データドリブン経営、ペーパーレス化、タレントマネジメントなど、企業のコーポレート部門を取り巻く環境が急速に変化する中、アビームコンサルティングは新たな挑戦に踏み出している。エンタープライズトランスフォーメーションビジネスユニット Business & Management Enablerセクターは、従来分かれていた「会計・財務・経営」領域と「人材・組織」領域のコンサルティング部門を統合し、コーポレート部門全体の課題を横断的に解決する専門組織である。このセクターを率いる久保田昌紀セクター長に、コーポレート部門が今求められていることと、そして組織が目指す未来について話を聞いた。
プリンシパル
エンタープライズトランスフォーメーションビジネスユニット
Business & Management Enablerセクター長
久保田 昌紀
2001年に新卒でアビームコンサルティングに入社。財務会計・管理会計領域を中心として製造業、商社、金融、社会インフラ、公共分野など幅広い業態に対し、戦略立案、業務プロセス改善、大規模ERP導入などのコンサルティングおよび会計関連サービスを多数実施。特に難易度の高い基幹システム構築におけるマネジメントを得意としている。その後、エンタープライズトランスフォーメーションビジネスユニット Business & Management Enablerセクター長に従事。
Business & Management Enablerセクター(以下、BMEセクター)は、「会計・財務・経営」領域と「人材・組織」領域という二大領域を横断的に支援する専門組織です。人事部、経理部、財務部、経営管理部といったコーポレート部門が抱える課題に対し、幅広い支援しています。
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAIの進展により、あらゆる業務の自動化が進む中で、コーポレート部門にも従来の縦割りを超えた一体的な運営が求められています。例えば、コーポレート部門が行う分析を現場でどう活かすか、あるいは現場の取り組みを数字にどう反映させるかといった、「人とデータの橋渡し」が不可欠となっています。BMEセクターは「会計・財務・経営」領域と「人材・組織」領域の双方に精通する立場から、このような橋渡しを実現し、データドリブン経営の推進を支援しています。また、現時点では「会計・財務・経営」領域と「人材・組織」領域としていますが、将来的にはその他のコーポレート部門に対しても面で対応できる組織へ成長させていきたいと考えています。
BMEセクターが取り組む「会計・財務・経営」と「人材・組織」領域では、いずれも大きな変革ニーズが顕在化しており、ビジネスニーズが急速に高まっています。まず「会計・財務・経営」領域においては、会計基準の変更や法改正への対応が主要なテーマとなっており、これらへの対応プロジェクトが多くを占めています。なかでも特に注目されているのが、「新リース基準」への対応です。クライアントからは「業務プロセスをどのように変更するべきか」「既存システムをどのように修正すればよいか」といったご相談が多く寄せられています。法改正のタイミングに合わせたプロジェクトの需要は、今後も確実に増えていくと考えられます。
一方、「人材・組織」領域では、タレントマネジメントシステムの活用に関する課題が目立ちます。多くの企業ではSaaS型のタレントマネジメントシステムを導入していますが、「名前と顔は登録されているが、活用しきれていない」というケースが少なくありません。そのため、戦略的な人材活用を実現するために、システムをどのように活用するかという観点での提案が求められており、案件化も進んでいます。また、給与計算業務のアウトソーシングも大きなテーマのひとつです。従来は人事部門で内製していた業務を外部に委託し、効率化を図りたいというニーズが増えています。「どこまでを外部委託すべきか」「共同でシステムを構築できないか」といった検討は、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。
さらに、近年ではペーパーレス化の波がコーポレート部門全体に広がりを見せています。経費精算に関する領収書の電子化は比較的取り組みやすく、既存ソフトウエアの導入で対応可能ですが、契約業務のペーパーレス化となると話は別です。営業現場から契約管理部門、さらには経営陣による承認プロセスに至るまで、業務プロセス全体の見直しが必要となります。このように、社会の変化に伴い複雑化・高度化するコーポレート部門の課題に対し、BMEセクターは部門横断での支援を通じて、持続的な変革の実現に貢献しています。
多様化するコーポレート部門の課題に対し、アビームコンサルティング(以下、アビーム)が提供する最大の価値は、業務とシステムの両面から支援し、変革の全プロセスにわたって伴走する「一体型の変革支援」にあります。
「会計・財務・経営」や「人材・組織」といった領域では、精度やルール、基準といった共通の枠組みに基づく業務が多く存在します。アビームには、これまでの支援の中で培ったテンプレートやナレッジを多数保有しています。しかし、それだけではなく、「なぜ新しいシステム導入が必要なのか」「業務をどう実現するか」「システムをどう構築・変更すべきか」「弊社が持つシステムソリューションをどう活用すべきか」といった上流の戦略立案から実行・定着まで、クライアントと共に考え、実行していく点が、アビームならではの支援スタイルです。さらに、私たちはシステム導入後のフォローアップにも責任をもっています。実際、「他社に依頼して導入したシステムがうまく稼働していない」「運用面で課題が発生している」といったご相談をいただき当社が支援に入るケースも少なくありません。アビームは、導入支援から実際の運用までを経験しているからこそ、「なぜそのシステムが活用されていないのか」「どこに使いづらさがあるのか」といった根本的な課題を見極め、的確な改善策を提案することができます。
また、アビームには、テンプレートやソリューションの維持・改善を担う「オペレーショナルエクセレンス ビジネスユニット」があり、私たちのチームと密に連携しています。例えば、「新リース基準」への対応が求められる中で、同ユニットから寄せられる現場の声や、社会動向をもとに案件の増加を見越し、私たちは先行してテンプレート整備を進めてきました。これにより、クライアントの変革スピードに応える体制を整えることができています。このように、社会や業界の変化を先取りし、迅速かつ実効性のある支援を提供できる体制こそが、アビームの大きな強みです。
BMEセクターで働く魅力のひとつは、多種多様な業界・業種の案件に携われることです。「会計・財務・経営」や「人材・組織」といった領域はすべての企業にとって不可欠であるため、製造業、商社、金融など幅広い業界の課題に取り組むことができます。私自身も、ほぼすべての主要業界を経験しており、それぞれに異なる学びと面白さがあることを日々実感しています。また、案件獲得の段階からクライアントへの提案、そして実行フェーズまでエンド・トゥ・エンドで一連のプロセスを経験できる点も大きな特徴です。「どのような課題が案件化するのか」「どうすれば効果的な提案につながるか」といった判断基準を若手のうちから学べるのは貴重な経験になるはずです。
BMEセクターでは人材育成も重視しています。トップダウン形式ではなく、チームで考え抜くプロセスを大切にしており、年次関係なく、若手のうちから「クライアントに何を提案すれば、他社と差別化できるか」を主体的に考え、提案活動にも積極的に参加できる環境を整えています。こうした取り組みを通じて、総合的なコンサルティングスキルを磨くことが可能です。さらに、BMEセクターでは、稼働時間の一部を常に未来への投資に充てています。例えば、管理職クラスでは稼働時間の10%~20%を投資活動に割き、会計基準の最新動向調査やAIを活用した会計ソリューションの研究、新たなサービス開発などに取り組んでいます。コンサルティング業務と並行してこのような活動に取り組むことで、常に最新の知識とスキルを備えた状態で、クライアントにより良い価値を提供できる体制を構築しています。
だからこそ私たちは、案件をこなすだけではなく、自ら積極的に知識を吸収し、学びをアウトプットに還元できる方と一緒に働きたいと考えています。つまり、「クライアントへ提供する付加価値を最大にするために、自己投資に時間を使いこなせること」がメンバーに最も求める資質です。
私たちが目指すのは、「強いコンサルタント」です。時には、クライアントに対して「NO」と伝える勇気を持つことも、プロフェッショナルとして必要だと考えています。クライアントの「真の成長と変革」のために何が必要かを常に考え、実行に移せる人を歓迎します。従来のやり方が本当に最善かを問い直し、クライアントや社会の持続的成長に貢献する。その信念と、それを裏打ちする知識・スキル・経験こそが、AIには代替できない、私たちだからこそ提供できる価値です。