

この課題に対して、私たちは単に物流手段を増やすという発想ではなく、ロジスティクス全体を俯瞰的に捉え、需給調整の観点からアプローチしています。具体的には、運搬量を適切にコントロールし、不要な配送や過剰在庫を削減することで、限られた物流リソースを最大限に活用できるよう、サプライチェーンネットワーク全体の最適化を図っています。

さらに重要なのは、従来のコスト削減中心のサプライチェーン改革から、利益創出を目的とした改革への転換です。これまでのサプライチェーン改革はどちらかというと、数量ベースでの最適化が中心でした。しかし、在庫を削減しても売上が伸びず、結果的に利益が出ないケースも多く見受けられました。

そこで私たちが注力しているのが「戦略的S&OP(Sales & Operations Planning)」の推進です。利益も含めて計画段階で可視化しながら、どの商品を、どの拠点で製造するのが最適かを判断できる仕組みを構築しています。従来は経験則や勘に頼っていた意思決定を、プロセスの可視化によってシミュレーション可能な状態にすることが重要です。
具体的な事例として、グローバル展開する機械メーカーでは、拠点ごとに統合されていなかった業務プロセスやシステムを標準化し、グローバル全体で連動する仕組みを構築しました。需給連動から製造、物流、販売まで、共通の仕組みによって各機能を連携させることで、サプライチェーンの非効率な部分を大幅に改善するグローバル需給改革を実現しました。

また、食品メーカーではさらに改革を深化させ、部門ごとに保有していたデータを統合して一元管理し、調達・生産・物流・営業などの情報を連動。数量ベースだけでなく、品目ごとの利益計画を行うS&OPプロセスの導入を実現しました。

人と技術の共創による次世代サプライチェーン

また、高度なデータ活用技術やインテリジェントシステムを活用したサプライチェーンの変革にも着目しています。これまでは需要予測の精度向上が中心でしたが、最新技術では、販売や調達といった社内データも含めて自律的に組み合わせ、最適な業務プロセスを提案できるまでに進化しています。

現在、アビームコンサルティング(以下、アビーム)社内でも、業務プロセスの専門チームと技術チームが連携しながら、サプライチェーンと最新テクノロジーを掛け合わせた新しいサービスのあり方を研究・開発しています。このサービスの実現化によって、私たちだけでなく、他社も巻き込んだ競争が活発化し、結果として日本企業や製造業全体の強化に貢献できるでしょう。

また、持続可能なサプライチェーンの実現も重要なテーマです。例えば脱炭素の実現に向けたカーボン使用量の見える化など、環境・社会課題の解決にも積極的に取り組んでいます。

私たちの組織では「販売物流」「調達・購買」「生産(エンジニアリングチェーンを含む)」「需給管理」「設備管理」の五つの領域に専門性を分けつつ、AI、戦略的S&OP、脱炭素といった新しいテーマについては、領域横断型のチームを編成しています。これにより、従来の領域の枠を超えた革新的なソリューションの開発が可能となります。

現場の制約を理解し、実現可能な改革を追求する人材育成

これまで数々の課題を解決してきたVCEセクターですが、その要因の一つは、現場での経験を重視した人材育成体制にあります。コンサルタントが最も成長するのはプロジェクトでの経験ですが、アビームではプロジェクト経験だけにとどまらない成長の機会があります。

前段で伝えた通り、VCEセクターは五つの専門領域にチームが分かれていますが、月に1~2回の頻度で全体会を開催しています。そこでは、進行中のプロジェクト事例や先端サービス事例の共有、新しい技術動向の紹介などをメンバーが行い、担当外のプロジェクトからも学びを得られる機会を提供しています。

また、実際のものづくりの現場を知ることも、育成の重要な要素としています。若手社員には、工場や倉庫の現場を見学する研修を毎年実施しています。例えば、自動倉庫や製造業の工場の見学などを通じ、論理だけでは語りきれない、現場にいるからこそわかる実際の業務やものの流れの仕組みを自身の目で確かめることで、より実現可能性の高い提案ができるようになります。

サプライチェーンのコンサルティングは、本を読んだだけでは身につかない分野です。現場で実際にどのようにものが作られ、最終消費者に届けられているのか、その中でどのような課題があるのかを、実際に自分の目で見て、様々な業務プロセス改革に携わった経験の深さが、コンサルタントとしての成長を大きく左右します。

また、私たちのクライアントの多くは、グローバルにも展開する日系企業が多く、製造業から商社、小売まで幅広い業種の課題に触れる機会があります。多様な業種における難易度の高い大規模プロジェクトで経験を重ねることで、いかなる課題に対しても柔軟に対応ができるサプライチェーンコンサルタントとしての成長につながると考えています。

また、メンバーのキャリア支援については、定期的にカウンセラーとの面談を行い、中長期のキャリアプランをカウンセラーと共に検討することで一人ひとりの成長を促しています。「調達・購買領域の案件をやっていたが、次は生産管理領域にもチャレンジがしたい」「システム構築案件に関わっていたが、より戦略的な構想案件に携わりたい」といった希望を丁寧にヒアリングし、セクター内での担当案件を調整しています。

サプライチェーンの改革は、決して終わることのない企業が向き合う課題であり続けると思います。だからこそ、この分野で働く面白さがあると思い、長くこの領域のコンサルタントとして貢献し続けることができました。デジタル技術の活用によりモノづくりのプロセスが可視化され、改革の成果が、目に見える形で現れる。そして、日本がかつて製造立国として世界をリードしていたように、サプライチェーンの改革を通じて、再び日本企業がグローバルでプレゼンスを発揮できるようになる。そんな社会変革に貢献できることが、この仕事の大きなやりがいです。

この可能性を多くの皆さんと共に実現するべく、パラダイムシフトの最前線に立ち、社会変革につなげていきたいと考えています。