投資効果の判断には、投資コストと投資に対する効果をグループ一律の定義とプロセスで定期的に繰り返し可視化し、評価した情報が必要になる。しかし、住友商事では、そのための体系立てられた仕組みがなく、グループ全体で短期・中期的なITコストをつかむことができていなかった。さらに、定常的な効果測定や評価も行われておらず、システムの保守期限切れなどに伴う大規模な投資を事前に把握しきれていないなどの課題もあった。
そこで住友商事では、ITの専門家ではなく、経営者の目線で投資効果を評価し、それを継続していくことで戦略的なIT投資を実現していこうと考えた。「評価の仕方に正解はないですし、まずは始めることが大切だと着手することにしました。総合商社というビジネスモデルは特殊で、国内だけでなく、世界的に見てもベンチマークはほぼ存在しません。参考にできる手法があるわけではないので、自分たちで評価の仕方を決めて、それをチューンナップしていくことにしたのです」(塩谷氏)。
グループ連結経営の住友商事は単体で5000人以上、連結ベースでは7万8000人の従業員がおり、900社を超えるグループ会社全体で売上を上げている。そのため、ITコストを可視化する対象として住友商事単体のみでは一部でしかなく不十分で、グループ会社を対象とする必要がある。一方で、住友商事がグループ会社に広く共通的なシステムを提供している場合もある。それらを整理して、ITコストの可視化と投資効果を評価するために、まずIT企画推進部が可視化・分析できる範囲から始めて、グループ全体に広げていくことにした。
その方針を決めた住友商事では、総合商社の業態に詳しく、住友商事の事業やITシステムに知見を持ち、深く理解していることを要件に、プロジェクトを共に担うパートナーを選ぶことにした。IT投資効果評価には詳しくても、総合商社のビジネスへの理解が深くないコンサルティングファームでは、定式化された基準やフレームワークの適用に労力を費やす上、型にはまった評価になってしまう可能性がある。そのやり方は住友商事の本意ではなかった。
そこで住友商事のビジネスへの深い知見を持っており、企業や組織の枠を超えた社会課題解決を目指す共創パートナーでもあるアビームを選定した。「アビームには以前から様々なプロジェクトを支援してもらっていました。例えば、連結経営管理システム構築プロジェクトやグループ基幹システム構築プロジェクトなどです。そうした経験から総合商社の業態、そして住友商事グループのビジネスと業務、ITを深く理解しており、当社の実態に即し、運用可能な評価指標を作りたいという今回の目的を達成できるのは、アビームしかいないといっても過言ではないと思います」(塩谷氏)。