Solution Consulting事業
Industrial Infrastructure & Public Business Group
業界知見と実装力で、産業インフラの変革を支える

電気やガス、鉄道、物流、通信、そして官公庁。暮らしの土台を支える組織では、20年、30年にわたり運用してきた仕組みが、いま刷新期を迎えている。そこには、公共性や公平性ゆえの制約もあれば、数十年単位で事業を捉える必要のある領域もある。
そうした各業界の特性や制約を踏まえ、変革の道筋を描き、システムの企画・設計から実装までを担うのが、Industry Solution Strategy Unit, Industrial Infrastructure & Public Business Groupだ。グループを率いる久保田昌紀Group Leaderに、この領域ならではの変革の難しさと、長年の支援を通じて培ってきた強みについて聞いた。

Profile

Principal
Industry Solution Strategy Unit
Industrial Infrastructure & Public Business Group Leader
兼 Enterprise Transformation Business Unit
Business & Management Enabler Sector Leader

久保田 昌紀

2001年に新卒でアビームコンサルティングに入社。財務会計・管理会計領域を中心として製造業、商社、金融、社会インフラ、公共分野など幅広い業態に対し、戦略立案、業務プロセス改善、大規模ERP導入などのコンサルティングおよび会計関連サービスを多数実施。特に難易度の高い基幹システム構築におけるマネジメントを得意としている。その後、 Industrial Infrastructure & Public Business Group Leaderを務める。

システム刷新は始まりにすぎない

私たちは、電力・ガス、鉄道、不動産、物流、通信といった産業インフラから、官公庁や自治体などの公共部門まで、人々の生活基盤を支える幅広い領域を担当しています。業界ごとにビジネスの特性は異なり、事業のサイクルも、投資判断に要する時間軸も一様ではありません。

しかし、どの領域にも共通しているのは、電気や鉄道、行政サービスが止まれば暮らしまで止まるという公共性の高さです。そのため、業務の根幹を支える仕組みには高い安定性が求められる一方、時代の要請に応えるための変革も欠かせません。こうした難しい変革に向き合うクライアントを支えることが、私たちの役割です。

その変革の起点となっているのが、基幹システムの刷新です。20~30年前に導入されたシステムが更新時期を迎え、いま複数の業界で刷新の動きが本格化しています。電力業界を例に挙げれば、各社で刷新が本格化し、大規模なERP導入のご相談も増えています。しかし、私たちが見ているのは単なる置き換え作業ではなく、その先でクライアントが見据えている経営アジェンダです。例えばカーボンニュートラルの実現。排出量などのデータは発電や設備管理、調達といった各業務に分散し、全社横断で分析する基盤が整っていません。こうした経営課題に対応するには、業務やデータの基盤そのものを見直す必要があります。ERPの刷新も、データを横断的に活用し、次の一手につなげるための手段の一つです。

また、鉄道業界ではビジネスの主眼が街づくりへとシフトしています。駅周辺の不動産マネジメントにとどまらず、ホテルやアミューズメント施設なども含め、沿線・地域全体の価値向上へと事業領域が広がっています。こうした各業界に共通する課題が、人手不足です。どの業務をAIに委ね、どこに人の判断を残すのか。そのあり方は、各業界で模索が続いています。その先には、限られた人的資本をどう再配置するかという問いがあります。こうした変化を見据えながら、システム刷新だけでなく、その先の業務や人材のあり方まで描くことが求められています。

構想を、現場で機能する仕組みへ

アビームにおいて、経営上の重要課題から変革の道筋を描き出すのがBusiness Consulting事業。その構想を具体的な仕組みへ落とし込み、現場で機能するまで担うのがSolution Consulting事業です。私たちの強みは、数ある選択肢から何が最適解かを見極め、その判断のとおりに実装まで担いきれることにあります。

昨今は、設計書の作成やテストなどにもAI活用が広がり、システムの知識だけでなく、導入に先立つ企画や設計の重要性が一層高まっています。いま変革の成否を分けるのは、導入に先立つ企画と設計の精度です。実装に着手する手前で、どのような形にすれば意図した成果が生まれるのかを描ききる。ここが要になっています。

一つの巨大なシステムで全業務を完結させる考え方は、もはや現実的ではありません。基幹を担うERPを核に、領域特化型のSaaSや各種ツールを適材適所で組み合わせる。その中で問われるのは、どこまでを既存機能に委ね、どこをつくり込むかという判断です。既存機能をどこまで活用し、どこを個別につくり込むかによって、コストや工期だけでなく、導入後の運用・改修のしやすさも変わります。長年の実装経験を生かし、実際の業務まで踏まえてその境界を見極めることが、私たちの強みです。

また、この部門ならではの難しさを感じるのは、官公庁や自治体といった公共の案件です。公共案件では、公平性や透明性を担保するため、提案段階で業務と機能の対応を具体的に定めることが求められます。そのため、プロジェクト開始後の変更には、民間案件とは異なる制約があります。そうした制約があるなかでも、より良い方法を模索し続けるクライアントの方々がいます。私たちは民間の事例を示しながら、制度や権限のあり方から議論し、予算確保や関係者との合意形成まで一緒に考えます。そうした方々を支えることも、この部門の役目です。

業界ごとに磨いてきた、独自のアセット

最適解はクライアントの事情により千差万別ですが、同一の産業内には、どの組織にも共通する業務の型が存在します。そこを毎回一から構築せずに済むよう、長年の支援を通じて各業界特有のアセットを積み上げてきました。

その象徴が鉄道業界です。SAPは幅広い業界で利用されるERPですが、標準機能だけでは鉄道固有の業務プロセスに対応しきれない部分もあります。そこで業務の特殊性に即した機能を付加し、専門用語に至るまで鉄道仕様に最適化した独自のテンプレートをつくり上げてきました。

これはJRから民間鉄道各社までを長年支援するなかで培ってきたアビームのアセットであり、業界知見を生かした支援の強みにつながっています。業界共通の基盤を前提に議論を始められる。先ほどの企画と設計にも、それだけ深く踏み込めます。

こうした業界特化型のアセットを、現在は電力業界でも強化しています。向き合うのは電力の小売ではなく、発電設備を自ら保有・運営する電力会社です。発電所の設備は、一度稼働すれば数十年にわたって運用されます。その間の点検や部品交換の履歴を管理し、遠い将来の更新まで見据えた計画を練り上げる。同じ資産・在庫管理でも、考え方がまったく違ってきます。現在は、この特殊性を織り込んだ電力業界専用のテンプレートを構築し、実案件で実効性を高めながら業界全体へ広げていくフェーズです。

そしてもう一つ、目には見えないアセットがあります。それは、クライアントとの距離の近さです。

産業インフラは、最前線に人が立ち続けることで成り立っています。だからこそ、クライアントには経営層まで含めて現場を重視される方が多い。私たちもその姿勢に応え、可能な限り現場に足を運び、ときには担当領域を越えて議論に参加します。現場で起きている変化や課題を捉えることが、より本質的な支援につながるからです。

強みを磨き、次のスタンダードをつくる

クラウド化やAIといったテクノロジーの進化に伴い、BPaaSやFDEのようなサービス形態であったり、サブスクリプション型でのシステムの提供であったりと、求められる形も変化しています。

そのような変化に私たちのアセットも対応するために、どこまでの機能を搭載するのか、AIをどう組み込むのかなどクライアントのニーズを捉えながら、新たな提供の形を模索しています。決まった手順はありません。同じ業界でも、A社は従来どおりの業務、B社はやり方を変えている。テンプレートをどちらに合わせるかは、個々の状況に応じて議論していく必要があります。

導入後の保守も担っている分、実際にどう業務が回っているかは把握できています。そこから将来の標準となる形を見極め、機能へ落とし込む。この改善の繰り返しです。

アセットを更新し、最前線でクライアントと向き合うのは、コンサルタント一人ひとりです。深い業界知見を備えた人材が各産業で求められていると先に述べましたが、それは私たち自身も同様です。この組織が発足したのは2026年度で、前身を含めても約3年。現在は鉄道と電力、通信業界を軸に、各業界の専門性を持つ人材を迎え入れながら、コンサルタントとソリューションの双方を強化しています。

組織の体制も問い直し続けています。あり方そのものも固定していません。業界ごとの専門性を深める一方、会計や人事などの領域では、業界を横断して知見を生かすことにも価値があります。双方の強みをどう組み合わせればクライアントにより大きな価値を届けられるか、組織そのものも進化させ続けています。

メンバーには、クライアントのビジネスがどう回っているかをつかんでほしいと伝えています。そこが読めれば、要望の背景にある課題まで捉えられるからです。同時に、知識やスキルを更新し、それをどう価値につなげるかまで考えることを大切にしています。身につけたものをどう活かすかまで考えられることが重要です。動かせない制度と時間軸のなかで最善の突破口を見出し、実装まで完遂させる。そこに私たちの介在価値があります。

暮らしの土台を支える仕組みだからこそ、変革には高い確実性が求められます。一つひとつの課題に着実に向き合いながら、その先の変化まで見据えて仕組みをつくり替えていく。産業インフラと公共領域の未来を支える存在であり続けることを、私たちは目指しています。