金融業界は今、かつてない変革期を迎えている。急激な外部環境変化から改革が迫られる金融業界に対し、エンタープライズトランスフォーメーションビジネスユニットのFinancial Service & Transformationセクターでは、企業変革を実現するためのビジネス・システム全般にわたるソリューションを企画・提供し、金融に関する知見、プロセス、テクノロジーの各軸における専門性の総合、変革構想から実現までを支援している。「金融機関・金融サービスの変革を通じ、より良い社会と未来を創造する」をミッションに掲げるFinancial Service & Transformationセクターの高田望セクター長に、金融コンサルティングが提供する価値について聞いた。
プリンシパル
エンタープライズトランスフォーメーションビジネスユニット
Financial Service & Transformationセクター長
高田 望
2004年アビームコンサルティングにキャリア入社。リース会社向け基幹システム更改プロジェクト、銀行向け規制対応高度化、グローバル標準化、新技術PoC支援、開業支援アドバイザリー、当局要請GAP分析、グローバルシステムロールアウト支援などのプロジェクトに従事。2019年より2年間、金融庁総合政策局へ出向。専門領域は金融犯罪対策・AML(マネーローンダリング対策)、当該領域のビジネスリードを担当。2025年4月より、エンタープライズトランスフォーメーションビジネスユニット Financial Service & Transformationセクター長を務める。
金融業界は地殻変動の最中にあります。デジタル技術の発展と顧客ニーズの変化による送金や決済サービスの多様化・暗号資産の普及・AI活用の加速、地政学リスクの高まり——こうした変化の中で、私たちのクライアントである大手金融機関は、複雑な経営課題に直面しています。私たちFinancial Service & Transformationセクター(以下、FSXセクター)は、銀行・証券、保険、ノンバンクファイナンス(リース会社など)の3業種を中心に、金融業界向けのコンサルティングサービスを提供しています。アビームコンサルティング(以下、アビーム)の中でも、経営改革、DX推進、実行支援といった中核事業を担っていると自負しています。
金融は社会インフラそのものです。全産業のビジネスや一人ひとりの生活の基盤となるからこそ、単純な売上拡大だけでなく、規制業種としての社会的責任も同時に果たさなければなりません。金融業界へのコンサルティングの難しさと面白さはこの点にあると考えています。また、金融業界は、ビジネスプロセス・システム改革、組織変革を並行するなど、複雑な対応を求められることが多いのが特徴です。変革のフェーズが多岐に渡るケースも多くあり、戦略立案から実装・運用まで、一貫した支援が不可欠です。私たちは、戦略コンサルティング事業に属している金融ビジネスユニットが創出したアジェンダを受け継ぎ、経営改革の企画・実現までを伴走し、運用支援をオペレーション事業へ引き継ぎます。このバトンの受け渡しによって、構想から企画・実現、実現から運用まで切れ目のない価値提供を、コンサルタント一人ひとりの高い専門性を武器に推進しています。
一口に「金融業界」といっても、私たちが向き合う銀行・証券、保険、ノンバンクファイナンスでは、それぞれ置かれている状況が大きく異なります。
銀行・証券業界では、長期の超低金利環境から脱却し、「金利が存在する市場」が再び到来しました。銀行では預金獲得競争が再燃し、証券業界では金利変動に伴う投資行動の変化が収益構造に影響を与えています。どちらの業界も、環境変化に対応したビジネスモデルの見直しが求められています。
保険業界においては、生命保険分野では長寿化やライフスタイルの多様化、損害保険分野ではテクノロジーの進展や人口減少の影響を背景に、保障ニーズの変化に対応した商品設計や保険サービスの高度化が求められています。こうした環境変化を捉え、生損保両分野において持続可能な成長に向けた戦略的な転換が急務となっています。
ノンバンクファイナンス業界、特にアビームでの注力分野であるリース業界では、従来のリース事業から事業会社としての性格を強める方向へと収益構造も大きく変化しています。現在では、不動産ビジネスや環境・エネルギー関連事業が主要な収益源となっており、特に再生可能エネルギーや省エネ設備への投資が活発化しています。また、資源循環を前提としたサーキュラーエコノミーの概念が注目されており、持続可能性を重視した新たなビジネス機会の創出が期待されています。
これらの業界に共通するのは、急速に進行する外部環境の変化に対応しながら、持続的な成長機会を創出するという複雑かつ多層的な経営課題に直面しているということです。各業界とも、新規事業創出・既存事業の収益性向上・経営基盤の強化という観点で戦略的アプローチが求められています。さらに、国際的な基準や監督当局が求める規制への対応も並行して取り組む必要があります。私たちが手がけるのは、こうした複雑な経営課題に対する包括的な変革支援です。
他社との差別化要因の一つは、アビームが大切にしている「チームで最大の価値を発揮する」ことだと感じています。
複雑なクライアントの経営課題や要求事項・プロジェクトの特性に応じて、社内から最適なメンバーを集めてチームを編成します。これにより、金融実務に詳しいメンバー、先端技術や動向に詳しいメンバー、高いプロジェクトマネジメントスキルを持つメンバー、海外展開を支援してきたメンバーなど、各メンバーの得意分野を活かし、連携した体制でクライアントに価値を提供しています。
戦略コンサルティング部門に属する金融ビジネスユニットがアジェンダの創出を担い、私たちFSXセクターがその実装や拡大を担当するなど、戦略立案にとどまらず、事業展開やシステム導入といった実行フェーズまで、長期的かつ一貫した支援を提供している点が特徴です。さらに、私たちが重視しているのはクライアントからの「継続意向」、すなわち「アビームに引き続き依頼したい」と評価をいただくことです。短期的な売上よりも、長期的な信頼関係を通じて、Real Partner®としてクライアントの変革に伴走することを大切にしています。
FSXセクターで働くことで得られる価値として、私は常に三つのポイントをお伝えしています。
まず一つ目は、金融業界に対する専門性を早期に身につけられることです。金融は規制業種であり、業界特有のルールや考え方があります。日本を代表する金融機関へのコンサルティングサービスの提供を通じて、実践的な知見を幅広く習得できます。
二つ目は、グローバル案件に携わる機会が豊富であることです。日系金融機関の海外ビジネス拡大に向けた業務やシステムの導入・改革支援や、各種リサーチ支援、統制強化・標準化などの高度化・効率化(BPR)支援など、国際的なプロジェクトに広く関与できます。海外拠点への人材輩出や、海外拠点メンバーとの日常的な連携を通じて、クライアントに対して「面での支援」を実現している点は、当社ならではの強みです。
三つ目は、アジェンダ創出を担っている金融ビジネスユニットとの距離が近いことです。ともに、金融固有の専門性を持つメンバーが所属しており、かつて同じ組織だった背景もあり、現在も密に連携しています。戦略コンサルティングに関心のあるメンバーにとっては、実際のプロジェクトを通じてその領域に触れ、将来的なキャリアの選択肢を広げることができます。メンバー一人ひとりの志向を尊重する文化が根付いています。
また、自らの専門性を見定めていくプロセスも、FSXセクターの特徴です。特に若手のうちは多様なプロジェクトに携わることで、自分がどの領域で専門性を深めたいかを見極められます。私自身も、ある小さなプロジェクトでの出会いをきっかけに、「金融犯罪対策」という専門領域を志すようになりました。
繰り返しになりますが、金融は社会のインフラであり、全産業のビジネスと、一人ひとりの生活の基盤です。この普遍的な価値を持つ領域で、より良い社会と未来を共に創造していきましょう。