M&A後のPMIは、企業を「統合する」だけの仕事ではありません。戦略・組織・人事・財務・業務・ITまで企業経営を横断しながら、M&Aで描いた成長やシナジーを実際の変革へつなげていく。その過程では、コンサルタント自身も幅広い経験を重ねながら、専門性を磨いていくことができます。
アビームコンサルティングのCorporate Finance & Transformation Strategy UnitでPMI/Carve-Out Offeringを率いる松浦さんと、2019年に新卒でアビームコンサルティングに入社した福本さん。幅広い業界・テーマのプロジェクトを経験した後、自らCorporate Finance & Transformation Strategy Unit への異動を選択しました。Senior ConsultantとしてPMIプロジェクトのクライアントマネジメントや提案にも挑戦し、任された仕事をやり切る側から、自ら仕事をつくる側へと役割を広げ、2025年にManagerへ昇格しました。「できるようになってから任せる」のではなく、一段上の仕事を任せ、チームで支える。二人の対話から、PMIで専門性を築くおもしろさと、年次や肩書にとらわれず挑戦できるCorporate Finance & Transformation Strategy Unitの成長環境に迫ります。
Big4 FAS、外資系コンサルティングファームのM&A部門における執行役員を経てアビームコンサルティングに参画。PMI・Carve-Outを専門に、M&A戦略から統合・分離、さらにその先の企業変革まで一気通貫で支援。CxOと現場の双方に向き合い、戦略を実行・成果につなげる変革を数多く主導してきた。経済産業省「PMI支援実証事業」への参画や、調査レポート、講演等を通じたPMIの高度化・普及にも取り組む。現在はPMI/Carve-Out Offeringを率い、案件のデリバリーに加え、若手の育成やオファリング開発、組織づくりを推進している。
2019年に新卒でアビームコンサルティングに入社。複数の業界・テーマにおけるプロジェクト経験を経て、自らCorporate Finance & Transformation Strategy Unitへの異動を選択。現在はPMIプロジェクトに加え、提案活動、オファリング開発、採用、情報発信などを推進。2025年、Managerに昇格。
福本さんは、最初からPMIやM&Aを専門にしていたわけではないそうですね。
新卒で入社した当初は、特定の業界やテーマに強いこだわりはありませんでした。むしろ、知らない業界や新しい知識に触れることが楽しく、様々なプロジェクトに夢中で取り組んでいました。
その中で、限られた時間で情報を構造化し、メッセージを磨き、短期間で価値を出す力は鍛えられました。一方、幅広い案件を経験するほど、「自分は何の専門家なのか」という問いも大きくなっていきました。
短期間で成果を出すだけではなく、一つのクライアントに長く向き合い、信頼関係を築きながら大きな成果を残したい。瞬発的な価値貢献と、長期的な信頼に基づく価値貢献の両方ができるコンサルタントになりたいと考えるようになりました。
福本
短期間で価値を出す力に加えて、クライアントに長く向き合いながら、成果が生まれるところまで関わりたいと考えるようになったわけですね。
その点で、Corporate Finance & Transformation Strategy Unit(以下、CF&T SU)のPMIチームは福本さんが目指していた働き方と相性がよかったのだと思います。M&Aという一つの経営イベントを起点に、戦略だけでなく、組織、人事、財務、業務、ITまで幅広いテーマに関わりながら、統合後の変革まで長くクライアントに伴走する。一つの機能に閉じず、経営全体を見ながら自分なりの専門性を培えることも、PMIチームの特徴です。
松浦
CF&T SUのPMIチームに異動して、どのようなところに仕事のおもしろさを感じていますか。
PMIは、戦略コンサルタントの仕事のおもしろさが、最も分かりやすく形になる領域だと感じています。
戦略コンサルタントは華やかに見えるかもしれませんが、実際にはどこまでも裏方です。それでも、M&Aや統合の結果をメディアや街で目にしたとき、「この変革の裏側に、自分もいた」と思える。そこには大きな誇らしさがあります。
それにPMIでは、戦略を描くだけでなく、組織、業務、人材、システムが実際に変わるところまで見届けられる。そこに大きな魅力を感じています。
福本
CF&T SUのPMIチームに異動してから、成長の転機になった出来事はありますか。
当時のプロジェクトで、心から尊敬していたManagerが海外赴任のため第一線から離れたことです。
私はまだSenior Consultantで、重要な会議の前には、自分の考えが確からしいか、経営の視点に耐え得るかをManagerに確認していました。それが突然できなくなり、十分な助走もないまま、自分がクライアントの前に立つことになりました。
一番怖かったのは、自分が正しい方向へ進めているのか分からないことでした。判断を誤れば、会議だけでなくプロジェクト全体の方向を誤るかもしれない。正直、自信はほとんどありませんでした。
そこで、まず準備の量を徹底的に増やしました。起こり得る論点や質問、その背景、会議で何を意思決定してもらう必要があるのかまで細かく考える。それでも自信が持てないときは、プロジェクト外の先輩にも「この考え方でよいか」「ロジックに抜けはないか」と壁打ちをお願いしました。
そこで気づいたのが、一人でクライアントの前に立つことと、一人だけの力で戦うことは違うということです。
会議で前に立つのは自分です。でも、その背後には先輩やチームメンバー、別チームの社員まで多くの人がいて、背中を押してもらいながら、毎回クライアントの前に立っていました。
毎回必死でしたが、振り返ると、初めて「任された仕事を、自分で動かせた」という感覚を持てた時期だったと思います。
福本
ここは、私たちのCF&T SUとしての育成の考え方にもつながります。
若手に任せることは、一人で放り出すことではありません。できるようになってから任せるのではなく、少し背伸びをすれば届く仕事を任せる。その挑戦を通じて、一段上の役割を担えるようになる。一方で、任せた以上、最終的な責任はPrincipalやManagerが持ちますし、必要な専門家も含めて後ろから支えます。
福本さんも、そうした経験を積み重ねながら、少しずつ役割を広げていったのだと思います。
松浦
その後、プロジェクトはPMIからPMT(Post Merger Transformation)へ発展したそうですね。
私たちは、統合を終わらせること自体をゴールにはしていません。M&Aで描いた成長やシナジーを実現するために、統合後の組織や業務、経営の仕組みまで変革していく。PMIのその先まで踏み込み、M&Aを企業価値につなげていく取り組みをPMT(Post Merger Transformation)と捉えています。
Day1はゴールではなく、通過点です。M&Aで描いた戦略が本当に組織や業務に落ち、企業価値につながるのはその先。だから私は、PMIは「変革の本番」だと思っています。
ただ、最初から経営変革を自由に提案できるわけではありません。目の前の難しいPMIをやり切り、経営と現場を理解して信頼を得る。その積み重ねがあるからこそ、「次の経営を一緒に考えましょう」という関係へ進めます。
松浦
福本さん自身は、PMTへ発展する中で、仕事の見え方にどのような変化がありましたか。
大きく変わったのは、目の前の統合課題だけではなく、その先にある経営のOutcome(成果)を見るようになったことです。
PMIでは、組織、人事、経理、業務、ITなど、多くの課題が同時に発生します。ただ、それぞれを処理するだけではM&Aの目的は実現できません。「この課題は統合後の経営にどう影響するのか」「複数の問題の背後にどんな構造があるのか」と、視座を上げて考えるようになりました。
目の前のPMIを確実に前へ進める中でクライアントとの信頼関係も深まり、相談されるテーマも「統合を今後の成長にどうつなげるか」「統合後の経営管理をどう変えるか」へ広がっていきました。
福本
実際に変革を実感した瞬間はありましたか。
自分たちが描いた構想が、実際の組織として動き始めた瞬間です。
統合後の組織体制や意思決定プロセスについて、PowerPoint上で何度も線を引き直しました。資料の上では一本の線ですが、その先には多くの社員の仕事やキャリア、人生があります。だから、きれいな組織図を描くだけでは終われません。
PowerPoint上で何度も引き直した一本の線が、実際の組織となり、会社の動き方を変えていく。
若いうちに経営と現場の両方に向き合い、自分たちが考えたものが現実になっていく経験は、コンサルタントキャリアの大きな糧になると感じています。
福本
プロジェクトで得た経験は、その後の提案活動にもつながったそうですね。
はい。現場で得た気づきを、その案件だけで終わらせず、ほかのクライアントにも価値として届けられないかと考えるようになりました。
そこで、現場で捉えた課題をPMTという支援テーマに整理し、松浦さんへ提案を持っていきました。でも、何度も突き返されました。
「クライアントがすでに知っていることを並べているだけではないか」
「この提案で、経営にどんな成果が生まれるのか」
「なぜ私たちが価値を出せるのか」
修正しては持っていき、また打ちひしがれる。何度か、「もう正解を教えてほしい」と思いました。
それでも、松浦さんは簡単に答えを教えてはくれませんでした。何度やり直しても、最後まで私に考えさせ、提案をやり切る機会を与えてくれました。
最終的に提案が受け入れられ、受注につながった瞬間は、これまでのコンサルタント人生でも断トツの達成感がありました。案件を獲得できたからだけではありません。現場で生み出したOutcome(成果)を、次の価値提供につなげられた。任された仕事をやり切る側から、自分で仕事をつくる側へ一歩進めた。そう実感できたことが、何よりうれしかったです。
福本
福本さんに提案を任せた時点では、すべてを一人で完成させられる状態だったわけではありません。
ただ、目の前の仕事をやり切ってクライアントから信頼を得ていること、分からないことがあっても周囲を巻き込みながら答えをつくろうとしていることは見ていました。
私は、すべてできるようになってから次の機会に挑戦するのでは、少し遅いと思っています。少し背伸びをすれば届く仕事を任せ、本人には考え抜いてもらう。当然、任せた以上は、私も最後まで付き合います。必要なときには支えるし、最終的な責任も私が持つ。ただ、簡単に答えは渡さない。
Senior Consultantの段階で、デリバリーだけでなく、課題を見つけ、提案に変え、仕事をつくるところまで経験したことは、その後のManagerへの早期昇格にもつながったと思います。
松浦
福本さんのManagerへの早期昇格について、松浦さんはどのように捉えていますか。
昇格は、肩書が先に変わり、その後に仕事が変わるものではないと思っています。次の期待・役割を担えるようになった人に、結果として次の肩書がついてくる。
福本さんはSenior Consultantの段階から、自分の役割を狭く決めず、クライアントにとって必要なことを考え、自ら行動に移していました。案件で見つけた課題も「自分の担当ではない」で終わらせず、周囲を巻き込みながら次の提案につなげていた。その積み重ねが比較的早かったことが、早期昇格につながったのだと思います。
松浦
Managerへの早期昇格が決まったとき、どのように感じましたか。また、実際にManagerになって、仕事への向き合い方に変化はありましたか。
昇格が決まったときは、うれしさより不安の方が先でした。「自分が本当にそこに立ってよいのか」という怖さもありました。自分より適任者がいるのではないかと後ろ向きになることもありましたが、機会をいただいた以上、成果で応えたかったです。周囲への配慮はする。でも、遠慮はしない。自分から機会を手放すことが、組織やクライアントへの誠実さではないと考えました。
Managerになった今は、自分自身が成果を出すだけでなく、チームとして生み出す価値をどう最大化するかを考えるようになりました。案件の成果だけでなく、次の提案やメンバーの成長、採用・育成まで、自分が影響を与えられる範囲が大きく広がっています。
同時に、若手にとって一つのロールモデルとなる立場になったことへの責任も感じています。「ここで挑戦を続ければ、年次にかかわらず大きな仕事を任され、キャリアを前へ進められる」。私自身の姿を通じて、そう感じてもらえるような背中を見せていきたいと思っています。
だからこそ、Managerになったからといって、自分自身の成長を止めたくはないと思っています。そのために意識しているのが、経験を重ねても学ぶ姿勢を持ち続けることです。良いと思ったものは素直に真似し、自分のやり方に固執せず、周囲の優れた考え方や仕事の進め方をまず取り入れて、試してみる。真似る、試す、失敗する、直す。そのサイクルを誰よりも速く回し続けたいと思っています。
福本
最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
Senior Consultantとして、それまでより大きな役割を任されたとき、私には十分な自信も、明確な答えもありませんでした。だから、難しい仕事を任されたときの怖さも、一人で答えを出せない苦しさも分かります。
一方で、少し背伸びした仕事に挑み、昨日までできなかったことができるようになるおもしろさも知っています。
私が一緒に働きたいのは、今持っている経験や専門性を起点に、新しい領域へ挑戦し、自分の可能性を広げていきたい人です。
私自身も、周囲に支えてもらいながら、一段上の仕事に挑戦することで役割を広げてきました。今度はManagerとして、メンバーが新しい挑戦に踏み出し、それをやり切るところまで支える側になりたいと思っています。
福本
PMIは、経営、組織、人事、財務、業務、ITなど、企業経営のあらゆる論点が動く仕事です。だからこそ、私たちが求めているのは、最初からすべての経験や専門性を持っている人ではありません。
目の前の仕事をやり切って信頼をつくり、その信頼を次の機会につなげていける人。自分の役割を決めつけず、知らないテーマでもおもしろがって一歩踏み出せる人と一緒に働きたいと思っています。
CF&T SUとしても、年次や肩書だけで機会を決めるのではなく、意思を持って挑戦し、成果につなげた人が次の役割に挑める環境でありたい。その一方で、挑戦を本人だけに背負わせるのではなく、PrincipalやManagerが最後まで支える。そうやって、一人ひとりが自分の可能性を広げていける組織をつくっていきたいと思っています。
松浦
私自身も、任された仕事をやり切る側から、自分で仕事をつくる側へ進んできました。Managerは到達点ではありません。これまで背中を追い、支えてもらってきたPrincipalの方々と、いつか同じ目線でクライアントや組織の未来を議論できるようになりたいと思っています。
そして、自分だけでなく、今度はチームや組織の可能性を広げる側へ進んでいきたい。これまでの経験を活かしながら、新しい領域へ一歩踏み出したい。そんな方と、一緒に新しい仕事をつくっていけたらうれしいです。
福本
※取材当時(2026年8月)の情報です。