Solution Consulting事業
Trading & Consumer Business Group
成功の型は、クライアントの数だけある

総合商社、食品・消費財、ヘルスケア――国内市場が変化するなか、海外を含めて新たな成長機会をどうつくるか。その道筋は、業界によっても、企業によっても異なる。Industry Solution Strategy UnitのTrading & Consumer Business Groupは、それぞれの業界への深い知見をもとに経営課題を捉え、変革の構想から実装までを一貫して支援している。同グループを率いる石毛秀明 Business Group Leaderに、一社一社に向き合いながら成長の道筋を共に描く仕事と、その先に目指す日本企業の新たな成長の形について聞いた。

Profile

Executive officer
Principal
Industry Solution Strategy Unit
Trading & Consumer Business Group Leader

石毛 秀明

製造業、外資系コンサルティングファームを経て、アビームコンサルティングに2010年入社。業務改革や改革を実現するための経営基盤刷新支援。またM&Aによる業務・システム統合、業務のオフショア化リードなど、多数の経験を有する。

商社、消費財、ヘルスケア業界、それぞれに異なる成長の道筋

私たちは、総合商社、食品・飲料や消費財といったコンシューマービジネス、そしてヘルスケアのクライアントの変革を支援しています。三つの業界に共通するテーマの一つが、人口減少などを背景とした国内市場の変化を見据え、海外を含めて新たな成長機会をどうつくるかということです。ただし、その「成長の形」は業界によって大きく異なります。

総合商社ではトレーディングに加え、企業への出資や経営参画を通じた事業投資へと役割が広がり、多様な企業や事業をグループに抱えるようになっています。それぞれが持つ強みをどう結びつけ、国内外で次の成長につなげるかが重要なテーマです。

コンシューマービジネスでは、地域ごとに異なる文化や嗜好、生活習慣を捉える必要があります。例えば食品メーカーでは、宗教も文化も嗜好も違う海外だからこそ、現地に生産拠点を構え、その土地のニーズに合う商品を開発する。日本でつくった商品をそのまま世界へ展開するだけでなく、進出先の文化や嗜好に合わせて、現地での「成長の形」そのものを組み立てる必要があります。

ヘルスケアでは、国ごとに医療制度や規制、市場環境が大きく異なります。日本の医療機器・製薬メーカーが海外で成長するには、各国の特性を捉えながら、研究開発から承認、販売までの基盤をどう築くかが重要になります。同じ「海外での成長」というテーマでも、必要な変革は一社一社異なります。だからこそ私たちは、それぞれの業界への知見を深め、その企業ならではの「成長の形」をクライアントと共に考えています。

経営課題を「点」ではなく「面」で捉える

私たちの役割は、クライアントの経営層との対話から経営アジェンダを捉え、変革テーマを具体的なプロジェクトへ落とし込むことです。構想だけで終わらず、実装・運用まで関わり、そこで見えてきた課題を次の変革につなげていきます。

現在、経営層との議論で挙がる重要なテーマの一つがセキュリティです。サイバー攻撃による事業停止のリスクが高まるなか、セキュリティはシステム部門だけでなく、経営として向き合うべき課題となっています。私たちのクライアントでも、外部からの攻撃は日常的に発生しており、継続的な監視と対応が欠かせません。サイバー攻撃によって事業活動が停止すれば、商品供給や顧客対応など広範囲に影響が及ぶ可能性があります。相談内容は防御の技術にとどまらず、事業継続や社内ガイドラインの整備にまで広がっています。

セキュリティの相談が社内のルールづくりにまで広がるように、経営課題は一つの領域だけで完結するものではありません。基幹システムの刷新、AIの活用、グローバルでの統治、サステナビリティ情報の開示、組織・人事。経営計画に並ぶ課題は互いに絡み合い、切り離して手当てすれば、どこかで噛み合わなくなります。一つのテーマだけを切り取るのではなく、それぞれがどうつながっているかまで捉え、社内の専門チームを組み合わせながら変革を進めていく。それが、私たちの役割です。

システムを動かすことを、目的にしない

クライアントから信頼される相談相手であり続けるために、私たちが磨いてきた強みは三つあります。第一に、業界への深い知見です。私たちの部門には94名(2026年7月時点)のコンサルタントが在籍し、商社、コンシューマー、ヘルスケアの三つのサブインダストリーに分かれ、それぞれの業界と専任で向き合っています。同じサプライチェーン改革でも、食品では鮮度と需給バランス、医薬品では供給の継続性や品質・規制への対応など、重視すべき点は異なります。だからこそ、業界ごとの専門性を磨くことを大切にしています。また、5年後、10年後に業界がどう変わるのかを考え、そこから逆算して今取り組むべきことを議論する社内勉強会も重ねています。年次に関係なくアイデアを持ち寄り、クライアントと次のテーマを議論できる組織を目指しています。

第二に、進行中の変革であっても、必要に応じて目的や進め方を見直す決断力です。私たちがクライアントと約束しているのは、システムを稼働させることだけではなく、その先にある経営の成果を実現することだからです。あるクライアントは、中期経営計画で利益のさらなる創出、現状を大きく上回る海外売上比率の向上を掲げ、私たちはその実現に向けた変革を数年にわたり支援してきました。その過程では、グローバル全体を対象とした大規模な基幹システム刷新が、変革の中心として計画されていました。しかし、私たちは設計に入る前に、クライアントと共に改めて目的に立ち返り、経営目標の実現に向けて何を変える必要があるのかを整理しました。

進行中の大規模な計画であっても、必要であれば、その前提から問い直す。システムを稼働させること自体を目的にせず、クライアントが本当に実現したい成果から逆算して、変革の道筋を描き直す。こうした姿勢を、私たちは大切にしています。売り方から組織のあり方まで洗い直し、システム導入をそのなかの手段の一つへ置き直す。走り出した大型投資の前提を問えば、関係が揺らぐかもしれません。それでも踏み込む決断をしたのは、システムを動かして終わりにすれば、投じた額に見合う成果が残らず、それは結果として、クライアントの持続的な変革につながらないと考えたからです。クライアントと目的を共有し、本当に成し遂げたい成果へつなげるための道筋を共に描く。こうした姿勢を、私たちは大切にしています。

第三に、変革を最後までやり切るプロジェクトマネジメント力です。変革の規模が大きくなるほど、経営が描いた方針と現場での実行との間には距離が生まれやすくなります。決めたはずの方針が、現場に届くころには熱を失ってしまう。だからこそ、経営と現場の双方をつなぎながら、変革を前に進めることが重要です。

私たちは長年、国境や組織をまたぐ大規模経営基盤刷新プロジェクトを多数支援してきました。そこで培ってきたのは、単に計画どおりにプロジェクトを進める力だけではありません。変革の目的に立ち返りながら、誰が何を担うのか、抜け落ちている論点はないかまでクライアントと共に確認し、必要に応じて進め方そのものを見直す。そうして、構想を現場での実行につなげ、最後までやり切ることを大切にしています。

「クライアントに愛を持つ」から始まる成長

私たちが目指すのは、日本企業の新しい成長の形をつくることです。最終顧客・消費者が求める価値を起点に、商品やサービスの届け方、さらには事業の仕組みそのものを変えていく。その構想から実現までを、クライアントと共につくり上げていきたいと考えています。

そのなかで商社には、従来の商品ごとの縦割りや、「川上から川下へ」という一方向の発想を越え、複数の産業をつなぐバリューチェーン変革の中心を担うことが期待されています。最終顧客・消費者のニーズを捉え、その情報を調達や生産、物流、販売、サービスへとつなげることで、既存の業界や事業の枠を越えた新たな価値を生み出せると考えています。

「商社」と「コンシューマービジネス」を一つのBusiness Groupで担っているのも、こうした変革を私たち自身が一体となって支えるためです。商社が持つ幅広い産業との接点と、コンシューマービジネスを通じて培った最終顧客・消費者への理解を掛け合わせ、事業の構想から具体的な提案やサービスへと落とし込んでいく。この相乗効果を形にすることが、Trading & Consumer Business Groupの重要なアジェンダです。

そして、こうしたクライアントの課題を起点に、必要なケイパビリティを整え、投資をしながら新たなサービスとして形にできることも、日本にヘッドクオーターを置くアビームの特徴です。日本企業が直面する課題を自分たちの重要なアジェンダとして捉え、次のサービスを生み出す起点にする。そこに、日本発のファームであることの意味があると考えています。

そのため、この部門で求められるのは、システムの細部まで一人で知り尽くしていることではありません。大切なのは、「テクノロジーで何ができるか」を理解し、各領域の専門家と力を合わせながら、クライアントが目指す姿を形にすること。そして何より、経営層から「この人と一緒に変革を実現したい」と思っていただける存在になることです。

だから私はメンバーに「クライアントに愛を持とう」と伝えています。中期経営計画や有価証券報告書を読み込み、その会社がどこを目指し、何に悩んでいるのかを徹底的に考える。そのうえで、「御社が目指す姿を実現させるのであれば、こういった取り組みも同時に考える必要があるのではないか」と、目の前のプロジェクトの範囲を越えて踏み込む。私にとって、クライアントに愛を持つとは、そういうことです。

成功の型は、クライアントの数だけあります。どこかで通用した答えをそのまま持ち込むのではなく、一社一社が目指す姿を理解し、その会社ならではの「成長の形」を共に考え、継続的に進化させていく。そうした仕事を積み重ねながら、日本企業が世界でさらに存在感を高めていくことに貢献したいと考えています。