1つ目の「コスト回避」はDSFを需要家への電力供給におけるコスト削減に活用する方法である。
この方法には、①「託送料金削減」と②「卸電力市場・バランシング市場」の2種類がある。これらの方法では需給の前日もしくは当日の電力需要および市場価格に基づきDSF創出の判断をする。
①については電力需要が契約デマンド(kW)を超過する恐れがある場合に、DSFにより需要を抑制することで託送料金の基本料金上昇を回避する。
②については電力卸市場やバランシング市場の時間別価格のボラティリティ(変動性)を活用し電力量(kWh)調達コストを削減するだけでなく、アービトラージ取引(裁量取引)による収益獲得も可能となる。
一方、2つ目の「収益獲得」はDSF創出について事前に提供先であるTSO(送電事業者)やDSO(配電事業者)と事前に契約し、発動指令に基づきDSFを創出することで収益(インセンティブ)を獲得する方法である。
この方法には、③「アンシラリーサービス(需給調整市場)」、④「容量市場」、⑤「DSOサービス」の3種類がある。
③については、TSOが需給調整において必要となる調整力(ΔkW)を提供、④については、容量市場において必要となる供給力(kW)を提供することでそれぞれインセンティブを獲得する。
⑤については、DSOにおいて電力需要増大に伴い配電設備を増強する代替手段として、DSFを提供することで設備投資を回避もしくは延期することでDSOからインセンティブを獲得する。最も市場整備が進んでいる英国では⑤の活用が2019年より商用化しており、複数のDSOにおいて既に活用されている。
すでに国内市場においてもDSF活用の市場整備は進みつつある。
①、②については電力小売と組み合わせることで提供は可能である。
③については既に調整力公募として既に活用されており、2021年より需給調整力の整備により段階的に活用できる市場環境が整備されていく。
④については2020年の容量市場で既にアグリゲータによる落札実績があり、2024年より利用される見通しである。
⑤についても2022年より施行されるエネルギー供給強靭化法に基づく託送料金制度の変更に伴い今後送配電事業者においてDSFの活用が検討されていくと想定される。
しかし、現時点の国内市場ではこれらのDSFは電力小売とは基本的に別のサービスとして提供されており、統合されていない。
今後エネルギーバリューチェーンにおける課題を解決するためには、既存のエネルギー小売事業者においてDSFの積極的な活用によりエネルギーバリューチェーンを変革することが必要となると考えられる。
特に重要なテーマは以下の2点と考える。
1)「電力小売+DSFスマートバンドリング」によるビジネスモデル変革
2)再エネ電源とDSFとの統合による「エネルギーコミュニティ」構築
次回以降のインサイトではDSFを活用した2つのエネルギーバリューチェーン変革の方向性について解説していく。